SDGsGoal17(パートナーシップで目標を達成しよう)|視点|人道の試練:内向きになる世界で移民の権利はどうなるのか(イネス・M・ポウサデラCIVICUSの上級研究員、「市民社会の現状報告書」の共同執筆者)

|視点|人道の試練:内向きになる世界で移民の権利はどうなるのか(イネス・M・ポウサデラCIVICUSの上級研究員、「市民社会の現状報告書」の共同執筆者)

【モンテビデオIPS=イネス・M・ポウサデラ

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)は壊滅的な財政危機に直面しており、5,000~6,000人の職員が解雇される可能性があります。戦争、弾圧、飢餓、気候災害から逃れてきた何百万人もの人々にとって、これは壊滅的な結果をもたらしかねません。第二次世界大戦で欧州からの避難民を支援するために設立されたこの75年の歴史を持つ機関は、現在、前例のない財政危機に直面しています。その主な原因は、米国の対外援助の凍結であり、そしてその影響が現れるタイミングは最悪です。

Ines M . Pousadela
Universidad ORT Uruguay, International Affairs, Faculty Member
Ines M . Pousadela
Universidad ORT Uruguay, International Affairs, Faculty Member

危機の連鎖が生む悲劇

CIVICUS(シビカス)の第14回年次「市民社会の現状報告書」によると、紛争、経済的苦境、気候変動といった一連の危機が重なり合い、移民や難民を脅かす「完全な嵐」が生み出されています。各国政府が国際連帯と人権の原則を放棄しつつある中、移民たちはより敵対的な政策や危険な旅路に直面しています。

2024年には、世界中の移動ルートで8,938人が死亡し、史上最悪の年となりました。多くの死亡事故は、地中海や米大陸を横断するルート、カリブ海、コロンビアとパナマを結ぶダリエン地峡、メキシコと米国の広大な国境で発生しました。先週だけでも、地中海で船が転覆し、6人が死亡、40人が行方不明になっています。

こうした悲劇は、2024年を通じて繰り返されました。3月には、セネガル人の母親と赤ちゃんを含む60人が、地中海でゴムボートが漂流し、脱水症状で死亡しました。6月には、米国の国境警備隊がアリゾナ州とニューメキシコ州の砂漠で7人の移民の遺体を発見しました。9月には、イタリアのランペドゥーザ島沖で転覆した船の側面にしがみついていた7人が発見されましたが、彼らは家族を含む21人が目の前で溺死するのを目撃していました。

これらの悲劇は、事故でも政策の失敗でもありません。これは、倫理的に擁護できない政治的選択の予測可能な結果です。

現実はレトリックとは異なる

移民が裕福な国々を圧倒しているというポピュリストの言説は、事実と矛盾しています。世界の難民の少なくとも71%は依然としてグローバルサウス(南半球の国々)に留まっており、バングラデシュ、コロンビア、エチオピア、ウガンダなどの国々は、ほとんどの欧州諸国よりもはるかに多くの避難民を受け入れています。それでも、グローバルノース(北半球の先進国)の政府は国境管理を強化し、移民の到着を防ぐために移民管理を外部委託しています。

米国では、トランプ大統領の2期目が始まり、南部国境で「国家非常事態」を宣言し、軍隊の派遣と大量強制送還を約束しています。移民を「侵略者」と見なすこのレトリックは、歴史的に見ても致命的な結果につながる可能性があります。

欧州でも状況は悪化しています。イタリアは亡命希望者をアルバニアの収容施設に移送しようとしており、オランダは却下された亡命希望者をウガンダへ送還する計画を提案しています。ウガンダではLGBTQI+の人々に対する人権侵害が続いており、この提案は明らかに人権を無視したものです。欧州連合(EU)は、エジプトやチュニジアの権威主義政権と論争の多い協定を拡大し、移民の欧州への到達を阻止するための資金提供を続けています。

さらに、反移民のレトリックは効果的な選挙戦略となりつつあります。多くの国で極右政党は反移民キャンペーンで大きな支持を得てきました。ドナルド・トランプ再選にも、この排他的な言説が重要な役割を果たしました。反ハイチ感情が広がるドミニカ共和国や、インドでの反バングラデシュ人キャンペーンに至るまで、排外主義の動員は欧米だけでなく、世界中で広がっています。

攻撃される市民社会

移民への人道支援を提供する市民社会組織は、ますます犯罪者扱いされています。イタリアでは、救助団体に1回の航海で複数の救助を行うことを禁止し、違反すると巨額の罰金が科せられます。また、救助船を遠方の港に誘導することで、意図的に稼働する救助船の数を減らす政策が進められています。その結果、2024年だけでも地中海で記録された移民の溺死者は2、400人を超えました。

チュニジアの大統領は、アフリカ系移民の権利を擁護する人々を「裏切り者」とし、傭兵扱いして、刑事告発や投獄を進めています。

それでも、市民社会は移民と難民の人権を守るための活動を続けています。市民団体は、ダリエン地峡からバングラデシュのコックスバザールまで、避難民キャンプで命を救う活動を維持しています。法的支援団体は、複雑化する亡命制度を乗り越え、保護を受けられるよう移民を支援しています。地域団体は、言語教育、職業紹介、社会的つながりを通じて統合を促進しています。人権団体は、国家当局が移民の人権を侵害した場合に説明責任を追求しています。

しかし、彼らは今、資源の大幅な減少と、ますます敵対的な環境の中で活動しています。かつて重要だった保護メカニズムは、前例のないニーズがあるにもかかわらず、解体されつつあります。国境がさらに硬直化し、安全な移動経路が消滅すれば、より多くの人々が危険な旅に身を投じ、死に至るリスクが高まります。連帯への犯罪化は、最も弱い立場の人々にとっての生命線を断つ危険があり、非人間的なレトリックは差別を正常化し、無関心と残虐さを制度化しています。

別の道は可能だ

恐怖に基づく反応的な政策ではなく、人間の尊厳を守りながら移動の複雑な要因に対処する包括的なアプローチが求められています。紛争防止、気候変動対策、持続可能な開発を通じて、強制移動の根本原因に対処することが不可欠です。同時に、より多くの合法的な移民経路の確保、人道支援の犯罪化の停止、統合支援への投資も必要です。

移民を「存在的脅威」と見なす基本的な前提に挑戦し、移民を「管理すべき現実」かつ「受け入れ社会の資産」として扱う必要があります。歴史的に見ても、新たな住民を受け入れた社会は、経済的、文化的、社会的に大きく恩恵を受けてきました。

前例のない規模の移動が続く世界では、問題は「移民が続くかどうか」ではなく、「その過程が残虐さで管理されるのか、思いやりで管理されるのか」です。CIVICUSの「市民社会の現状報告書」は明確に示しています。移民と難民への対応は、社会の価値観を試すリトマス試験紙です。各国の対応は、「すべての人間が、生まれた場所や持っている書類に関係なく、尊厳を持つに値する」という共通の人間性へのコミットメントが本物かどうかを示すでしょう。(原文へ

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イネス・M・ポウサデラはCIVICUSの上級研究員であり、CIVICUS Lensの共同ディレクターおよび「市民社会の現状報告書」の共同執筆者です。

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