【国連IPS=オリトロ・カリム】
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は7月7日、「子どもの売買、性的搾取、性的虐待に関する国連特別報告者」を務めるキハラハント愛氏の報告書を国連総会に提出した。報告書は、世界各地で子どもを守るための措置を実施していく上で、同氏が掲げる目標と優先課題を明らかにしている。|英語版|

国連人権理事会と連携して提出された報告書は、子どもを性的搾取や性的虐待の危険にさらしている構造的な障壁として、政府による監督の不十分さ、被害者への支援や司法サービスの不足、長期化・深刻化する危機などを挙げている。
「子どもの売買、性的搾取、性的虐待は複雑で、表面化しにくく、国境を越えて行われる。そのため、これらの問題に対処するには、強固な子ども保護制度と、各国内および国境を越えた実効的な協力が不可欠である。」と報告書は指摘している。
「子どもの売買、性的搾取、性的虐待への対応には、子どもの最善の利益を基礎とし、その尊厳、主体性、回復力を尊重する人権に基づくアプローチが必要である。」
報告書は主に、国連加盟国、国際機関、市民社会組織、人道支援機関から寄せられた情報をもとに、協力や説明責任を確保し、子どもに対する人権侵害を防止するための主要な仕組みを提示している。また、多様な関係者の世界各地からの視点や被害を生き延びた人々の実体験を取り入れ、ジェンダーへの配慮、障害の包摂、被害者中心、トラウマへの配慮、そして何よりも子どもの権利を基盤とする枠組みを通じて、保護、回復、リハビリテーション、司法へのアクセスを優先している。
これに先立つ3月10日の国連人権理事会第61会期では、前特別報告者のママ・ファティマ・シンガテ氏が、新たなデジタル技術によって加害者の虐待手法が一変し、オンライン空間が子どもにとってますます危険な場所になっていると警告した。
シンガテ氏は、デジタル技術の進歩が人権侵害の「新たな経路」を生み出すことを防ぐため、人道支援関係者、各国政府、その他の関係者が一層緊密に協力するよう求めた。
また同氏は4月20日、人権理事会に提出した最後の報告書について、子ども向けに分かりやすくした版を公表した。子ども自身が、自分たちに最も大きな影響を及ぼす議論に有意義な形で参加できるよう、情報へのアクセスを確保する重要性を強調したものである。
キハラハント氏は今後、歴代の特別報告者の取り組みをさらに発展させるとともに、これまで国連で十分な注目や継続的な取り組みがなされてこなかった問題にも焦点を当てる方針である。主な優先課題には、相互に絡み合う世界的危機に伴う「複雑、あるいは急速に変化する」問題や、デジタル環境における性的搾取の憂慮すべき増加が含まれている。

特別報告者は、オンライン空間では、子どもも発達しつつある能力に応じてさまざまな同意や意思表示を行うことができる一方、新たな技術の登場によって、その意味や取り扱いがますます複雑になり得ると指摘している。
とりわけ人工知能(AI)の急速な普及は、人道支援機関にとって大きな懸念となっている。AIによって、子どもを害するコンテンツの作成や拡散が容易になっているほか、本人の許可を得ない画像の収集や個人データの悪用も助長されているためである。
さらに報告書は、ソーシャルメディアやメッセージングアプリ、暗号資産などのデジタル技術が、武装集団への子どもの勧誘や人身取引、搾取を容易にする一方、加害者が捜査機関による摘発を免れる手段にもなっていると指摘した。
ユニセフ(UNICEF)の子ども保護専門官、アフルーズ・カヴィアニ・ジョンソン氏はIPSの取材に対し、「子どもの性的搾取や性的虐待の背景には、有害な社会規範、偏見、ジェンダー不平等、力関係の不均衡、貧困、子どもの保護・支援制度の脆弱さなど、さまざまな要因がある」と語った。
「今日では、デジタル環境がこうした被害にますます深く関わるようになっている。子どもたちは、デジタルプラットフォームを介したグルーミング、強要、性的搾取、性的虐待などの危険にさらされている。生成AIをはじめとする新興技術も、こうしたリスクの規模と深刻さを拡大させている。」
