【アブダビWAM】
アブダビ環境庁(EAD)は、今週アブダビで開幕した第一回国際水サミット(IWS)において、地下水の問題を取り上げ、UAEの長期的な持続可能性及び国民の福祉全般にとって地下水が果たしている極めて重要な役割について議論した。
現在アブダビでは、農業や林業を含む様々なニーズを、大半が再生不能資源である地下水に依存している。また地下水は、新鮮な飲料水として戦略的に備蓄されている。
地下水資源は、(人口過剰、農業と経済の成長、持続不可能な消費パターンなどのさまざまな要因によって)益々大きな圧力に晒されている。EADは、首長国の環境保護を付託された政府機関として、戦略資源であるアブダビの地下水保全・保護に優先課題の一つとして取り組んでいる。
水不足の問題は、世界経済フォーラム(WEF)においても、深刻なグローバルリスクとして焦点があてられた。WEFが発行している「グローバルリスク報告書」には、世界の有識者が、50のグローバルリスクについて、発生の可能性とインパクトの両面から評価した総合ランキングが記載されている。これによると、「水供給危機は」はインパクト部門で2位、発生の可能性部門で5位であった。一方、「食糧不足危機」もインパクト部門で3位を占めており、水と食の安全保障が相互に密接に関わっている現実を浮き彫りにしている。
IWSで登壇したラザン・アル・ムバラクEAD長官は、アブダビは地下水の使用に関して既に「転換点」に達しているとの見方を改めて表明した。
UAEの皇太子で国軍副最高司令官のムハンマド・ビン・ザイード・アール・ナヒヤーン殿下は、UAE並びに世界の福祉を確保することを目指した持続可能なビジョンの一環として、2012年1月18日に国際水サミットを立ち上げた。「UAEにとっては石油より水の方が大切です。」との大胆な発言の背景には、歴史的に石油に依存してきたUAE経済が、今では、水問題を国家戦略の最重要課題に据えている現実がある。
UAE政府は、既に農業や公共の場で水の使用を最小限に抑える種々の新たな解決策を実行に移している。UAEでは2012年の間、温室の普及や水耕法の活用により水耕農産物の収穫高が前年比で12%増大した。またアブダビでは、多くの実験農場において、地下灌漑を含む給水量を節約できる様々な灌漑技術の検証が行われている。
アル・ムバラク長官は、「私たちは、UAE全土で実施した地質調査結果に基づいて、国内でどこに最も肥沃な土地が存在しているかを把握しています。これを水資源に関する知識と照合させ、使用された一滴一滴の水が、最大限に農産物の収穫に繋がるよう、パートナーと協力して取り組んでいきます。」と語った。(原文へ)
翻訳=IPS Japan
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