SDGsGoal17(パートナーシップで目標を達成しよう) トカエフ大統領、国連総会で安保理の緊急改革を訴える

 トカエフ大統領、国連総会で安保理の緊急改革を訴える

【アスタナINPS Japan/The Astana Times=アッセル・サツバルディナ】

シム・ジョマルト・トカエフ大統領は9月19日、第78回国連総会の一般討論で演説を行い、国際法を強化し、国連安全保障理事会の包括的な改革を緊急に行うことの重要性を強調した。

大統領は演説の中で、国連憲章に謳われている国際法の基本原則が相次いで侵食されていることから、世界の平和と安全に対する脅威が増大していることを強調した。

大統領はまた、世界は紛争や対話の欠如など多面的な課題に直面しており、そのすべてが国連創設の基盤となった原則と価値への新たなコミットメントを必要としていると強調した。そしてなかでも最も破壊的な課題は、核兵器使用の脅威だと指摘した。

UNSC/ UN photo
Photo Credit: UNSC/ UN photo

また、中国、フランス、ロシア、英国、米国の5常任理事国が拒否権を持つ国連安全保障理事会を改革する必要性を指摘した。国連改革を支持する国々は、以前から15カ国からなる国連安保理事会における代表権を改革するよう求めてきた。

「安全保障理事会の包括的な改革なくして、これらの諸課題に取り組むことはできないだろう。これは、人類の大多数の利益を合致させる、現代における緊急の課題です。」とトカエフ大統領は述べ、中堅国やすべての発展途上国の声を国連安保理の場に一層反映させることの重要性を強調した。

大統領はまた、「行き詰まりから脱することができないように見える国連安保理委をより開かれたものに改革し、カザフスタンを含む他の国々が平和と安全の維持においてより大きな役割を果たす機会を与えるべきです。」と語った。

南アフリカ共和国のシリル・ラマポーザ大統領とトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領も、同様の改革を求めた。

カザフスタンの極めて重要な役割

「一言で言えば、カザフスタンは平和を愛する国であり、自国の国益を追求すると同時に、懸案となっている国際問題の平和的解決策を絶えず模索しています。」とトカエフ大統領は語った。

その顕著なイニシアチブの一つが、アジア地域における平和、安定、協力の促進を目的とした多国間フォーラムであるアジア協力信頼醸成措置会議(CICA)である。1992年に設立され、現在28カ国が加盟している。

昨年10月にアスタナで開催された第6回CICA首脳会議でキックオフされたCICAの本格的な組織化は、「アジア大陸における調停と平和構築」に貢献することにつながるだろう。

トカエフ大統領は、上海協力機構(SCO)の議長国として、「公正な平和と調和のための世界統一イニシアチブ」を提唱した。同大統領は、新しい安全保障パラダイム、公正な経済環境、クリーンな地球という3つの重要分野からなるイニシアチブに参加するよう、世界の指導者らに呼びかけた。そして、「グローバルサウスとグローバルノースの間の開かれた対話こそが、その中心的な柱です。」と語った。

Semipalatinsk Former Nuclear Weapon Test site/ Katsuhiro Asagiri
Semipalatinsk Former Nuclear Weapon Test site/ Katsuhiro Asagiri

大統領はまた、ソビエト連邦下で460回近い核実験を経験し、独立後にソ連から継承した当時世界第4位の規模の核兵器を自主的に放棄した国として、カザフスタンの核兵器禁止条約(TPNW)への「継続的なコミットメント」を再確認した。

「核兵器のない世界への道を歩む核保有国間の相互信頼と協力のみが、世界の安定を生み出すことができる。…私たちは、軍縮・不拡散の分野における新たなメカニズムの構築を支持します。2045年までに核兵器を完全に放棄するための戦略的計画は、この世代の指導者たちにとって、世界の安全保障に対する最も重要な貢献となりうるでしょう。」とトカエフ大統領は語った。

しかし、平和の追求は、軍縮や正式な合意にとどまらない。諸宗教間の対話は、「平和の文化」を育む上で極めて重要である。

トカエフ大統領は、最近見られた聖典に対する冒涜行為について懸念を表明した。「イスラム教やその他の宗教に対する冒涜行為は、自由、言論の自由、民主主義の表現として受け入れることはできない。コーランを含むすべての聖典は、破壊行為から法的に保護されるべきです。」と指摘した。

