【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】
賠償制度は、外から米国に押し付けられた概念ではない。それどころか、米国はこれまでに先住民に土地を与え、第二次世界大戦中に強制収容した日系人に15億ドルを支払い、ユダヤ人がホロコーストの賠償金を受け取るのを、時間をかけて様々な投資を行うなどして支援してきた。
しかし、米国はまだ、黒人奴隷の子孫に強制労働の対価を補償していないし、隔離された住宅、交通、ビジネス政策から失われた公平性を償うこともしていない。そして、米国の奴隷制度が特に残虐なものであったことを、誰も忘れることはないだろう。
正義を求める声は今、米国をはじめ世界各地でこれまでになく高まっており、植民地時代に奪われた富から大きな利益を得ていた欧州諸国は、対応に苦慮している。いくつかの旧宗主国は、かつて略奪したものの一部を返還する措置を始めているが、もっと多くのことがなされる必要がある。
その中で、賠償金の支払いを免れている国の一つがドイツである。昨年、ドイツ政府は、ヘレロ・ナマ虐殺事件について、ドイツの法的責任は認めないが、「現在の視点で見れば」先住民のコミュニティーに対するジェノサイドであったという留保付きで、30年間で10億ドル強の賠償金を提示した。
略奪された財産の多くは、美術品や工芸品である。サハラ以南のアフリカの最も著名な美術品の90%以上は、現在大陸の外にあると、ワシントン・ポスト紙のロクハヤ・ディアロ記者は書いている。そのような美術品をフランス国内に留めておくために、フランスはそれらの美術品を移送できないようにした、と同記者は指摘する。アフリカ諸国からの圧力により、フランスは不公平を認め、ベナンとセネガルに文化財を返還する法律を成立させた。
マダガスカルは、マダガスカルの民族的誇りを象徴するラナバロナ3世女王の王冠を返還された。
最後になるが、ナミビアで行われ、ヘレロ族の80%、ナマ族の50%が死亡した悲惨な大虐殺から1世紀以上が経過し、ドイツは2015年にナミビア政府と、歴史的残虐行為による「傷を癒す」ための話し合いを開始した。
ナミビア人とドイツの黒人団体の長年の活動により、ナミビア人に形式的な金額が約束された。しかし、この宣言は「賠償」や「補償」に言及せず、ドイツはヘレロ族やナマ族との直接的な議論を避けた。国会議員のイナ・ヘンガリ氏は、これを「侮辱的だ」と批判した。
ナミビアのハーゲ・ガインゴブ大統領はこの提案を受け入れたが、議会は不十分とし、受け入れなかった。現在、この取引は保留されている。
オバヘレロ・ジェノサイド財団のナンディ・マゼインゴ会長は、「あの取引は、決して私たち(=虐殺の被害者の子孫)のためではなかった。ヘレロ族の80パーセントを殺しておいて、30年間で10億ドルというのはどうなんだ。ドイツは、先住民コミュニティーと直接話をしなければならない。」と語った。
ナミビア統計局によると、商業用農地の70パーセントを白人農家が所有し、16パーセントを「以前は不利な立場にあった(=先住民)」農家が所有しているという。「土地は(ドイツ系ナミビア人を)豊かにしたものです。」と、ムバクムア・ヘンガリはフィナンシャル・タイムズ紙に語った。「ヘレロ族とナマ族にとっては、土地収奪は世代を超えた貧困の始まりだったのです。」
一方、ウガンダは今年2月、20年以上前のコンゴ民主共和国東部州の占領と略奪に対して、3億2500万ドルの賠償を命じられている。これは、重大な人権侵害と国際人道法違反に対する国際法廷による最大の賠償判決である。(原文へ)
INPS Japan
関連記事:
|視点|植民地主義が世界に及ぼした影響を遅々として認めようとしない欧州諸国(マイケル・マクイクラン ルンド大学客員研究員)