【ニューヨークIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】
宗教コミュニティーは、世界の被爆者の声に耳を傾けるよう呼びかけるとともに、ニューヨークの国連本部で「核兵器の完全廃絶につながるような、法的拘束力のある文書」について交渉する国連会議の必要性を強調してきた。
国連核兵器禁止条約交渉会議2日目の3月28日に発表された共同声明は、20以上の団体および個人が賛同しており、核兵器の使用・保有・開発・製造・入手・移転と配備の禁止、ならびに、それら禁止行為に関わる、誘導・奨励・投資ならびに支援の禁止を「条約の文言に明確に示す」よう求めている。さらに、その新しい法的取極は、「核兵器の全廃義務を提示するものであり、またその達成のための枠組みを提供するもの」とするよう求めている。
同声明はまた、「この新しく制定される法的取極が、核兵器使用によってもたらされる人道的被害を防ぐことに、その根本の正当性がある」と説明している。
この法的取極めがもつ「明確な正当性」とは、広島・長崎の人々が経験した苦しみを「他の人々や家族、そして社会に再び訪れることがない事」を確実にすることにある。「核兵器の人道的影響が全ての核軍縮に関する努力の中心に据え置かれるべきである。」と、同声明は宣言している。
宗教コミュニティーはさらに、「核軍縮に導く交渉を誠実におこないかつ完結させる義務を果たすよう」、全ての国がこの交渉に参加するよう呼びかけ続ける必要性を強調した。
ニューヨークの国連本部で開催された国連核兵器禁止条約交渉会議の第一会期(3月27日~31日)に120カ国が参加する中、ドナルド・トランプ政権の国連大使であるニッキー・ヘイリー氏は3月27日、国連安全保障理事会で拒否権をもつ英国とフランス、さらに、ロシアの脅威を感じている東欧の多くの同盟国と共に、交渉会議に対する抗議行動を行った。
安保理五大国(P5)の残りの2か国であるロシアと中国は、この抗議行動には参加しなかった。しかし、この両国とも、オーストリア・ブラジル・メキシコ・南アフリカ共和国・スウェーデンが主導して2016年10月に初めて開催が発表された今回の国連核兵器禁止条約交渉会議には参加していない。
「核兵器を憂慮する宗教コミュニティー」と題された共同声明は次のように述べている。「1945年8月に広島と長崎が最初の核攻撃を受けて以来、核兵器がもたらす悲惨な結末は、その廃絶の必要性を示してきました。1945年以降、人類は核兵器による黙示録的な破壊の影のもとで暮らし続けることを余儀なくされています。ひとたび核兵器が使用されれば、人類文明のこれまでの成果が破壊されるだけでなく、現世代は傷つき、将来の世代も悲惨な運命へと追いやられるのです。」
同声明には次の宗教団体が賛同している。世界各地のパックス・クリスティの組織、世界教会協議会、ノルウェーキリスト教協議会、創価学会インタナショナル、ムスリム平和フェローシップ、核軍縮のためのキリスト教者キャンペーン、フランシスコ会行動ネットワーク、英国のクウェーカー教徒、修道女会指導者会議(LCWR)、世界ボシュニャク会議、ユニテリアン・ユニバーサリスト協会、メノナイト中央委員会国連事務局、サウンド・ヴィジョン、世界宗教者平和会議。
「私たちの信仰が掲げる価値観は、安全と尊厳の中で人類が生きる権利を求めています。私たちは、良心と正義の要請があることを信じ、弱き者を守る義務、未来の世代のために地球を守る責任感に誇りを持つべく努力しています。」と共同声明は述べている。
宗教コミュニティーは、核兵器はこうした価値観や約束事を蔑ろにするものであると確信している。国家の安全保障や国家関係の安定、あるいは政治的惰性といったいかなる理由をもってしても、核兵器の存在、ましてやその使用を正当化することはできない。核兵器がもたらす壊滅的な人道上の結末は、それがいかなる状況においても二度と使用されてはならないことを求めている。
宗教コミュニティーは、本来あるべき正常な精神と人類が共有する価値の名のもとに、声を挙げている。また、これまでに発明された史上最悪の兵器を禁止するための協議を歓迎するとともに、おぞましい死の恐怖をもって人類を人質にとる非道を拒絶している。また、この交渉会議を開始する勇気を示した世界の政治指導者らを称賛している。そして、交渉に参加しない国の政治指導者たちが、自国の立場を見直し、少なくとも6月15日~7月7日に開催される交渉会議(第2期)に誠実に参加するよう、強く訴えている。(原文へ)
翻訳=INPS Japan
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