大統領はまた、国連事務総長と国連総会議長に対し、生物学的安全性に関する国際機関の設立プロセスを開始するよう求めた。この構想は、国際社会が新型コロナウィルスのパンデミックで苦しんでいた最中の2020年9月の国連総会演説で初めて提案したものだ。

この特別な多国間機関は、1972年の生物兵器禁止条約に基づき、国連安全保障理事会に対して説明責任を負うものと期待されている。

トカエフ大統領はまた、アルマトイに中央アジアとアフガニスタンを管轄する国連SDGs地域センターを設立するというカザフスタンのイニシアチブを改めて表明した。トカエフ大統領は、中央アジアが「結束し独立した」国際社会の一部として重要性を増していることについて述べ、地域アジェンダにはアフガニスタンも含まれ、同国が安定し繁栄する国家となり、信頼できる貿易パートナーとなるべきだと強調した。

食料安全保障

国際社会はより良い世界規模の食料安全保障システムを必要としている。トカエフ大統領は、昨年、世界人口の10%近くが飢餓に直面したというデータに言及した。

「食料の生産量や輸出入量など、食料安全保障に関する自主的な情報交換を強化しなければなりません。また、食糧危機に対応するための国際社会からの資金について、透明性のある追跡体制を確保しなければなりません。」とトカエフ大統領は語った。

大統領はさらに、カザフスタンが地域の食料供給ハブとして機能する可能性を示唆し、同国はこの目的のために必要な資源、インフラ、ロジスティクスがすべて整っていると語った。カザフスタンは、穀物の中でもとりわけ小麦と大麦の世界最大の生産国のひとつである。

「カザフスタンはすでに、アジアと欧州を結ぶ陸路輸送の80%近くを担っています。カスピ海横断国際輸送ルート、いわゆる中東回廊は、東西間の連携を大幅に強化することが可能となります。このルートは、重要な市場間の貿易のペースを上げ、海上ルートでの輸送に必要な時間をほぼ半分に短縮することができます。」とトカエフ大統領は語った。

Credit: United Nations

気候変動への取り組みには適切な資金が不足している

トカエフ大統領は、カザフスタンで「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)」を立ち上げ、開発途上国の気候変動に対処するための公平な資金を確保することを提案した。

JETPは、先進国と開発途上国間の国主導のパートナーシップであり、公平で包括的な方法でクリーンエネルギー経済への移行を加速させることを目的としている。JETPは、途上国が石炭火力発電所を廃止し、再生可能エネルギーを開発し、移行によって影響を受ける労働者や地域社会に新たな経済機会を創出することを支援するよう設計されている。

「石炭から徐々に、持続可能で、社会的責任のある形でシフトしていくことは、世界の気候変動目標にとって大きな恩恵となるでしょう。アルマトイに中央アジア気候変動・グリーンエネルギープロジェクト事務所を開設するカザフスタンのイニシアチブは、この問題をリードすることができます。」とトカエフ大統領は語った。

JETPはグラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で初めて発表され、南アフリカ共和国はフランス、ドイツ、英国、米国、欧州連合から85億ドルの融資を約束された。

A comparison of the Aral Sea in 1989 (left) and 2014 (right)./ Public Domain
A comparison of the Aral Sea in 1989 (left) and 2014 (right)./ Public Domain

2026年にカザフスタンが国連主催で開催する地域気候サミットでは、これらの課題にスポットが当てられる。

来年、カザフスタンは、1993年に始まった中央アジア諸国の共同イニシアチブである「アラル海を救うための国際基金(IFAS)」の議長国にも就任する。トカエフ大統領は、ニューヨーク訪問の2日前、9月15日に関係国首脳らとドゥシャンベで会談し、IFASにおける地域協力の強化について話し合った。

「私たちは、かつて地球上で4番目に大きな湖であったアラル海周辺の環境がさらに悪化し周辺住民の生活に悪影響を及ぼす事態を防ぐ努力を今後も続けていきます。」とトカエフ大統領は付け加えた。(原文へ

INPS Japan

この記事は、The Astana Timesに初出掲載されたものです。

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