SDGsGoal13(気候変動に具体的な対策を)「今必要なのは政治的勇気だ」とグテーレス国連事務総長、COP30で訴え

「今必要なのは政治的勇気だ」とグテーレス国連事務総長、COP30で訴え

【ブラジル・ベレン/南アフリカ・ヨハネスブルクIPS=セシリア・ラッセル】

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、地球の平均気温上昇を1.5℃以内に抑えるために最も欠けているのは「政治的勇気」であると警告した。「最大の障害は政治的勇気の欠如だ。多くの約束が停滞している。多くの企業が“気候破壊”から記録的な利益を上げている。そして多くの指導者が、国民の利益ではなく、化石燃料利権の虜になっている」と、グテーレス事務総長はブラジル・ベレンで開かれたCOP30首脳会議の開会全体会合で述べた。

彼は、気候破壊によって巨額の利益を得ている勢力を名指しで批判した。
「莫大な資金がロビー活動や世論操作、進展の妨害に使われ、あまりに多くの指導者がこうした既得権益に囚われている」と述べた。

グテーレス氏は、世界気象機関(WMO)のセレステ・サウロ事務局長の発言を引用した。彼女は全体会合でこう述べている。
「例外的な高温の連続という警告すべき傾向が続いています。2025年は観測史上2番目か3番目に暑い年になる見込みです。過去3年間はいずれも記録的な高温でした。これは、私の2歳の孫が生まれた世界です。」

サウロ氏は、この気温上昇に伴う問題を挙げた。
海洋熱の過去最高更新による海洋生態系や経済への打撃、海面上昇、南極・北極の海氷面積の記録的低下などである。
私たちはもはや、破壊的な気象を例外としてではなく、日常の一部として目にしている。わずか数分で数か月分の雨が降り、地上の河川は“天空の川(大気河川)”へと変貌する。極端な高温や火災、そして先週のハリケーン・メリッサのような“異常にエネルギーを帯びた熱帯低気圧”が地球を襲っている。

「不平等を克服せずして、気候変動は抑えられない」― ルラ大統領

ブラジルのルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領は、気候変動を引き起こした根本的な条件を変えなければならないと訴えた。

開会演説でルラ大統領は次のように語った。
「気候変動とは、何世紀にもわたって私たちの社会を分断し、富裕層と貧困層、先進国と途上国とを隔ててきた同じ力学の結果である。
国内外の不平等を克服せずして、気候変動を抑えることは不可能だ。」

「気候正義とは、飢餓や貧困との闘い、人種差別やジェンダー不平等との闘い、そしてより代表性と包摂性のある地球規模のガバナンスを推進するための同盟者である」と強調した。

ルラ氏はまた、今回の気候会議をアマゾンの中心地ベレンで開催するという決定を「大胆な選択だった」と述べた。

「人類は、IPCC最初の報告書が発表されて以来35年以上にわたり気候変動の影響を認識してきた。しかし、化石燃料からの脱却と森林破壊の停止・反転の必要性を初めて公式に認めるまでには28回もの会議を要した(=2023年のドバイ会議)」と回顧した。

さらに、バクーからベレンへと引き継がれた「ロードマップ」に言及し、次のように続けた。
「2035年までに年間少なくとも1兆3000億ドル規模に気候資金を拡大すべきだと認めるまでに、さらに1年を要した。」

「困難や矛盾に直面するだろうが、公正な方法で計画を立て、森林破壊を逆転させ、化石燃料依存を克服し、これらの目標を達成するための資金を動員するために、私たちはこのロードマップを必要としていると確信している」と述べた。

科学は「警告」だけでなく「解決策」も示している

グテーレス氏とサウロ氏は共に、温度上昇を示す科学は同時に解決策も提示していると強調した。

Credit: United Nations
Credit: United Nations

サウロ氏はこう述べた。
「科学は単に警鐘を鳴らしているのではありません。私たちが適応できるよう支援しているのです。再生可能エネルギーの導入はかつてないスピードで進んでいます。気候インテリジェンスを活用すれば、クリーンエネルギーシステムを信頼性・柔軟性・強靱性のあるものにできます。」

グテーレス氏も気候危機への即応の必要性を改めて訴えた。
「多くの国々が適応のための資源を欠き、クリーンエネルギー移行から締め出されている。そして多くの人々が、自国の指導者が行動することへの希望を失いつつある。私たちは、もっと速く、そして共に前進しなければならない。この会議を“加速と実行の10年”の出発点としなければならない。」(原文へ)

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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