地域アジア・太平洋トランプ氏の中国訪問―成果を持ち帰れるか

トランプ氏の中国訪問―成果を持ち帰れるか

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ズー・ジーチュン】

米国がイランに対する「オペレーション・エピック・フューリー(壮絶な怒り)」を継続し、さらにそれ以前にはベネズエラの指導者ニコラス・マドゥロ氏を拉致するなど、国際秩序を深く傷つけてきた一方で、トランプ大統領による2026年3月31日から4月2日にかけての中国訪問に向けた準備が進められている。

トランプ氏が前回中国を訪れたのは、第1次政権下の2017年11月であった。この訪問は成功と評価され、ホワイトハウスによれば、中国との「生産的な関与」の土台を築いたとされる。トランプ氏は、これまでどの米大統領も受けたことのない特別な厚遇を受けた。中国の習近平国家主席が、紫禁城内で自ら茶会を催したのである。これに先立ち、トランプ氏は2017年4月、フロリダ州のマール・ア・ラーゴ私邸に習主席を迎えていた。だが、この蜜月は長くは続かなかった。トランプ政権は2018年7月6日、中国からの輸入品に25%の関税を課し、貿易戦争を開始した。その後、関係悪化はトランプ第1次政権の残りの期間、そしてバイデン政権を通じて、米中関係の支配的特徴となった。

もっとも、2024年11月の大統領選でトランプ氏が勝利した直後、米中関係は順調な滑り出しを見せた。トランプ氏はたびたび習主席との良好な関係を誇示し、就任式にも招待した。これに対し、習主席は韓正国家副主席をワシントンに派遣した。これはその種の機会としては、中国側の出席者として最高位に当たる。

第2次トランプ政権では、トランプ氏自身が事実上の「対中交渉責任者」であるかのように振る舞い、中国に対しても前政権期より柔軟な姿勢を見せている。最新の国家安全保障戦略と国家防衛戦略はいずれも、中国への言及は比較的抑制されており、中国を米国の「ペーシング・スレット(最重要の戦略的脅威)」とは位置づけていない。現政権の閣僚もまた、対中強硬一辺倒ではない。とりわけマルコ・ルビオ国務長官は、上院議員時代の強硬姿勢とは対照的に、中国との関与と対話の必要性を唱えるなど、現実的な対応を際立たせている。

第2次トランプ政権では、トランプ氏自身が事実上の対中政策の司令塔となり、中国に対してもより柔軟な姿勢を見せている。最新の国家安全保障戦略と国家防衛戦略はいずれも中国への言及を抑え、中国を米国の「ペーシング・スレット」とは位置づけていない。閣僚も対中強硬一色ではなく、とりわけマルコ・ルビオ国務長官は、上院議員時代とは異なり、中国との関与と対話の必要性を唱えるなど、現実路線を鮮明にしている。

しかし、2025年4月2日、トランプ氏は「解放の日(Liberation Day)」関税として、事実上すべての貿易相手国を対象に大規模な関税措置を発動し、中国は累積関税率が最大145%に達する最大の標的となった。これに対し中国も、米国製品に最大125%の関税を課して強硬に応じた。さらに中国は、レアアース(希土類)の輸出規制を迅速に導入し、米国産大豆の輸入停止にも踏み切った。これは、トランプ氏の支持基盤である農家を含め、米国経済に打撃を与えた。

数度にわたる交渉を経て、両国は、いわゆる関税の「休戦」に達した。2025年10月30日、韓国・釜山で習主席と会談した際、トランプ氏は中国を「米国最大のパートナー」と呼び、両国は常に「素晴らしい関係」にあったと主張した。その場でトランプ氏は、2026年春に中国を訪問する方針を改めて確認した。

