【アブダビWAM】
アラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙は9月12日、バラク・オバマ大統領が10日に行った国民向け演説について、「中東地域からの幅広い合意が得られなければ、たとえ軍事的な勝利を収めたとしてもそれを長期に亘る政治的な成功へと繋げていくことは期待できないだろう。」とコメントした。オバマ大統領は演説の中でスンニ派過激組織「イスラム国」壊滅を最終目標とする包括戦略を発表、アラブ諸国・同盟国との連携による軍事作戦(軍事顧問の派遣と空軍支援)を展開していくことと、米軍による空爆対象を従来のイラクからシリアに拡大することを表明していた。
オバマ大統領は、イラク・シリアにおいてスンニ派住民を動員して「イスラム国」勢力を国外に駆逐する手助けをしてくれるアラブ国家を求めて、政府関係者を中東各地に派遣している。ガルフ・ニュース紙は、オバマ大統領が「これこそ、米国のリーダーシップの最高の形であり、私たちは自らの自由のために戦う人々を支持し、共通の安全保障と共通の人間性を守るために他国に参加を呼びかける。」と述べた点について、「オバマ氏一級のレトリックだ」と指摘したうえで、「問題は、この美辞麗句は米軍が最初にイラクに侵攻した際にも耳にしていることだ。その後、イラクは内戦状態に陥り、深刻な宗派対立は今日まで続いているではないか。従ってオバマ大統領が今日すべきことは、今回の軍事作戦がこれまでのものとはどのように異なるのか、そしてこれがどのようにしてこの地域に恒久平和をもたらすような永続的な政治体制を構築することになるのかを、明確にすることだ。」と9月12日付論説の中でコメントした。
ガルフ・ニュース紙はまた、「今回の戦争の最終的な政治目的についてオバマ大統領がほぼ沈黙を守ったことは問題であり、より明確に説明すべきだ。」と指摘した一方で、「『イスラム国』の脅威と闘っていくうえで、米国が先導的な役割を果たしているのは大いに歓迎だし、イラクをはじめ中東諸国と連携している点は重要である。また、オバマ大統領がシリアのアサド政権とは協力せず、『イスラム国』に対抗する勢力としてシリア反政府勢力に対する支援案への承認を米議会に求める立場を明確にした点も重要である。」と報じた。
さらにガルフ・ニュース紙は、「米国は、軍隊を統率でき地域に安定をもたらすことができる実力者なら誰とでも組むのではないかという懸念が高まっていた」点を指摘したうえで、「オバマ政権が自国民を恐怖のどん底に陥れ、失った正当性を二度と回復することがないアサド政権を決して信頼しないと判断をしたことは大いに心強い。」と報じた。(原文へ)
翻訳=IPS Japan
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