【インド・ブバネシュワル IPS=マニパドマ・ジェナ】
11月になると、東インドのオディシャ州沿岸のわずか5キロメートルの浅瀬に、数万匹のオリーブリドリウミガメ(Lepidochelys olivacea)の雄が集まり始める。雌の到着を待つためだ。
この太古の海洋生物の生存は、適切なつがい形成と交尾に大きく依存してきた。しかし、世界中の研究結果は、長期的には交尾場で雄の数が減少し、雌が圧倒的多数になる可能性があることを示唆している。
いくつかの研究では、気候変動による砂温度の上昇により、孵化する子ガメの性比が雌に偏っていることが明らかになっている。
妊娠したリドリウミガメは、深さ約18インチのフラスコ型の巣穴を掘り、120〜150個の卵を産む。産卵後、後肢で砂をかけて巣を覆い、45〜55日間砂の中で自然孵化させる。小さな子ガメは夜間、表面の砂が冷えるのを待って自力で地上に出て、月光や星明かりが水面に反射する明るい地平線を頼りに海へと走る。
ウミガメは温度依存性の性決定を持つため、産卵地での孵化温度の上昇は、個体群の「極端な雌化」を引き起こす可能性があると科学者たちは警鐘を鳴らしている。
孵化性比、雌に大きく偏る?
オディシャ州ルシクリヤ海岸で15年間行われた研究では、孵化するオリーブリドリウミガメの性比は平均71%が雌で、年によっては90%以上に達することもあった。
オディシャ州のガヒルマタとルシクリヤは、オリーブリドリウミガメの世界最大級の産卵地であり、同規模の産卵地はメキシコとコスタリカにも存在する。
「2009年から20年の11年間、大半の年で雌に偏った性比が確認され、2011年と20年に最も高かった」と、インド科学研究所(IISc)生態科学センターのカルティク・シャンカー教授は、ダクシン財団による研究成果についてIPSに語った。
ウミガメの卵は、摂氏25〜35度という狭い温度範囲内でのみ正常に孵化できる。この範囲を超える高温では、孵化率が低下し、形態異常の増加が確認されている。


孵化温度の「ピボタル(分岐)温度」は約29度で、この温度では性比が1対1に近づく。それより高温では雌が多く、低温では雄が多くなる。
たとえば孵化温度が平均30度から31度に1度上がっただけで、孵化成功率が最大25%低下する可能性があるという研究もある。
国際自然保護連合(IUCN)は、一部の産卵地では緑ウミガメの孵化性比が雌99%という極端な例も報告している。
WWFインドの海洋種リーダーであるムラリダラン・マノハラクルシュナン氏はIPSに対し、「通常は50:50の性比が理想とされますが、熱帯や温帯など地理的な違いにより、60:40や70:30も許容範囲です。しかし、極端な雌偏りが5〜10回続く場合は警戒が必要で、緩和措置が求められます」と語った。
暑すぎる気候=異常な孵化
近年の気候変動は、性比の偏りだけでなく、さらに深刻な影響をもたらす恐れがある。長期的には、繁殖頻度の低下、卵の受精率低下による孵化成功率の低下が懸念されている。

さらに高温は胚の発育を早め、孵化期間が短縮されることで、より小型で運動能力の低い、エネルギー蓄積能力の低い子ガメが生まれ、生存率が低下する。

すでに脅かされてきたウミガメたち
温暖化は新たな脅威だが、ウミガメたちはこれまでも様々な人為的な圧力にさらされてきた。主なものは、漁業用の網(特に底引き網)による混獲、港湾や観光施設の建設、海岸浸食や砂の採取による産卵地の減少などである。
卵や肉の密猟は地元住民の意識向上で大幅に減少したが、人工照明による光害は増加している。これにより、孵化した子ガメが海とは逆方向に向かい、多くが命を落とす。
実際、オリーブリドリウミガメの子ガメが成体になる確率は、海に入った1,000匹のうちわずか1匹とされている。
最も豊富なオリーブリドリ、だが今後は?
オリーブリドリウミガメは世界で最も個体数が多い海洋ウミガメとされているが、2008年にIUCNは過去の推定で世界的な個体数が約30%減少したことから「危急種(Vulnerable)」に指定した。
ただし、IIScのシャンカー教授ら一部の科学者は「現在のインド沿岸のオリーブリドリは好調」とみている。

これまで温暖化の影響研究は北西大西洋や地中海で主に行われてきたが、今回のダクシン財団の研究はオリーブリドリに特化したものとして貴重だ。
オリーブリドリは全長60〜70センチ、体重35〜50キロの中型種。スペイン語で「到来」を意味するアリバダ(arribada)という集団産卵行動で知られ、これはユニークである反面、人為的な環境変化や温暖化の影響を受けやすい。
コミュニティの力がカメを守る
今年2月、ルシクリヤ海岸では過去最多の80万個の巣が確認された。ボランティアたちは「海岸はウミガメで埋め尽くされ、歩く場所もないほどだった」と話す。こうした成果は、地域住民主体の保護活動の賜物だ。
政府は産卵期の4か月間、禁漁区域を設定し、漁師に補償金を支払っている。国際的にもウミガメ製品の取引は禁止されている。だが最大の成果は、NGO、政府、沿岸警備隊、地元の漁師を含むボランティアの一体的な取り組みにある。
若い子どもたちまでが進んで保護活動に参加している。地元ボランティアは孵化した子ガメを安全に海へ送り出し、巣の監視やフェンス設置、夜間の見回りも行う。かつて盛んだった卵の密猟は減ったが、犬や鳥による捕食リスクは残っている。
長期的な追跡調査が鍵
シャンカー教授によると、「私たちはまだオディシャ州でのみ研究しており、長期的な人口動態を把握するには何十年もの追跡調査が必要です。ウミガメは長寿で成熟も遅いため、変化は数年単位で現れます」と述べている。
将来的には、より正確な性比データを得るため、胚成長モデルの活用などさらなる研究が計画されている。(原文へ)
INPS Japan/IPS UN Bureau
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