地域その他宇宙空間における核軍拡競争の予防、ロシアの拒否権行使で頓挫か

宇宙空間における核軍拡競争の予防、ロシアの拒否権行使で頓挫か

【国連IPS=タリフ・ディーン】

日米両国が国連安全保障理事会(全15か国)に共同提出した宇宙空間に関する初の決議案が、ロシアの拒否権行使によって採択されなかった。これが宇宙空間における軍拡競争の先駆けになるのではないかとの観測が出てきている。

Randy Rydell/ UNODA
Randy Rydell/ UNODA

拒否権を行使された決議案は「核兵器やその他のあらゆる種類の大量破壊兵器を搭載した物体を宇宙空間に置くこと、天体にそのような兵器を設置すること、いかなる方法によってもそのような兵器を宇宙空間に配備することなど、1967年宇宙条約の規定を完全遵守する全ての国連加盟国の義務を確認するもの」であった。

平和首長会議」の顧問で、国連軍縮局の元幹部(政治問題担当)のランディ・ライデル氏はIPSの取材に対して、「国連安保理は軍縮問題に関して、ジュネーブ軍縮会議を苦しめたのと同種の問題、すなわち拒否権とジュネーブ軍縮会議の『全会一致原則』に悩まされてきました。残念なことに、宇宙空間に関する決議案に拒否権が発動されたのは驚くべきことではありません。」と語った。

「国際社会は軍縮に関して『法の支配』の危機に直面しています。主要な条約は普遍的な加入には程遠く、交渉に失敗して発効していません。また、加盟国による国内法制化の手続きも進まず、十分履行されず、中には脱退が相次ぐ条約もあります。」

「今回の投票結果に関わらず宇宙条約自体は存在し続けますが、すでに進行しつつある核軍拡競争が宇宙へと波及する恐れがあり、この懸念は、軍縮の将来だけでなく、私たちの脆弱な地球の平和と安全にも重大な影響を及ぼします。」とライデル氏は主張した。

UN Summit of the Future
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「武力使用の威嚇を禁じ紛争を平和的に解決するという国連憲章の規範は、引き続き、私たちの目前で展開している危機に対する最も効果的な処方箋となりえます。これと、軍縮に『向けた』新たな方策のみならず、軍縮に『おける』方策を組み合わせることが重要です。9月に開催される国連総会の『未来サミット』が、これらの重大課題に対して新たな世界的コミットメントを再活性化させることを望みます。」とライデル氏は語った。

安保理は、賛成13・反対1(ロシア連邦)・棄権1(中国)で、先の決議案を否決した。常任理事国による反対票のための否決である。

米国・英国・フランスに加えて、非常任理事国全10か国(アルジェリア・エクアドル・ガイアナ・日本・マルタ・モザンビーク・韓国・シエラレオネ・スロベニア・スイス)が決議案に賛成した。

「西部諸州法律家財団」のジャクリーン・カバッソ事務局長は、「今回の決議案否決は、五大国の拒否権によって生まれた安保理の機能不全を示しているとしても、現在の地政学的な対立とプロバガンダの中では、評価するのが難しい。なぜなら、ロシアと中国はむしろ宇宙空間における軍拡競争の予防に関する包括的条約の協議入りを長らく支持してきており、2008年と14年には、今や機能不全に陥っているジュネーブ軍縮会議に条約案を提出しています。」と指摘した。

米国は、ブッシュ政権、オバマ政権のいずれの際にもこれらの決議案を否定している。こう語るカバッソ氏が事務局長を務める「西部諸州法律家財団」はカリフォルニア州に本部を置く非営利組織で、より公正で環境的に持続可能な世界を目指すための本質的なステップとして核兵器の廃絶が必要であると訴えている団体である。

ロシアは、4月24日のこの拒否権発動劇の翌週、日米提案より踏み込んだ内容の決議案を安保理に提出している。それは、宇宙空間に「常に」この種の兵器を配備することを禁止するだけではなく、「宇宙空間における武力の威嚇」すら禁止する内容であった。

この新決議案は、「宇宙から地上に対して、地上から宇宙空間の物体に対して」兵器の配備禁止を含んでいた。これは定義上、対衛星兵器も含まれることになる。

Jacqueline Cabasso, Executive Director, Western States Legal Foundation. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, INPS Japan.
Jacqueline Cabasso, Executive Director, Western States Legal Foundation. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, INPS Japan.

