INPS Japan/ IPS UN Bureau Report核不拡散再検討会議の議題、依然として不透明

核不拡散再検討会議の議題、依然として不透明

【ニューヨークIPS=ナウリーン・ホセイン】

核兵器不拡散条約(NPT)が地政学的な打算と不信の重圧によって崩壊することは決して許されない—国連で開催された準備委員会で各国はそう訴えた。

今年4月28日から5月9日にかけて開かれた「2026年NPT再検討会議に向けた第3回準備委員会」では、条約および来年の再検討会議に関連する手続き上の課題が議論された。これは再検討会議に向けた最後の準備会合であり、各国がNPTの原則を再確認する貴重な機会でもあった。

会期中、各国代表団は自国の立場を表明し、2026年会議の議題を形作る勧告案について討議を重ねた。加盟国のみならず、市民社会団体も核兵器問題の緊急性を強調し、加盟国に行動を求めた。

ICAN
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「核兵器の存在は依然として、地球上の生命の存続を脅かす最も切迫した危機のひとつです。」と「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」のアドボカシー担当官フロリアン・エブレンカンプ氏は語った。さらに、「NPTの不拡散規範が地政学的な打算と不信の重圧によって崩れることがあってはなりません。NPTの将来を確かなものにするためには、加盟国が明確なメッセージを発する必要があります—核兵器は拡散されず、共有されず、正当化されてもなりません。」と続けた。

委員会議長を務めたのはガーナの国連常駐代表であるハロルド・アジェマン大使。会期冒頭で記者団に対し、「2026年再検討会議の成功は、加盟国がNPT上の義務履行においていかなる政治的意思を示すか、また既存の約束履行に対する説明責任をいかに強化するかにかかっている。」と語った。

アジェマン大使はさらに、「核軍縮における実質的な進展の欠如、そして新たな拡散のリスクが、非核世界の実現を目指して築かれてきた規範と体制を脅かしていることに、多くの人々が懸念を抱いている。」と語った。

UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri

今回の第3回準備委員会は、世界的に核拡散とエスカレーションへの不安が高まる中での開催となった。インドとパキスタン間の最近の軍事衝突により、2つの核保有国間の戦争懸念が世界に広がっている。また、4月以降、イランと米国は新たな核合意に向けた交渉を続けているが、イランの核開発制限を巡って膠着状態に陥る場面も見られた。

さらに、ロシアとウクライナの戦争など他の大国間の緊張も加わる中、各国がNPTの義務を誠実に履行し、不拡散に向けた緊急の行動を取るべき局面となっていた。しかし、会期終了時点で勧告案は合意に至らず、改訂版もコンセンサスを得ることはできなかった。こうした結果は、これまでの準備会合でも成果文書が採択されなかったという懸念すべき傾向を引き継いだものとなった。

5月9日の閉会に際して、エジプト代表団の1人は「透明性と説明責任をめぐる強化された手続きにおいて、期待された進展は得られず、遺憾である。議論自体は成熟しており、相互尊重と多国間主義への誠意ある姿勢に支えられていた。」と語った。

多くの代表団はNPTへのコミットメントと再検討プロセス強化への意志を改めて表明したが、一方で「複雑な地政学的状況」が合意形成の大きな障害となっていることも繰り返し言及された。

市民社会団体も今回の合意不成立に失望の意を示した。ICANは「現状のリスクに対する恐るべきまでの緊張感の欠如」を反映していると非難。さらに「Reaching Critical Will」は、核保有国が国際法とNPT上の義務に背いて核兵器廃絶に応じていないと強く批判した。

Ambassador Dang Hoang Giang, Permanent Representative of Vietnam to the United Nations. / UN Photo.

「NPT再検討会議(RevCon)は、2026年4月27日から5月22日までニューヨークで開催される予定であり、議長にはベトナムの国連常駐代表が指名された。」ダン・ホアン・ザン国連常駐代表は、議長として「包摂的で透明性があり、バランスの取れた議事運営」を旨とし、すべての加盟国の視点と利益が尊重されるよう努める意向を示した。

「今後の道のりは決して平坦ではありませんが、私たちは、集団的な知恵と共有された決意によって有意義な進展が実現可能であると確信しています。強固で効果的な条約は、すべての人々にとって、より安全で安心な世界を築く力となるでしょう。」とザン大使は語った。

核兵器の存在とその脅威はいまだに世界に重くのしかかっている。だからこそ、核兵器を単なる歴史の遺物として片付けることはできない。現代の地政学にもその影響は色濃く残っている。もし核不拡散の精神が今なお生きているのであれば、国際社会はNPTやその他の軍縮条約を積極的に擁護し続けるべきであり、一部の国々だけに世界の議題を左右させてはならない。これは不断の取り組みが求められる課題であり、不拡散と多国間主義が今後も損なわれないよう、国際社会は警戒を怠ってはならない。(原文へ

This article is brought to you by IPS Noram in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International in consultative status with ECOSOC.

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