【アブダビWAM】
アラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙は11月8日、「ヤーセル・アラファトパレスチナ自治政府議長(当時)の死因については、2004年の死亡以来、様々な憶測がとびかってきたが、放射性物質ポロニウム210を用いた毒殺であったことを裏付ける決定的証拠が発見されたようだ。」と報じた。
パレスチナの真相解明委員会は同日、記者会見を開き、「アラファト氏の遺体から採取した検体を鑑定していたスイスの研究所が、『ポロニウムを通常より高い水準で検出した』と発表したのを受けて、同氏の死は暗殺によるものとの見方を示した。」
しかし、ポロニウム210がどのような経路でアラファト氏の体内に送り込まれたかについては、同氏が使用した歯磨き粉に混入されていたという説や、食べ物の中に混入されていたという説、はたまたアラファト氏が病院で着ていた服に付着させたという説など様々である。
しかし少量で継続的な激痛をもたらし死に至らしめるポロニウムをどのような方法でアラファト氏の体内に送り込んだのかという問題よりは、誰の仕業であったかという点の方が重要である。この点について主犯として名指しされているのがイスラエルである。
「アラファト氏は、過激派・政治指導者としての生涯を通じて、イスラエルによる占領と抑圧からパレスチナの民衆と土地を解放し、パレスチナを独立国として国際社会の中で本来あるべき地位に復帰させるという悲願を妥協なく追求した人物だった。」とガルフ・ニュース紙は11月8日付の論説の中で報じた。
イスラエルの指導者はアラファト氏の生前、同氏を公然と「敵とみなしている」と語り、口封じの対象であることを示唆していた。アラファト氏の存在は、パレスチナ民衆に加えられている非合法かつ不道徳なイスラエルの行為を国際社会に訴える生きた象徴であり、パレスチナ人の大義を中東和平問題の中心課題に据え続けたアラファト氏の手腕は、イスラエルにとっては困惑の元凶であり、アラファト氏は文字通りイスラエル政府にとって不倶戴天の敵であった。
ポロニウムは、核開発プログラムを通じて人工的に生成しない限り自然界にはほとんど存在しない(ウランの100億分の1程度)放射性物質であり、イスラエルは2004年当時、(自国の核開発プログラムを通じて)容易に入手できた。イスラエルの保安・諜報部員は、このパレスチナ人活動家に対して、最も非道な手段を講じたのである(イスラエルは関与を否定:IPSJ)。なお、同国は、2010年にもここUAEの主権を侵して偽造外国人旅券で保安・諜報部員をドバイに入国させ、ハマス幹部マフムード・マフブーフ氏を暗殺するという非道な手段を実行した経歴がある。
しかし、米国および国連安保理(における米国の拒否権)によってイスラエルが今日の地位を保証されている限り、アラファト氏を殺害した実行犯らが公正な裁きを受ける日は、決して訪れないだろう。(原文へ)
翻訳=IPS Japan
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