キハラハント氏の任務の柱の一つは、民間企業に対し、人権と子どものプライバシーを基礎とした、より厳格な安全対策を導入するよう求めることである。その責任は企業・組織そのものだけでなく、従業員、ボランティア、取引先など広範な関係者に及ぶ。
報告書はまた、市場原理や商業化、利益追求型の仕組みが、とりわけオンライン上で子どもの性的搾取を助長する有害な環境を生み出していないか、あるいはその防止にどのように貢献できるのかについても検証していくとしている。
「安全性を設計段階から組み込む『セーフティ・バイ・デザイン』のアプローチでは、プラットフォーム、メッセージングサービス、ゲーム環境、AIシステムが、子どもの売買や性的搾取、性的虐待を助長しかねない予見可能なリスクを評価し、軽減する必要がある。また、児童性的虐待コンテンツを積極的に検知し、通報し、削除することも求められる」と報告書は述べている。
「こうした責任にとどまらず、特別報告者は、企業が各国政府やその他の関係者と連携しながら、予防、安全確保、通報、子どもへの支援において、どのような積極的役割を果たすことができるかについても検討する考えである。」
報告書はさらに、武力紛争や人道危機の影響を受ける地域で暮らす子どもは、売買や性的搾取の危険が著しく高く、子ども時代にレイプや性的暴行を経験する可能性が世界平均のおよそ2倍に上ると指摘している。
このほか、強制的な避難や移住、自然災害、気候変動なども性的搾取のリスクを高める要因となっている。こうした状況では人道支援が大幅に制約されるため、子どもの保護措置や市民社会による介入も困難になることが多い。
ジョンソン氏は、「紛争、避難・移住、気候関連災害、公衆衛生上の緊急事態といった人道危機は、子どもの安全を守るための制度や仕組みを機能不全に陥らせる可能性がある」と指摘した。
「こうした危機は、子どもが危険にさらされる機会を増やす一方で、必要不可欠なサービスや支援へのアクセスを低下させる。」
さらに同氏は、「貧困や経済的困窮も、とりわけ金銭や物品、その他の利益と引き換えに搾取が行われる状況では、子どもの脆弱性を高める可能性がある」と語った。
「避難を余儀なくされた子ども、移動の途上にある子ども、障害のある子ども、人道危機の影響を受けている子どもは、複数のリスクが重なり合う状況に置かれることが多い。」
経済的不安定と格差も、子どもの性的搾取を引き起こす主要な要因である。報告書によれば、無国籍状態にある子どもなど、「公的な保護網の外側」に置かれた子どもたちは、成人や同年代の子どもから虐待を受けることが多く、場合によっては法執行機関の職員から被害を受けることさえある。
避難や移住を余儀なくされた子どもも同様に脆弱な立場に置かれており、拘禁や強制送還を恐れて犯罪被害を申告できない場合も少なくない。無国籍の子どもや移民の子どもは、支援サービスを利用するために必要な公的身分証明書を持っていないことが多いうえ、家族と離ればなれになっている場合も多い。その結果、保護してくれる大人の目が届きにくくなり、被害に遭う危険が大幅に高まる。
キハラハント氏は、歴代の特別報告者による取り組みを引き継ぎ、さらに発展させるため、子どもや若者の参加を優先し、子ども自身の力を高めることを重視した活動を進める方針である。
また、各国政府やテクノロジー企業、その他の関係者に対し、より安全なオンライン環境を構築するよう働きかける。さらに、公衆衛生や教育分野をはじめ、分野を越えた連携の強化を求めていく考えだ。
報告書は次のように指摘している。
「子どもの被害者やサバイバーのリハビリテーションにおける公衆衛生部門の役割は、単なる回復や社会復帰にとどまらない。刑事司法を中心とした対応から、子どもの健康と幸福を中心に据えた対応へと転換していくことも、その役割に含まれる。一方、教育部門は、以下でさらに詳しく述べるように、予防、保護、対応のあらゆる段階で重要な役割を果たす。」
INPS Japan/ IPS UN Bureau Repor
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