【ミラノINPS Japan/CitiPlat=アルベルト・スクラヴェラーノ】
この映画が浮き彫りにするのは、現在進行する気候危機をめぐる最も不穏な側面の一つである。その手法と目的から見れば、英米圏における優れた調査報道の伝統を受け継ぐ作品と位置づけることができる。比較するなら、マイケル・ムーアのドキュメンタリー作品を思い浮かべるとよいだろう。|英語版|
米国の映画監督ガブリエラ・カウパースウェイトは、2022年のドキュメンタリー映画『ザ・グラブ(The Grab)』によって国際的な注目を集めた。同作は同年9月のトロント国際映画祭でプレミア上映された後、2024年春から世界各地の劇場やVOD(ビデオ・オン・デマンド)で本格的に公開された。
物語の中心にあるのは、米国の非営利報道機関「センター・フォー・インベスティゲーティブ・リポーティング(Center for Investigative Reporting)」の記者たちによる調査活動である。
彼らは世界各地を飛び回り、「カネの流れを追う」ことで、民間企業や国家などさまざまな主体が、食料や水をはじめとする生命維持に不可欠な資源の支配権をめぐって競争を繰り広げている実態を丹念に記録していく。その目的は、気候変動によって将来、生態系が崩壊する事態に陥った場合に備え、あらかじめ優位な立場を確保しておくことにある。
こうした国家・非国家主体そのものは、決して目新しい存在ではない。しかし、彼らが実際に何をしているのかについては、大多数の人々がほとんど知らないのではないだろうか。映画はその実態を詳細に描き、軍事機密の壁に阻まれない限り、入手可能な情報をカウパースウェイト監督と制作チームが徹底して掘り起こしていく。
例えば、米国の民間軍事会社ブラックウォーターが、アフリカで土地を取得し、資源供給網における戦略的な足場を築こうとする動きが紹介される。
また、一見すると信じ難いような事例も登場する。プーチン政権下のロシアが、米国からカウボーイを招き、寒冷地で牧畜に従事させているというのである。その背景には、将来、気候危機によって農業が深刻な打撃を受ける一方、現在は乾燥しているロシアの辺境地域の一部が、逆に農業生産に適した土地へと変わる可能性があるとの見通しがある。
中国共産党からサウジアラビアの民間ファンド、米国政府からロシア政権に至るまで、それぞれの主体が利用可能な資源を最大限に確保し、将来の水と食料の供給拠点を支配しようと、それぞれの思惑に基づいて動いている姿が描き出される。
ここに巨大な陰謀や秘密計画があるわけではない。描かれているのは、近い将来に地球の生態系が崩壊する可能性をすでに現実のものとして受け止め、その状況を自らに有利な形で利用し、力を最大化すると同時に潜在的な競争相手を弱体化させようとする国際的な主体の姿である。
真に不気味なのは、こうした構図の中に、気候変動を食い止めるための国際協調という発想がほとんど見当たらないことである。世界の人々の幸福や人権は考慮の外に置かれ、気候危機そのものが、もはや避けられない既定の現実として扱われている。
『ザ・グラブ』は、映画的な体験というより、むしろ生々しい事実とデータを積み重ねた作品である。アル・ゴア元米副大統領が前面に立った『不都合な真実(An Inconvenient Truth)』のような「一人舞台」ではなく、他の気候変動ドキュメンタリーにしばしば見られる、強い活動家色を打ち出した作品とも異なる。
むしろ、その冷徹なアプローチこそが、この作品をより強烈で、同時により悲痛なものにしている。
世界では、市民から政府関係者に至るまで、何百万人もの人々が日々、気候危機を食い止めようと努力している。それにもかかわらず、なぜ危機はますます深刻になっているように見えるのだろうか。

『ザ・グラブ』は、この問いに一つの重い答えを提示する。
世界のエリート層や経済・軍事大国の一部は、そもそも気候変動を解決することに関心を持ってこなかった。それどころか、生態系が崩壊した後の世界を生き残るための準備を、すでに進めているというのである。
映画が明確に示しているのは、私たちが次世代により良い世界を残そうとするなら、大気中のCO2(二酸化炭素)排出や海洋を汚染するプラスチックと同様に、こうした主体の存在そのものもまた、問題を構成する重要な一因であると認識しなければならない、ということである。
Original URL: The Grab
INPS Japan
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