SDGsGoal12(作る責任 使う責任)ケニアの少女たち、侵略的なマセンゲの木を家具に再利用

ケニアの少女たち、侵略的なマセンゲの木を家具に再利用

【カクマ(ケニア) IPS=ファライ・ショーン・マティアシェ】

ケニア北部トゥルカナ郡、カクマ乾燥地帯中等学校。16歳のチャー・ティトさんは、教室棟の外で強い日差しのもと、木材に釘を打ち込み、伝統的な椅子を製作している。

彼女が使っている木材は、この地域では好まれていないものだ。中南米原産のマメ科樹木プロソピス・ジュリフローラ(現地名マセンゲ)だ。

トゥルカナ郡の住民は、この侵略的なマセンゲを嫌っている。トゲが鋭く、人や家畜を傷つけ、川やダムの水が早く枯れる原因ともなる。また、他の植物の生育を妨げるとも言われている。

長年にわたり、住民はマセンゲを薪や木炭用に利用してきたが、いま若者たち、特に少女たちが、この木を家具、特に椅子に作り変える取り組みを始めている。

「プラスチック製の椅子は高価なんです。だから私は今月からマセンゲで椅子を作り始めました」と、2017年に南スーダンの戦争から逃れてカクマ難民キャンプに来たティトさんは語る。

「学校で作り方を教わりました。マセンゲは豊富にあるし、ずっと薪に使ってきましたが、椅子が作れるとは知りませんでした」

収入源となる取り組み

カクマは乾燥した土地で植生はまばら、農業に適さない痩せた土壌だ。年間降水量も非常に少なく、5年もの間、雨が一滴も降らないこともある。

この地域の木々の大半はアカシアとマセンゲ。厳しい高温と水不足の中でも常緑を保つ。

政府の統計によると、マセンゲは年間15%の速度で拡大し、すでにケニア国内100万エーカーを占めている。住民の一部はこの木を家の囲い柵や家畜小屋にも利用している。

地域の主な生業は家畜飼育と薪・木炭の取引だ。

ティトさんたちを支援している草の根NGO「ガール・チャイルド・ネットワーク(GCN)」のデニス・ムティソ副ディレクターは、この取り組みが学習者にグリーンスキル(環境関連の技能)を与えていると語る。

「国家の気候計画にも貢献しており、学校教育のカリキュラムにも合致しています」

椅子作りを学んだ若者たちは、未習得の仲間に技術を教え、地域全体に知識を広げている。

母親と3人の兄弟姉妹と暮らすティトさんは、現在は自宅用に椅子を作っているが、いずれ近隣に販売することを目指している。

「一生役立つ技術だと思います。これから大工仕事で生計を立てたいです」と笑顔で話す。

マセンゲは1970年代、劣化した乾燥地の再生を目的にケニアに導入された。乾燥に強く、深く根を張るため、トゥルカナのような地域の植林に適していた。風食も防いだが、住民にとっては負の側面もあった。

マセンゲは伐採してもアカシアなどと違い再生が非常に早い。

トゥルカナ郡林業局のルイス・オバム氏は「地域社会にはマセンゲへの否定的な見方がありました。ヤギがマセンゲを食べて死亡することもあり、トゲも問題でした」と話す。

「もともとは砂漠化防止のために導入された善意の取り組みでした。ですが、この木の硬材は椅子作りに適しており、多くの可能性があります。この地域で2番目に硬い木材なんです。最大限活用すべきです」

環境保護に貢献

ティトさんや他の少女たちは、マセンゲ以外の木も学校や自宅で植えている。ティトさんは自宅で5本、学校でも多く植樹したが、気温が47度にも達する中、水の確保が課題だ。

「気候変動対策に貢献できて誇りに思います」

少女たちは時に自宅から水を持参して学校の木々に水やりしている。樹木は大気中の二酸化炭素を吸収し、気候変動の緩和に役立つ。

ケニア政府は2032年までに150億本の植樹を目指している。

同校のもう一人の生徒、16歳のマグダレン・ニグモエさんも自宅で2本の木を植えたという。

「マセンゲは嫌い。生活が大変になる。でも、その木で椅子が作れるのはうれしい。学校でも木を植えていて、将来、他の生徒に日陰を作れるでしょう」と語る。

7人兄妹の長女で、家族は食肉販売で生計を立てている。彼女も椅子作りの技術で収入を得ることを期待している。

ケニア難民局のエドウィン・チャバリ氏は「マセンゲはこれまでキャンプ内外で厄介者扱いされてきましたが、地元の若者が収入源にできるのは良いことです」と話す。

GCNはカタールのEducation Above All財団からの資金提供を受け、これまでカクマとダダーブで89万6000本を植樹、来年までに240万本を目指している。

科学が好きなニグモエさんは将来、弱い立場の子どもたちを守る弁護士になりたいという。

1992年設立のカクマ難民キャンプには、南スーダン、ブルンジ、ソマリア、コンゴ民主共和国など10カ国以上から30万4000人が暮らしている。

ケニア教員委員会(TSC)トゥルカナ郡支部のジョセフ・オチュラ氏は、植樹活動によって学校の学習環境が改善されていると語る。

「支援を受けた学校では大きな木陰が見られます。休み時間には生徒も教員もそこで過ごしますし、時にはその木陰で授業が行われることもあります」

政府目標の150億本のうち、TSCには2億本の植樹が割り当てられている。

一部の学校では自前の苗木園も設けており、育った苗は学校や地域に植えている。

「少女たちが植樹活動をリードしているのは素晴らしいことです。学校外でも地域で続けてほしいと伝えています」とオチュラ氏は述べた。

英語が好きで医師を目指すティトさんは、カクマで生まれつつあるグリーンジョブの一端を担っていることを誇りに思っている。

「女の子として、自分が環境保護に貢献しているのが誇らしいです」(原文へ)

INPS Japan/ IPS UN Bureau

関連記事:

成功を調理する:アンゴラでクリーンエネルギーの利用拡大を目指すソーラーキッチン・イニシアチブ

最新情報

中央アジア地域会議(カザフスタン)

アジア太平洋女性連盟(FAWA)日本大会

2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会 

パートナー

client-image
client-image
client-image
client-image
Toda Peace Institute
IPS Logo
The Nepali Times
London Post News
ATN

書籍紹介

client-image
client-image
seijikanojoken