地上では新たな核軍拡競争が展開し、冷戦期の軍備管理枠組みが崩壊・解体しつつあり、核保有国間の戦争の危険性がおそらく史上最も高まっている現在、1981年の国連総会で認識されたように、「軍拡競争が宇宙空間に拡大する危険性が高まっている」と言えるだろう。

「私たちは世界的な緊急事態にあり、事態を鎮静化させ、核保有国間での外交的対話を開始するあらゆる努力がなされる必要があります。この目的のため、米国とその同盟国は、ロシアに(米国などが考えるところの)そのこけおどしを止めさせるように呼びかけ、むしろロシアが安保理に提出した新決議を歓迎すべきです。」と、カバッソ事務局長は訴えた。

米国代表は、投票後にコメントし、『国連ニュース』の報告によると、「ロシア連邦が世界的な不拡散体制を毀損するのは今回が初めてではない。ロシアは、危険な拡散者を擁護するのみならず、力づけてもきた。」と語った。さらに、投票を棄権した中国については、「世界の不拡散体制を守るのではなくロシアをジュニアパートナーとして擁護している。」と指摘した。また、「核兵器の宇宙軌道上への配備は前例がない。容認することができない、きわめて危険な行為だ。」と指摘したうえで、「今回の決議案にはさまざまな地域から65カ国の支持が得られており、全会一致を得るために日本が大いなる努力をしてくれた。」と語った。

日本代表は、「この歴史的な決議案の採択を阻むためにロシアが拒否権を行使したことはきわめて残念だ。」と語った。

UN Secretariate Building. Photo: Katsuhiro Asagiri
UN Secretariate Building. Photo: Katsuhiro Asagiri

決議案を支持した65カ国の共同提出国があったにも関わらず、わずか1つの常任理事国が「世界に私たちが送ろうとした重要なメッセージを打ち消してしまった。」と日本代表は強調し、「決議案は宇宙空間の平和的利用と探査に対する実践的な貢献となるはずだった。」と指摘した。

ロシア代表は、「安保理がまたしても『日米両国が仕掛けた汚らわしい見世物』になってしまった。これは皮肉な策略だ。私たちは罠にはめられた。」と主張した。

宇宙空間への大量破壊兵器配備禁止は既に1967年の宇宙条約で謳われていることだとロシア代表は述べ、米国や日本、その同盟国らは、その他すべての兵器の中から大量破壊兵器だけを「恣意的に取り上げ」、宇宙空間からすべての兵器を排除しようとの提案に「何の関心もないことをごまかそうとしている。」と語った。

ロシア連邦と中国が提出した決議案の本文に付記した部分では、大量破壊兵器の開発禁止と宇宙空間への配備禁止を削除していない、とロシア代表は強調した。

他方で、カバッソ事務局長は、国連総会が1967年に採択した宇宙条約の第4条では、「地球周辺の軌道に核兵器あるいはその他のあらゆる種類の大量破壊兵器を搭載した物体を置くこと、そうした兵器を天体に設置すること、そのような兵器をいかなる方法においても宇宙空間に配備すること」を禁止している、と説明した。

にもかかわらず、国連年鑑によれば、1981年までに一部の加盟国が「科学技術の急速な発展によって軍拡競争が宇宙空間に波及する危険性が迫っており、新たな種類の兵器開発が国際協定の存在にも関わらず続けられている」ことへの懸念を示していたという。

ジョン・プランブ米国防次官補(宇宙政策担当)は下院軍事小委員会で5月1日に開催された公聴会で「ロシアは開発を続けており、もしロシアを説得できないようであれば、軍事・民間・商業衛星を区別できない無差別的兵器である核兵器を宇宙で飛翔させることが最終的には可能になってしまう。」と証言した。

「2月、ウラジーミル・プーチン大統領は、ロシアは宇宙空間に核兵器を配備する意図はないと主張していました。従って、ロシアが宇宙空間における軍拡競争の禁止を呼びかけた安保理決議案に4月24日に拒否権を発動したことは困惑を招いています。」と、カバッソ事務局長は語った。

UNSC/ UN photo
UNSC/ UN photo

日米両国が提出した同決議案は、核兵器あるいはその他あらゆる種類の大量破壊兵器を宇宙空間に配備しない条項を含め、宇宙条約を完全遵守するようすべての国連加盟国に求めることを確認する内容だった。中国は採択を棄権した。

決議案が採択される前、ロシアと中国は、決議案の内容を強化する修正案を提示していた。すなわち、核兵器・生物兵器・化学兵器を禁止するだけではなく、「宇宙空間に兵器を配備することや、宇宙空間において武力使用の威嚇を行うことを常に予防する」ことを求めた。しかし、カバッソ事務局長によれば、この修正案は否決された。(原文へ

INPS Japan

This article is brought to you by IPS Noram, in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.

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