【シャリジャWAM】
「北アイルランドで17日・18日に開催された主要8ヶ国首脳会議(G8)では、シリア問題が主要議題として取り上げられたが、バシャール・アサド大統領の退陣を求める決議案に関しては、ロシアの反対で見送りとなった(首脳宣言には『シリア内戦の政治決着を目指す』という文言が採択された:IPSJ)。しかしG8サミット閉幕の翌日には、シリア情勢を巡るロシアと米国の対立は、既にあからさまな対決へと向かう様相を見せている。」とアラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙が6月21日付の紙面の中で報じた。
ロシア政府は、6月19日、「シリア在住のロシア人を保護するため」として、600人の海兵隊員を乗せた戦艦2隻をシリアに派遣すると発表した。またロシア空軍の司令官は、必要に応じてロシア派遣軍に対する空軍の支援を行う用意ができていると述べた。
ガルフ・ニュース紙は論説の中で「このロシア政府の動きは、先般西側諸国がシリアの反政府勢力に対して(時期は明示しなかったものの)重火器の提供を行うとしたことに対抗して、軍事力を誇示しようとするウラジミール・プーチン大統領の意図を反映したものである。」と報じた。
シャリジャに本拠を置く同紙は、「プーチン大統領は、米国とその同盟国に対して、もしシリア反政府勢力への武器供与にあくまでも踏み切るならば、ロシアは自国民保護を名目にロシア軍をシリアに上陸させる用意があると警告したものとみられている。」と報じた。
「シリアには約20,000人のロシア人が在住しており、彼らは。既に紛争の初期段階で、将来的に情勢が悪化してロシア政府が救出作戦の実施を決めた場合、どこに集合すべきかを指示されている。ロシア人の国外避難という事態はとなれば、シリア紛争は大幅に拡大することになるだろう。」
また報道によると、ロシア政府は、シリアへ派遣予定の戦艦は現在出港に向けて準備中と説明しているが、実際には5月中旬より地中海を航行しており、本国からの命令があれば数時間以内にシリアに到達する態勢を整えているという。
ロシア政府は、今のところ、派遣軍がいつシリアに到着するのか、またシリアのどの地域で作戦を展開するかについては明らかにしていない。
しかし、シリアの紛争地域に(ロシア人救出を名目に)今後ロシア兵が展開し、万一西側諸国が反乱軍に提供した武器でロシア兵に犠牲者がでるような事態になれば、シリア危機が劇的に悲惨な展開となることは明らかである。
ロシア軍派遣の影響は多岐にわたるとみられている。つまり、ロシア兵が負傷すれば、ロシア政府はシリア派遣軍を増強する口実にするだろう。また、ロシア空軍は、西側諸国がシリアの飛行禁止区域に関する決定を打ち出す前に、シリア領空に影響力を確立することになるだろう。そして、シリアにおけるロシア軍の存在は、シリア情勢を巡って、既に緊張が高まっている米ロ間の外交・軍事関係をさらに悪化させることになるだろう。
「今や、国際社会が交渉を通じてシリア危機を解決に導けるのではないかとの希望は失われつつあり、それに代わって、シリアが米ロ間の代理戦争の舞台になるのではないかという新たな危険性が浮上している。」とガルフ・ニュース紙は結論付けた。(原文へ)
翻訳=IPS Japan
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