多くの人々は、トランプ氏が中国との間でどのような取引を目指しているのか疑問を抱いている。中国による米国製品の購入拡大と引き換えに、台湾を犠牲にするのではないかとの憶測もある。トランプ政権は最近、総額130億ドル規模の対台湾武器売却を見送ったが、これはトランプ氏の訪中を頓挫させないための戦術的調整にすぎない。この売却は、トランプ氏の帰国後には間違いなく進められるだろう。台湾は戦略的にも経済的にも重要であるため、米国が台北を切り捨てて北京を喜ばせる可能性は低い。

台湾問題や国際秩序、さらには世界的なパワー移行に伴う構造的対立など、難題が山積するなか、米中両国はトランプ氏の訪中に過度な期待を抱くべきではない。むしろ現実的な姿勢を取り、いくつかの具体的な成果を目標とすべきである。

第一に、現在の関税休戦を延長することである。今回の訪問は貿易が主題となる見通しであり、両首脳は、より良い解決策が見つかるまで、新たな関税を課さないことで一致すべきだ。中国が引き続き米国からの輸入を拡大するのであれば、ワシントンは対中関税を引き下げ、輸出規制を緩和すべきであり、中国もそれに応じて相応の措置を取るべきである。ワシントンにとって明るい材料は、2025年の対中モノの貿易赤字が2020億ドルまで縮小し、20年以上ぶりの低水準となったことである。中国は、政治的雰囲気さえ整えば、石油やボーイング機を含め、米国からの輸入をさらに増やす意思も能力もあるようだ。

第二に、ヒューストンと成都の総領事館を同時に再開すべきである。米国が2020年7月、中国の在ヒューストン総領事館に対し、わずか72時間での退去を命じて閉鎖した判断は拙速であった。中国は報復として米国の在成都総領事館を閉鎖し、両国関係はさらに悪化した。ヒューストンと成都は、それぞれの国の内陸・中核地域を象徴する都市である。この2つの外交拠点を再開することは、両国の中核地域間における貿易その他の交流を大きく拡大させるだけでなく、相違を抱えつつも両国が理性的かつ平和的に関与する意思を有していることを、世界に示すシグナルにもなる。

第三に、観光と教育交流を促進することである。観光や人的往来は、政治・外交上の緊張を和らげる緩衝材となり得る。中国はすでに、カナダや英国を含む数十カ国の国民に対し、30日間の査証免除措置を認めているのだから、米国人にも同様の措置を検討できるはずである。より多くの米国人を中国に呼び込み、訪中を容易にするうえでも、北京がトランプ氏の訪中中に、米国人向けの30日間のビザ免除措置を打ち出すのは理にかなっている。他方、米国も、より多くの米国人が中国を訪れ、学ぶことを後押しすべきである。こうした措置は、米中両国民の間に好意的な空気を育む一助となるだろう。

米中関係は、きわめて厳しい課題に直面している。それでもトランプ氏も習主席も、首脳会談が二国間関係の悪化に歯止めをかけるうえで極めて重要だとみており、ともに今回の訪中を成功させたい考えである。

双方は、台湾や国際秩序のような極めて対立の大きい問題については、「意見の相違を残したまま折り合えないことを認める」ほかないだろう。その代わり、強固な通商関係の維持や人的交流の促進といった、利害が一致する分野に焦点を当てるべきである。緊密な貿易関係と幅広い社会的交流に支えられた関係は、戦争に至りにくい。一度の訪問で、競い合う二つの大国の間に横たわるすべての問題が解決するわけではない。だが、関係の安定化に資する現実的なアプローチは、両国の利益にかなう。

ズー・ジーチュン氏は、米バックネル大学の政治学・国際関係学教授で、中国研究所所長。全米米中関係委員会のメンバーでもある。中国外交と米中関係を中心に幅広く執筆しており、2005年の著書『US–China Relations in the 21st Century: Power Transition and Peace』(Routledge)では、パワー・トランジション理論を米中対立の分析に適用した先駆的研究者の一人として知られる。シンガポールのThinkChinaでコラムを執筆するほか、学術誌『China and the World』の編集長も務めている。

Original URL: https://toda.org/global-outlook/2026/trumps-china-trip-aiming-for-deliverables.html

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