SDGsGoal17(パートナーシップで目標を達成しよう)最大の課題に取り組むカギを握る市民の関与

最大の課題に取り組むカギを握る市民の関与

【カトマンズ(ネパール)IDN=シモネ・ガリンベルティ】

人類が直面する最も困難な課題に立ち向かうための最良の手段のひとつが、過小評価されたままであることに、どれほど驚かされることか。

私が言っているのは、対処を迫られている最も困難で緊急な問題に取り組む上で、市民参加が果たすべき役割についてである。 気候変動から社会の二極化まで、私たちはまさに岐路に立たされている。

地域社会の行動を通じて人々をひとつにすることは、私たちの地球、私たちの文明が、この先何十年、何百年と存続し、繁栄していくための最良の対策となりうる。

あまりに悲観的に聞こえるかもしれないが、これは私の本意ではない。その代わりに私が意図しているのは、世界の政治指導者たちと市民社会のメンバーが、「南」の開発途上国でも「北」の先進国でも、市民活動への投資がいかに不可欠であるかを理解するための警告としてこれを発しているのである。

しかし残念なことに、その重要性が理解されているとは言いがたい。

今年9月にニューヨークで開かれたSDGサミットはそのことを無視した。これはきわめて残念なことだ。なぜなら、市民の関与、それに関連して、活動の最も目に付く形態である市民のボランティア活動が、SDGを実行し、さらに重要なことには、それを地域に根付かせるうえで、最強のツールとなるからだ。

こうした無視はなぜ起こってしまったのだろう。おそらく、ボランティア活動があまりに当たり前のものと受け取られ、(あやまって)コストのかからないものとみなされ、その理念が実際には促進されていないからなのだろう。

おそらく、これはブランディングとマーケティングの問題でもあるのだろう。

ボランティア活動

ボランティア活動という言葉自体、発音しにくいし、人々、特に若者の間で「売り込む」のはさらに難しい。要するに、市民参加やボランティア活動が認知され、重要視されるのを妨げている要因が重なっているのだ。

このような 「衰退」 の最も深刻な帰結は、ボランティア活動が政策立案者にとっての優先事項とは程遠いことである。なんということか!

おそらく、この問題に世界的な注目を集めるための世界的に著名な人物が必要なのだろう。

この大義を受け入れる準備ができている現職の政府首脳はいるのだろうか?現役や引退したスポーツ界のスターはどうだろう?市民参加を再び活性化させる世界的なキャンペーンに、社会のあらゆる階層の元リーダーたちが参加したらどうだろう?

市民の関与の重要性が理解されれば、変革の主体について語ることができるようになる。

例えば、世界の相当数の若者たちが私たちの生活や消費のやり方を大きく変えようとしているが、あまりに多くの人々がそれを座視している。

積極行動主義(アクティビズム)

ボランティア活動を実践する方法であるアクティビズムは、あまりにも「急進的」であり、一般の人々が一歩踏み込んで役割を果たすことを要求していると見なされがちだ。

これは、ボランティア活動がどのようにして具体的な形を成すのかについて広範な誤解があるためだろう。実際は、それを実践し経験する唯一の方法などないのだが。

人間には多くの可能性と選択肢があり、その中の一部には自分に向いたものもある。しかし、このトピックに関しては、多くの混乱と無視があり、あるいは単にそこから目を背けようとする態度もある。

市民の関与とボランティア活動に関する誤解を解く努力が極めて重要なのはそのためだ。この数か月間、国際ボランティア協会(IAVE)はこの点で有益な貢献を成してきた。

「若者のボランティア活動と社会変革:課題と可能性」と題し、最近終了した連続ウェビナーは、若者の間でボランティア活動を強化する実践的な方法について議論する貴重な場となった。

このワークショップで得られた大きな成果の一つは、若者の人格的・職業的成長を促すリーダーシップのツールの一つとして、ボランティア活動の力を借りる重要性が示されたことだ。

このプロセスを促進する方法は、模範を示すことである。しかし、ボランティア活動を推進する世界的な組織は、若者を参加させてはいるが、形だけであることが少なくない。

市民の関与

ボランティア活動的な政策を背景とした意思決定における意味ある経験を若者たちに与えることが優先されるべきだ。そうすべき理由はきわめて単純明快だ。

SDGs logo
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広範な包括的概念としての市民参加と、先に述べたように、奉仕のさまざまな様式を展開する緩やかな概念としてのボランティア活動は、実際、行動を起こし、選択する力と関連づけられるべきである。

