【アブダビWAM】
アラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙は9月7日、エジプトは史上最も困難な局面に立たされている、と報じた。抗議デモ、殺人事件、先行き不透明な経済等、現在のエジプトが直面している難題は跡を絶たない。
9月5日、カイロのナセルシティー地区にある自宅から内務省に向かうムハンマド・イブラヒム内相の車列を狙った爆弾テロが発生し、内務省によると、警官10人と外国人・子どもを含む民間人11人が負傷した。イブラヒム内相に怪我はなかった。この暗殺未遂事件をうけて、エジプト暫定政権は、「テロに対して武力をもって決然と立ち向かう政府の方針が、このような犯罪行為によって挫かれることはない。」と宣言したうえで、改めてテロ勢力を徹底的に取り締まると明言した。アラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙「ガルフ・トゥデイ」は、このようにテロと立ち向かうエジプト政府の動向を伝え、「エジプトは国際社会の惜しみない支援を受けるに値する。」と報じた。
また同紙は「まさかの時の友こそ真の友」と題して、事件直後に出されたUAE外務省による声明を紹介した。UAE外務省は、声明の中で、「あらゆる形態のテロに立ち向かうエジプト政府を全面的に支持する」と強調するとともに、犠牲者の一刻も早い回復を望むと表明した。
この暗殺未遂事件は、治安当局が7月3日の政変で失脚したムハンマド・モルシ前大統領の支持派に対する締め付けを強めるなかで発生した。600人近くの死者を出した暫定政府によるムルシ支持派の強制排除以降、治安部隊側も100人近くの犠牲者をだしている。軍と警察当局は東部のシナイ半島においても、7月以来、反政府武装勢力に対する掃討作戦を実施している。一方、反政府武装勢力による軍・警察に対する攻撃は、人口が密集したナイルデルタ地域や首都カイロでも発生している。
ガルフ・トゥディ紙は、紛争が長引き先行きが不透明な状況は、一般庶民の生活を直撃しており、首都カイロでも若者の大半は失業と食料の高騰に苦しんでいる。AP通信によると、現在エジプト国民の半数近くが、貧困線をかろうじて上回るかそれ以下の厳しい生活を余儀なくされている。
633以上の銘柄を擁するエジプト証券取引所は中東で最も古い歴史を持ち最も発達した市場(2005年には総額が472億ドルから935億ドルに倍増)であったが、最近の政治情勢の悪化により低迷している。
オサマ・サレハ投資相は、「暫定政府はエジプト経済を救済し、海外投資を引き付けて経済成長へと舵をきるべく緊急経済復興計画の策定に取り組んでいます。」と語った。エジプト経済の原動力は(1)天然ガスや原油の輸出拡大、(2)古代遺跡と紅海沿岸のリゾート地を目玉とした観光収入のアップ、(3)湾岸諸国への労働力提供、(4)原油の荷動き活発化に伴うスエズ運河通航料の増加などである。
ガルフ・トゥデイ紙は、こうした暫定政府の取り組みについて、「エジプトが直面している困難な状況を考慮すれば、これは途方もない任務にほかならない。エジプトの一般庶民も、世界の各地の一般庶民と同様に、平和な環境のもとで幸福と繁栄を追求する資格がある。いかに困難な状況にあっても、その方向を目指す暫定政府の挑戦を歓迎しようではないか。」と報じた。(原文へ)
翻訳=IPS Japan
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