【London Post=スルシュティ・ホデ】
カザフスタンは、資源依存型国家から持続可能なエネルギーと外交的安定の拠点へと転換し、世界舞台で重要な存在感を示しつつある。再生可能エネルギーへの戦略的注力、均衡の取れた外交政策、包摂的成長への取り組みによって、同国は国際社会における役割を再定義している。
ワシントン・コンサルティング・ソリューションズのマネージング・パートナーであり、ヘンリー・ジャクソン協会の准研究員でもあるダレン・スピンク氏にインタビューし、こうした変化を詳しく探った。スピンク氏は今年初めのアスタナ国際フォーラムに参加しており、カザフスタンの再生可能エネルギー戦略、平和仲介者としての役割、文化外交や包摂的成長が同国の未来をどのように形作るかについての見解を語った。
再生可能エネルギーへの野心
カザフスタンは再生可能エネルギー分野で大きな前進を遂げており、エネルギー源の多様化と化石燃料依存の低減を目指している。過去10年で100件以上の再生可能エネルギー事業が開発され、風力や太陽光発電が含まれている。特筆すべきは、エンビジョン・エナジーとの合弁による風力発電機の国内生産計画や、アラブ首長国連邦の支援による出力1GWの風力発電所であり、年間30億キロワット時以上のクリーン電力を生み出す見込みだ。
スピンク氏は、この取り組みがカザフスタンを特別な位置に押し上げていると指摘する。「米国はいまだ化石燃料に大きく依存していますが、カザフスタンと英国は再生可能エネルギーで共通基盤を見いだしています。英国は洋上風力発電の経験があり、カザフスタンのグリーントランスフォーメーションに投資する意欲があります。」と述べ、両国の協力がカザフスタンを地域のクリーンエネルギーの先導役に押し上げる可能性を示唆した。
中立的な外交姿勢

カザフスタンの外交政策は、中立と対話を重視している。最近の例としては、カシムジョマルト・トカエフ大統領がアゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領と電話会談を行い、地域の調停役としての役割を示したことが挙げられる。
「トカエフ大統領は、現代的な外交アプローチを通じて、カザフスタンが信頼される調停者としての役割を果たせることを示した。」とスピンク氏は述べ、同国の実利的な国際関係アプローチを強調した。
この中立外交は、強固な貿易関係や安全保障パートナーシップと相まって、中央アジアにおける安定勢力としての信頼性を高めている。
トランス・カスピ海開発銀行の構想
スピンク氏は、地域のインフラやエネルギー事業を資金面で支える「トランス・カスピ海開発銀行」の設立を提案した。こうした金融機関は、カザフスタンの再生可能エネルギー推進を後押しするだけでなく、カスピ海諸国間の経済統合と安定を促すだろうと語った。
「地域開発銀行を創設すれば、東西をつなぐ金融の架け橋となり、投資を促進し、繁栄を共有できる」とスピンク氏は説明した。

女性のエンパワーメントと包摂的成長
カザフスタンはジェンダー平等と包摂的な経済発展にも力を入れている。再生可能エネルギー分野では女性がリーダーシップを担う場面が増え、グリーントランスフォーメーションに貢献している。
「女性や若者を力づける社会は、その可能性を倍増させる社会です」とスピンク氏は述べ、持続可能な発展を推進するうえで包摂的政策の重要性を強調した。
次世代の力を引き出す
カザフスタンの若者たちも、再生可能エネルギーの取り組みに積極的に貢献している。中国で開催された第4回SCO青年イノベーション・起業家コンペティションでは、カザフのクリーンテック系スタートアップが上位入賞し、スマートエネルギーや持続可能な開発における革新的な解決策を披露した。
また、アルマトイ電力通信大学(AUPET)は学生にグリーンスキルを育成する拠点となっており、再生可能エネルギーやグリーン技術の教育プログラムが2024年のグリーンスキル賞の最終候補に選ばれた。同国が未来のリーダーを育成し、持続可能なエネルギー社会を築こうとしている姿勢を示している。
アスタナ国際フォーラム―世界対話の場
アスタナ国際フォーラムは、カザフスタンの世界的な野心を最も鮮明に示す舞台の一つとなっている。今年のテーマ「心をつなぎ、未来を形作る」は、トカエフ大統領が掲げる「対話こそが平和と進歩の礎」というビジョンを反映していた。フォーラムには政治、学術、経済の各界リーダーが集まり、アスタナは国際協力の拠点となった。
国際社会における戦略的位置
戦略的な地理的位置と均衡の取れた外交政策により、カザフスタンは世界の主要なプレーヤーとしての地位を確立しつつある。再生可能エネルギーを優先し、包摂的成長を推進し、地域の安定を図ることで、国際舞台での影響力を高めている。
トカエフ大統領の指導力は、持続可能な発展と国際協力への強いコミットメントを体現している。対話と現実的な外交を重視する姿勢は、革新、安定、そして国際的関与に特徴づけられる新しい時代をカザフスタンにもたらしている。
カザフスタンは、影響力とは単に国の大きさや軍事力から生まれるのではなく、信頼、均衡、そしてビジョンから生まれることを証明している。その意味で、「新しいカザフスタン」はまさに台頭している。(原文へ)
INPS Japan
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