ボランティア活動は、ホームレスの世話をしたり、科学的根拠に基づく植樹を通じて地域の生物多様性を保全したりと、満たされない緊急事態に対応する現場での直接的な行動となり得る。

しかし、地方自治体に時間やエネルギー、ノウハウを与えて、社会的包摂や貧困撲滅、持続可能性の促進を図らせる手段でもある。

私たちは、SDGsを含むアジェンダ2030が、地域から始まる市民行動によって支援され、後押しされることを知っている。ある意味、社会レベルでの市民の関与は、その多様性において、意思決定のあり方に革命をもたらす直接的な道筋となりうる。

とりわけ、地方議会での予算決定において市民に力を与えることが念頭にある。

2020年、国連ボランティア計画(UNV)は、ボランティア活動を世界的な議論の中心に据えることで、ボランティア活動を再構築し、再始動させるための大規模な世界的活動を行った。いわゆるグローバル・テクニカル・ミーティング(GTM)は、ボランティア活動の力を活用するためにどうすればもっとうまくいくかを考え、考察するユニークな場を提供した。

この事業から生まれた「行動への呼びかけ」は、ボランティア活動を次のレベルに引き上げるための新しいアイデアや解決策を真に「加速」させる希望と約束を提供した。

残念なことに、GTMで沸き起こった盛り上がりから3年経った今も、大したことは起こっていない。ボランティア活動は、グローバル・アジェンダの形成という点で、あるべき姿にはまだほど遠い。

私たちの共通の課題

グローバルな多国間制度を再び強化しようとする国連のアントニオ・グテーレス事務総長の取り組みは希望をもたらすかもしれない。事務総長が世界ビジョン実現に向けた議論に道を開くために作成した『私たち共通の課題(Our Common Agenda)』は、意思決定における若者の意味ある参加に焦点を当てている。

Photo: UN Secretary-General António Guterres speaks at the University of Geneva, launching his Agenda for Disarmament, on 24 May 2018. UN Photo/Jean-Marc Ferre.
Photo: UN Secretary-General António Guterres speaks at the University of Geneva, launching his Agenda for Disarmament, on 24 May 2018. UN Photo/Jean-Marc Ferre.

そこには、政府に対して「地方、国、地域、そして世界レベルで、意思決定への有意義な若者の参画に強くコミットし、基本原則に基づく有意義な若者の参画のための世界基準を承認する」ことも求めている。

2024年に開かれる「未来サミット」はこの改革の帰結とみなされるか、また、市民の関与とボランティア活動の役割と貢献を認知する大胆な方策を取れるだろうか、とグテーレス事務総長は疑問を呈している。

Summit of the Future

今週、市民セクターの主要な組織を代表する政策主唱団体であるIAVEとフォーラムIDSが新たな政策報告書を発表した。

報告書は、今月後半にクアラルンプールで開催予定の「国際ボランティア協力機構(IVCO)フォーラム」での議論に供するために、挑戦的な枠組みを提示している。

『変革主体としてのボランティア新世代』と適切にも題されたこの報告書は、ボランティア活動のもつ変革の力をめぐって議論を展開することの価値を高めている。

この本の著者が答えようとしている重要な問いの一つは、「若者のボランティア活動を促進するためには、どのような環境を整えればよいのだろうか?」というものだ。

この答えは、クアラルンプールでのわずか数日の議論で見つかるものでもないし、市民活動に関与し情熱を傾けている私のような「いつもの連中」の議論だけで見つかるものでもない。

そしてこれこそが真の難題なのだ。いかにして「パイ」を拡大し、市民の関与が社会で果たす役割について関心を持たない人びとをどうやって巻き込むのか、ということだ。

市民の関与をグローバルな論議の中心にまで持っていこうとするならば、ひとつの絶対的に重要な問題がある。すなわち、力を行使することのできる人々に接近するということだ。政策決定者と政治家は、あらたな市民ルネッサンスのエンジンとしての市民参画を促進する真にグローバルな取り組みの焦点とならねばならない。(原文へ

※著者は「エンゲージ」「よいリーダーシップ、あなたと社会にいいこと」の共同創設者。

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