【国連IPS=ジェニファー・シンツー・リン・レヴィン】
国連加盟国は今週、ジェノサイド(集団虐殺)、戦争犯罪、民族浄化、人道に対する罪の防止に対するコミットメントを改めて表明した。だがこの誓いがなされる一方で、世界の大国はこれらの義務を果たせていない現実が突きつけられている。
「保護する責任(Responsibility to Protect=R2P)」原則の採択から20年を迎えた今週、国連では本原則に関する記念の本会議が開催された。多くの代表がR2Pの予防能力に一定の成果を認めた一方で、各国の一貫性の欠如と二重基準が厳しく批判された。
スロベニア代表は、ジェノサイドや人権侵害に関する議題での安全保障理事会常任理事国の拒否権行使を批判し、「人々の尊厳が脅かされているとき、迅速な対応が必要であるにもかかわらず、拒否権がそれを妨げている」と述べた。さらに、R2Pが関与する事案においては常任理事国による拒否権行使を認めるべきではないと提案した。

この発言は名指しこそ避けたものの、アメリカ合衆国とロシア連邦という、過去1年以内に拒否権を行使した2カ国を暗に批判するものである。米国は中東問題、とりわけパレスチナに関連して、ロシアはスーダンおよび南スーダンをめぐって拒否権を行使している。
こうした批判は今回が初めてではない。「説明責任・一貫性・透明性(ACT)」連合に属する中小規模国グループは、すでに「ジェノサイド、人道に対する罪、戦争犯罪への対応に関する安全保障理事会の行動規範(Code of Conduct)」を提案しており、R2P公式サイトによれば、この規範は「大量虐殺の防止・阻止を目的とする信頼性ある決議案に対し、安全保障理事会のすべてのメンバー(常任・非常任を問わず)が反対票を投じることを控えるよう求めている」。2022年時点で、121カ国と2つのオブザーバーがこれに署名している。
R2Pは、ルワンダや旧ユーゴスラビアでのジェノサイドに国際社会が適切な対応を取れなかった反省を踏まえ、市民を大量虐殺などから保護することを国家の義務として再定義するために設けられた。

ガンビアやケニアといった地域では、R2Pが調停に成果を挙げた実例もあるが、グテーレス国連事務総長が「保護する責任:原則的かつ集団的な行動への20年の誓約」と題した報告書で指摘したように、シリアやミャンマーのように拒否権の行使によって国連が行動できなかった地域もある。

R2Pの効果を妨げているもう一つの要因は、スロベニアおよびオーストラリアの代表が指摘したように、「国家の責任回避と説明責任の欠如」である。
国際刑事裁判所(ICC)や国際司法裁判所(ICJ)の判決が軽視され、制裁が科される状況も問題視されている。この批判は、ICCが米国およびイスラエルの軍事行動に関する捜査を開始したことに対し、米国が4人のICC判事に制裁を科したことに対するものとみられる。
米国およびイスラエルはいずれもICCの管轄権を認めておらず、その判決には従わない立場を取っている。

ホワイトハウスの声明でドナルド・トランプ大統領は次のように述べた:「米国はICCの違法行為に関与した者に対して、資産の差し押さえや米国への入国禁止など、具体的かつ重大な結果を科す。我々の国家の利益を損なう恐れがあるため、ICCの職員や家族の入国は許可されない。」
国連総会では、多くの代表が国際裁判所や国際法廷の公正な判断を支持する立場を改めて強調した。影響力の大きい加盟国から言葉による非難や経済的な圧力があっても、その姿勢を貫くべきだと訴えた。
現在、R2Pの原則と実行の間に最も深刻な乖離が見られるのがガザでの紛争である。インドネシア代表は、パレスチナに対するジェノサイドを「R2Pにとって最も緊急の試金石」と呼び、国際法の尊厳を再生し、国連の信頼を回復するよう各国に強く促した。
国連への信頼が揺らぐ中、加盟国の多くは、人道犯罪への対応を通じて国連の正統性を再確立すべきだとの圧力を感じている。
ある代表はこう述べた―「歴史は私たち全員を裁くことになる。」(原文へ)

INPS Japan/ IPS UN BUREAU
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