地域アジア・太平洋中央アジア:混乱から恒久平和へ

中央アジア:混乱から恒久平和へ

【London Post=エルドル・アリポフ】

平和は、ときに紛争が地域のアイデンティティに深く刻み込まれた場所にこそ見いだされることがある。中央アジアのフェルガナ盆地は、その最たる例である。かつてはウズベキスタン、キルギス、タジキスタンの間で争いの火種となっていたこの肥沃な地は、現在、世界でも有数の平和構築モデルとして注目されている。

長年にわたり、フェルガナ盆地はポスト・ソ連時代の分断の深い傷跡を象徴してきた。国境封鎖、断続的な緊張、過激思想の台頭、そして国境線によって引き裂かれた共同体――。状況はあまりに深刻で、多くの政治評論家がこの地域を「中央アジアのアキレス腱」と呼んだ。

しかし今日、三国政府の実務的なリーダーシップのもと、かつて対立していた地域社会は国境を越えて交流を深め、貿易を拡大し、十年前には想像もできなかった信頼の雰囲気を共有している。

London Post.

この変化は偶然ではない。競争やゼロサム思考よりも協力と共通の繁栄を優先する「政治的実務主義」が原動力となった。その中心にいるのがウズベキスタンのシャフカト・ミルジヨエフ大統領である。彼の改革志向かつ地域重視の政策は、中央アジアの進路そのものを再定義した。彼は第80回国連総会でこう語っている。
「閉ざされた国境、未解決の紛争、対立の時代は過去のものとなった。今日、私たちは“新たな中央アジア”の形成を始めている。」

その言葉は行動に移された。2025年3月に署名された「永遠の友情に関する宣言」と「国境接点に関する条約」は、長年の不信を終結させる歴史的な合意となった。ミルジヨエフ大統領の指導のもと、ウズベキスタンは開放政策、国境和解、共同開発プロジェクトを推進し、フェルガナを協力の肥沃な地へと変貌させた。その実務的なアプローチ――貿易、交通網、人と人との交流に焦点を当てた政策――は、隣国のキルギスやタジキスタンにも波及し、協調の精神を共有する動きを促している。

かつて紛争の原因であった限られた共有資源、特に水資源は、いまや政治的合意の中核となっている。アムダリヤ川やシルダリヤ川流域の資源共有を保証する協定が近年相次いで締結され、2025年5月には作付期における水分配に関する合意も成立した。これは一方的な利用競争から、ルールに基づく協調への転換を意味する。農民にとっては綿花や果実作物の安定した灌漑を意味し、国境村の住民にとっては紛争の減少と安定の向上を意味している。

フェルガナ盆地の人々にとって、これらの変化は古き良き共生の時代の復活でもある。共同体の記憶は、古代シルクロードの時代まで遡る。当時フェルガナは隊商と商取引の十字路であり、多様な民族が土地と水を分かち合い、寛容と相互依存の精神で共存していた。ウズベクの学者が「調和のコード」と呼ぶその精神は、決して消え去ったわけではなく、ただ長く沈黙していただけだった。

その調和の精神は、今月初めて開催された「フェルガナ平和フォーラム」で再び示された。ミルジヨエフ大統領の提唱により実現したこの会議には、地域の政治指導者や草の根のコミュニティが参加し、「中央アジアの平和は外部勢力によってではなく、自らの指導者と人々の手によって築かれる」という強いメッセージを世界に発信した。女性団体や若者組織などの積極的な参加も、平和構築にはすべての声が反映されるべきであるという重要な理念を体現していた。

Map of Central Asia
Map of Central Asia

フォーラムの中心では、フェルガナ平和フォーラムを常設のプラットフォームとし、今後はキルギス、タジキスタン、ウズベキスタンの順に開催地を持ち回りとすることを呼びかける共同声明が採択された。また、フォーラムの枠組みの下で、初の「キルギス・ウィンティマク(団結)の日」が共同開催され、地域の一体感をさらに強めた。

平和は繁栄をもたらす――それはよく知られた真理である。フェルガナ盆地は、今や10年前には想像もできなかった経済変貌の只中にある。国境制限に縛られていた往時とは異なり、現在のフェルガナは繊維産業、農業、越境貿易の活発な中心地となり、地域全体の要として機能している。ウズベキスタン領フェルガナ地域の地域総生産は過去8年間で4倍に増え、現在は約200億ドルに達している。同期間に輸出額は2.4倍の27億ドルに拡大し、キルギスおよびタジキスタンとの越境貿易も3倍の16億ドルに達した。2017年から24年の間に投資総額は312億ドルに上り、約100万人の雇用を創出、貧困率は13.9%から8.6%に低下した。

紛争が世界各地で再燃するなか、フェルガナ盆地の静かな成功はより広く注目されるべきである。中央アジアはもはや世界の周縁ではない。実務的リーダーシップ、地域協力、そして「共に生きる」という人々の意志が、平和構築の新たな教訓を世界に示している。

エルドル・アリポフ博士(政治学博士/ウズベキスタン大統領付属戦略・地域研究所長)

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