SDGsGoal17(パートナーシップで目標を達成しよう)国連未来サミットは壊れたシステムを修復する貴重な機会: 市民社会の参加を

国連未来サミットは壊れたシステムを修復する貴重な機会: 市民社会の参加を

【ニューヨークIPS=マンディープ・S・ティワナ】

今日、中東では大規模な地域紛争、さらには核兵器による大惨事の可能性が大きく影を落としている。アントニオ・グテーレス国連事務総長が厳しい警告を発しているにもかかわらず、多国間システムは、紛争、貧困、抑圧といった、まさに国連が対処すべき課題の解決に苦慮している。深く分断された世界において、今年9月の「国連未来サミット」は、国際協力のあり方を修正し、グローバル・ガバナンスの格差を是正する貴重な機会を提供するものである。

Photo: UN Secretary-General António Guterres speaks at the University of Geneva, launching his Agenda for Disarmament, on 24 May 2018. UN Photo/Jean-Marc Ferre.
Photo: UN Secretary-General António Guterres speaks at the University of Geneva, launching his Agenda for Disarmament, on 24 May 2018. UN Photo/Jean-Marc Ferre.

問題は、国連関係者以外の人々や市民社会組織の間で、このサミットが開催されることを知っている人々はかなり限られているということだ。これは、幅広い協議が行われていないためである。昨年12月、21世紀の国際協力の青写真となるはずの「未来のための協定」のゼロ・ドラフトに、市民社会がインプットを提供する時間や機会が限られていたことから、立ち上げから事態はお粗末な展開となった。

2024年1月に発表されたゼロ・ドラフトは、目前の難題に取り組むという野心に欠けていた。基本的な自由に対する制限が増大し、持続可能な開発目標(SDGs)の実現に必要な透明性、アカウンタビリティ、そして参加を著しく妨げているにもかかわらず、この草案には市民社会の役割についての言及が一つあるだけで、市民的空間については何も書かれていない。

はっきり言って、サミットの共同ファシリテーターであるドイツとナミビアは、このプロセスが純粋に政府間のものであることを望む国々と、市民社会の関与に価値を見出す他の国々の要求のバランスを取らなければならないという、困難な立場にある。2月には、ベラルーシを筆頭とする一握りの国々が、国連憲章特別委員会に書簡を送り、市民社会組織の正当性に疑問を呈した。もしこれらの国々の要求が受け入れられるようなことになれば、国連は、市民社会の参加によってもたらされる革新性と広がりとを失ってしまいかねない。

2024UNCSC

国連は今年5月にはナイロビで大規模な市民社会会議を主催するが、その目的は、市民社会が 「国連未来サミット」にアイデアを提供するためのプラットフォームを提供することである。しかし、応募者の選考から会議開催まであと1カ月しかなく、どれだけの市民社会代表、 とりわけグローバル・サウスの小規模な組織の代表が参加できるかは未知数である。

国連には、市民社会特使の任命を求める『Unmute Civil Society(無言の市民社会)』 の提言を受け入れる必要性が残っている。そのような特使は、国連がそのハブを越えて市民社会への働きかけを推進することができる。多くの人々が国連を遠い存在だと感じている中、市民社会特使は、国連の広大な機関やオフィス全体にわたって、人々や市民社会のより良い、そしてより一貫した参加を擁護することができるだろう。これまでのところ、市民社会と国連との関わりは不均等なままであり、様々な国連部局やフォーラムの文化やリーダーシップに依存している。

A message from the UN Office in Nairobi, the host of the 2024 UN Civil Society Conference. Maher Nasser, Chair of the Conference, along with Co-Chairs of the planning committee Carole Ageng’o and Nudhara Yusuf share their commitments for the UN Civil Society Conference. #WeCommit

特に、イスラエルのガザ地区、ミャンマー、スーダン、ウクライナなど、世界各地で多くの紛争が勃発している中、国連未来サミットがその目的を達成するためには、市民社会の関与が不可欠である。市民社会による改革案の多くは、サミットで審議される国連事務総長の「平和のための新アジェンダ」に盛り込まれており、その中には核軍縮、予防外交の強化、平和活動への女性の参加の優先などが含まれている。

また、多くのグローバル・サウス諸国が直面している、公共支出を必要不可欠なサービスや社会保護から債務返済に振り向けるような、高騰する債務レベルへの対処も急務である。市民社会は、返済危機に直面している国々に対し、債務再編や債務帳消しに関する富裕国からのコミットメントを確保するためのブリッジタウン・イニシアティブのような取り組みを支持している。なぜなら、もし開発資金調達の交渉に市民スペースと市民社会参加の保証が含まれなければ、公共資金を必要としている人々の利益になることを保証する方法がないからである。それどころか、独裁的な政権は、抑圧的な国家組織や汚職と庇護のネットワークを強化するために、それらを利用する可能性がある。

市民社会はさらに、国際金融アーキテクチャーにおける改革を求めている。その中には、強大な経済力を持つG20グループによる決定を国連のアカウンタビリティの枠組みの範囲に入れることや、現在少数の先進国によって支配されている国際通貨基金と世界銀行のシェアと意思決定を公平に配分することなどの要求が含まれている。

UN Photo
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しかし、グローバル・ガバナンス改革に向けた市民社会の変革提案のうち、どれだけのものが国連未来サミットの最終的な成果として結実するかは不透明である。これまでのところ、市民社会が「未来のための協定」プロセスに400以上の文書提出を行ない、そのコミットメントを示したにもかかわらず、国連加盟国の交渉、記録、そして取りまとめ文書に関する透明性は限定的なものにとどまっている。

問題なのは、国連未来サミットに向けた各々の政府の立場について、国内の市民社会グループと全国的な協議を行った政府がほとんどない点である。こうした傾向が続けば、国際社会は将来の世代の生活をより良いものにするための重要なチャンスを逃すことになる。このプロセスに人々や市民社会を積極的に参加させることは、今からでも遅くはない。サミットの目的はあまりにも重要なのだ。(原文へ

マンディープ・S・ティワナ氏は CIVICUS エビデンス・エンゲージメント担当最高責任者、ニューヨーク国連代表。

INPS Japan/ IPS UN Bureau

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