Multimedia緊迫感をもって国連の開発目標達成に努力すべき

緊迫感をもって国連の開発目標達成に努力すべき

【カトマンズIDN=シモーネ・ガリンベルティ】

「持続可能な開発に関するアジア太平洋フォーラム」(APFSD)が先ごろ、バンコクで開催された。例年通り、このフォーラムは地域諸国の政府代表による公的な発言と、主に市民社会が国連の諸機関やプログラムと組んで実施する多数の素晴らしいサイドイベントから成り立っている。

今回で11回目となるこのフォーラムは、「2030アジェンダ」の実施状況を討論する主要な場となっている。これまで、持続可能な開発目標(SDGs)に関する新しい地域進捗報告書の発表と同時期に開催されてきた。

アジア太平洋地域のSDGs進捗状況報告書は、より持続可能で、公正で、強靭な未来を実現するための同地域の取り組みが、ひどい状況であることを改めて確認した。

特に貧困に苦しむ人々の数(目標1)や、持続可能な産業、イノベーション、インフラの強化(目標9)に関しては、若干の進展があったものの、目標や指標の大多数が達成には程遠い状況にある。

この驚くべき状況に対して諸政府や市民社会が緊急に対応しなくてはならないのだが、残念ながら緊迫感に欠けるのが現状だ。

振り返ってみると、「昨年9月に開催されたSDGsサミットの政治宣言でさえ、多くの人々が期待した高い期待に応える必要があった。ガバナンスの問題、すなわち、民衆と国家との間で権力がいかに行使され、共有されるかについて再検討することが喫緊の課題であることは明白だ。

さまざまな形態の政策決定が、「2030アジェンダ」が私たちの生活に直接的かつポジティブな影響と変化をもたらすであろうという話題の中心とならなければならない。

SDGsの実行を約束する

SDGsの実施を確実にするために必要なガバナンスの変化について、どのように議論を始めればよいのだろうか。

APFSDのような地域フォーラムは、取り上げられ議論される内容だけでなく、通常設計され提供される形式においても、そのような再考に貢献できるだろうか。ある意味で、持続可能な開発に関するアジア太平洋フォーラムは、ガバナンスにおける政策革新が「2030アジェンダ」の最も重要な実現要因になることを実証するプラットフォームになりうる。

このフォーラムの成り立ちとその実施を分析し、再検討に付さねばならない。主催者は、フォーラムにより参加しやすく、参加者をより包摂的にする努力を行ってきたと言って差し支えないだろう。

毎年、サイドイベントと関連イベント(この二つは明確に区別されねばならないのだが)の数は間違いなく増えてきている。ほとんどはオンラインでも参加でき、地域の利害関係者が参加しやすくなっている。

いわゆる「関連」イベントはフォーラムの公式議題とより密着したものであり、少なくとも文書の上では公式会議に直接の影響を与える。他方で、「サイド」イベントである会合やワークショップなどはより独立しており、フォーラムの公式議題とは緩いつながりしかない。

これら二つのカテゴリーのイベントをフォーラム自体とより一体的なものとすることはできないだろうか。 閣僚や高級官僚があらかじめ準備した声明を読み上げるだけの無味乾燥な公式会議を行うのみならず、これらとは別にサイドイベントや関連イベントとうまく連携することはできないだろうか。これらの「見てくれ」だけの発言に対して、何らかの「影響」を与えることはできないだろうか。

フォーラムに参加する諸国の代表が、サイドイベントだけに参加しているような利害関係者と交流・対話を持つことはできないだろうか。

サイドイベントが実質的には「内輪の議論」になってしまっている状態から脱して、公式の議論にこれら利害関係者の議論を完全に組み込むことはできないだろうか?

たとえば、「関連」イベントのカテゴリーに入っている「APFSD青年フォーラム」と「民衆フォーラム」は、フォーラム自体に完全に統合することが可能だ。現在は、これらのイベントと公式会議との間にはわずかなつながりしかない。

たとえば、「APFSD青年フォーラム」と「民衆フォーラム」の代表に公式会議での冒頭発言を認めることはできるはずだ。これだけでも歓迎すべき動きだが、まだ他にもできることはある。

たとえば、各国ごとの宣言を基礎にして「APFSD青年フォーラム」が出している主要な成果である「APFSD2024に先立つアジア太平洋地域青年の呼びかけ」が追求される必要がある。

それは大変素晴らしく、大胆な提言なのだが、単に象徴的な意味合いにおいてすら重きを置かれていない。例年呼びかけがなされているにも関わらず、誰にも気づかれないままゴミ箱行きになっている。この現状を変えるためにどうすればいいだろうか?

単純な解決策は、「APFSD青年フォーラム」と「民衆フォーラム」の代表やサイドイベントの参加者がフォーラム公式のさまざまな部会に参加し発言することを認めることだ。

第二の道は、公式日程の部会やプログラムを「主要」フォーラムへと移動することだ。フォーラムの部会は厳格になりすぎて、各国政府の高位代表の排他的な領域になってしまっていた。

代わりに、若者を含めた市民社会の関係者が政府代表と交流し意見を発表できるようにして、いわゆる「行動呼びかけ」がフォーラム自体で完全に議論され分析されるようにすればよい。

各国毎にできることはもっとあるだろう。APFSDの参加各国は、地域の国連機関と連携して、バンコクにおける主要イベントに向けた準備として国内で議論を組織することができる。

これらの協議によって、各国のフォーラムが「自発的国別報告」と接続・統合されて、各国がSDGsを実行する上での助けになることだろう。

単なるおしゃべりの場ではなく

ここで提案している変化は徐々に実行することもできるものだが、それにしても必要なのはビジョンだ。提案を現実に変換するには、明らかにAPFSDのこれまでのやり方を大幅に変更する必要がある。

地域の市民に対して、フォーラムをより包摂的で参加しやすく、意義あるものにするためには、より多くの資源と発想の転換が必要だ。アジア太平洋で保守的な発想が支配的であることを考えれば、このことの意義は大いに強調されねばならない。

各国政府はフォーラムを大きく変革させることを究極的には認めねばならない。それによってこのフォーラムは、「2030アジェンダ」を実行する各国政府の行動とコミットメントに対して政府が応答する真の基盤となることだろう。

しかし、アジア太平洋経済社会委員会(UN-ESCAP)の事務局は、完全に参加できないとしても、その招集能力を活用して、フォーラムの形式に新たな変化をもたらすためにできるのことが何かあるのではないだろうか。

これまでとは大きく異なるAPFSDはまた、若者や社会の他のメンバーが政策決定プロセスに影響を与える真の機会を持つ、より参加型のボトムアップの意思決定の実験への扉を開くだろう。

実際、フォーラムの運営のされ方には誰も満足していないだろう。現在のところそれは単なる「おしゃべりの場」に過ぎない。

他の実践に学ぶことは常に有益であるが、人類が直面している大きな難題―「2030アジェンダ」が完全履行されれば乗り越えることができる難題―の解決にはより多くの形の熟慮を必要とする。

APFSDやそれと同様の国連の地域フォーラムは、より意味があり、より踏み込んだ議論を通じて、SDGsを実現するために諸政府が行っていることを議論し分析するために、より多くのことを成すことができるだろう。

APFSDは、SDGs実行に関する市民社会のアイディアを形だけのものとして受け取るのではなく、真剣に議論する最重要のフォーラムに生まれ変わるべきなのである。(原文へ

※著者は、SDGsや若者を中心とした意思決定、より強固でより良い国連のあり方について執筆している。

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