【ニューヨークIDN=アナ・イケダ】
現在のウクライナ危機は、核抑止には大きな欠点があることを示しています。核抑止の論理は当事者たちの理性的な判断と脅威の信憑性を前提としていますが、特に紛争時において、その想定が現実からほど遠いことは言うまでもありません。
核兵器は、その存在自体が私たちを脅かし続けています。例えば、核兵器に費やされる資源は、SDGs(持続可能な開発目標)の達成やポストパンデミックの世界の構築に向けた前進を妨げています。つまり、G7サミットで取り組むべき他の優先分野にも影響を及ぼしているのです。
従って、今年のG7広島サミットは、私たちの国際的な安全保障と平和に対する理解を真剣に見直す機会であると主張したい。
池田大作創価学会インタナショナル(SGI)会長は2022年の記念提言「人類史の転換へ 平和と尊厳の大光」の中で、核に依存した安全保障のドクトリン(原則)の「解毒」を呼びかけています。それを踏まえ4点、提言させていただきます。
1.先制不使用政策を採用する。
現在の緊張を緩和し、ウクライナ危機の解決に向けた道筋をつけるには、核保有国が核リスクの低減に向けた行動を開始する必要があります。特に、核兵器が警戒態勢に置かれ、意図せず使用される危険性が高まっている現在、何らかの措置を講じることが急務です。
このことから、SGIは、核兵器を保有する全ての国と核依存国の安全保障政策として、先制不使用の原則を普遍化するよう改めて強く提唱しました。
核保有国が先制不使用の原則を確立することは、世界の安全保障環境を安定させ、紛争終結に向けた2国間、および多国間対話に必要な空間を作り出すことにつながります。
先制不使用の原則を確立することはまた、「核兵器の使用またはその威嚇は許されない」というG20首脳の最近の宣言や、「核戦争に勝者はなく、決して戦ってはならない」という昨年1月の米国、ロシア、英国、フランス、中国の首脳の声明を実行に移すことになります。
当然、相互信頼を築くために全ての核戦力を一触即発の警戒態勢から外すなど、実際の姿勢や政策の変化を伴うものでなければならないでしょう。
全体として、先制不使用は、国家安全保障における核兵器の役割を減らすための重要なステップであり、核軍縮を進めるための原動力となり得ます。私たちは、G7の首脳がリスク削減、緊張緩和、軍縮の戦略について議論し、発表する機会を捉え、特に先制不使用政策を宣言することを強く求めます。
2.多国間の軍縮議論に生産的に関与し、大胆なリーダーシップを発揮する。
G7首脳が大胆なリーダーシップを発揮し、核不拡散条約(NPT)の第6条に規定されている軍縮義務を果たす約束を新たにすることが決定的に重要です。
同様に重要なことは、NPTと核兵器禁止条約(TPNW)の補完性について、さらなる探求に取り組むことです。特に日本が、アプローチの違いはあっても、核兵器の使用に対する重大な懸念をすべての国が共有していることを認識し、TPNWの議論に生産的に関与することによって、橋渡し役としての約束を果たすことを期待しています。
私たちは、G7諸国が核禁条約締約国会合への将来の出席を約束することにより、核禁条約締約国と協力的に働く意思を示すことを強く期待します。
3.核兵器廃絶に向けて努力することを約束する。
核兵器のない世界は「究極の目標」といわれます。しかし、核兵器が世界を破壊してしまう前に、この目標を絶対に達成しなければなりません。専門家の間では、2045年を核兵器廃絶の絶対的な期限とするべきだという声もあります。広島サミットでは、G7の首脳が期限を設定することに合意し、それに向けて交渉を開始することを決定できるのではないでしょうか。
4.軍縮・不拡散教育イニシアチブを支援する。
最後に、私たちはG7首脳に、あらゆるレベルでの教育イニシアチブへの支援を示すことを求めます。広島平和記念資料館を訪れ、被爆者に会い、核兵器の悲惨な影響や体験を直接聞くことを強く希望します。
核兵器に依存した現在の安全保障のパラダイムを転換するには、平和と安全保障に対する人々の考え方を変革し、核兵器が私たちの安全を守るというナラティブ(語り方)に立ち向かう必要があります。核戦争を回避する最も確実な方法は、核兵器を廃絶することという認識を高める必要があります。
SGI会長は2009年の記念提言「核兵器の廃絶へ 民衆の大連帯を」のなかで、核時代に終止符を打つためには、自己の欲望のためには相手の殲滅も辞さないという「核兵器を容認する思想」と対決しなければならない、と述べています。
私たちは、若者を中心とした全ての人が核兵器のもたらす人道的影響について学ぶ機会を設けるという、G7首脳のコミットメントを求めます。
私たちは、岸田首相が提唱する核軍縮に向けた行動計画「ヒロシマ・アクション・プラン」や、「ユース非核リーダー基金」の設立を歓迎します。また、日本がリーダーシップを発揮して、このようなイニシアチブの目的が、軍縮に関する教育だけでなく、軍縮のための教育を提供することであることを確認することを期待します。
結びに、世界の安全保障環境における現在の緊張と不確実性は、対話と外交の価値と役割を弱めるものではなく、高めるものであると主張したい。G7や国連のようなフォーラムの役割は、これまで以上に重要です。(原文へ)
*アナ・イケダは、SGI国連事務所の軍縮プログラム・コーディネーター。核廃絶とキラーロボット阻止を中心に活動している。この記事は、3月29日に創価大学(東京八王子市)で開催されたG7政策提言国際会議の「核兵器の管理を巡る分科会」に登壇した際の発表内容を要約したものである。
INPS Japan
American Press, All Africa, Chinese Wire, Global Security Institute, The Gender Security Project, Global Issues, Inter Press Service, Oxford Eagle, The Vicksburg Post, Washington City Paper
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