【ナイロビIDN=ジョシュア・マシンデ】
エネルギーの生産的な利用がアフリカ農村地帯の生活改善の鍵を握っている。電力や技術へのアクセスが良くなれば、零細企業は生産過程と効率を向上させることができる。
電力が利用できなければ、農村の零細企業は、労働集約的で時間のかかる手動の道具に頼らざるを得ず、その結果、製品に付加価値をつけたり多様化させたりする多くの機会を、しばしば逃すことになる。
民間企業の電力需要を満たすことは、ジュメメ社のような民間部門の経済主体にとってまたとない機会である。同社は、遠隔地の企業と家庭を繋ぐ、太陽光発電による小規模電力網の開発に携わるタンザニアの企業だ。
アフリカでエネルギー利用を促進すべく地元企業と協力している非営利組織「エナジー4インパクト」(Energy 4 Impact)は、アドバイザー的な形でジュメメ社と提携している。具体的には、ジュメメ社が顧客の電力需要を掘り起こし、小規模起業家らが電力利用を通じて、生産性の向上と電力消費の増大につながるような経済転換をはかる活動を支援している。
一般家庭と比べると、民間企業は電力消費量が多く、十分な利益をもたらす安定したキャッシュフロー源を開発者に提供する。電気製品を購入する企業のキャパシティーと環境を強化することで、生産過程や生産性と、小規模電力網の持続可能性の両方を強化することができる。
2016年4月、ジュメメ社は、タンザニア・ビクトリア湖内ウカラ島の8つの村のなかで最大のブウィシャ村で、太陽光発電の小規模電力網を整備した。小規模電力網が稼働したことで、地域の商業活動が大幅に活発になっている。
今日では、既存の、あるいは新規に開業した50社弱が電力網と接続している。これにより、従来、穀物の製粉作業や、大工仕事、自転車やオートバイを修理するために、手作業やディーゼル発電に依存してきた会社の一部が、生産を自動化し事業を拡大する能力を得た。そして、卵の孵化、洗濯、パン製造、ジュース生産、氷生産、美容業、ポップコーン生産、金属溶接を扱う新たな会社が現れてきている。
ジュメメ社が集めたデータは、電気機器を利用する頻度と電力使用料の間の直接的な相関関係を示している。ジュメメ社のマーケティング部門責任者ロバート・ワンゴエ氏は、「小規模電力網に接続された、製粉所や木工工作所、金属加工場、パン工場の、効率と生産性はいずれも向上しています。」と指摘したうえで、「今後は、たとえば飲料水の浄化に関わる企業など、新たなビジネスが、軌道に乗ってくれるものと思います。」と語った。
しかし、いくら電力が利用可能になっても、多くの零細企業には電気製品を購入する余裕がない。「エナジー4インパクト」の事業責任者ディアナ・コラニー氏によれば、これらの零細企業はリスクの高い借り手と見なされているために、電気製品を購入するだけの資金を借入れられないからだという。
「零細企業が(電力を)生産的に使用できるよう、金融取引に参加できるようにする戦略のひとつは、資金提供者に対して現金によらない信用保証を与えることです。しかし、この枠組みには煩雑な行政プロセスがあって、資金提供者はあまり関心を示していません。また、資金提供者を島の村々に招き、企業の潜在力を感じてもらい、資金供与の利点を納得させようとの戦略を取ったこともありました。しかし、融資の希望総額が少なかったこと、企業数が少ないこと、行政面・取引面のコストが高いと予想されたことなどから、このアプローチはうまく機能しませんでした。」とコラニー氏は説明した。
結局ジュメメ社は、自社で資金提供するアプローチを採ることにした。これによって零細企業は、ジュメメ社からの直接的な信用供与によって電気製品を生産的に利用できるようになった。ジュメメ社はこの金融手段を使って、顧客が機器を取得できるようにした。この枠組みを通じて、顧客はジュメメ社が調達した電気機器を注文し、合意された期間(通常は半年)の間にその支払いをすることになる。
ジュメメ社に代わって、エナジー4インパクトが、需要調査やシミュレーション、生産的な電力使用に関する意識喚起キャンペーンを行った。
「私たちは、新しい機器の取得を望んでいる企業を支援する最善の方法についてジュメメ社と協議してきました。」「機器を取得する前の段階で新規事業の見通しを分析し、企業オーナーと協力してその事業計画やスキルを強化してきました。ジュメメ社は、起業家が合意された期間内で機器の代金を支払い、電気代を支払い、それでもなお利潤をあげる確約を望みました。」とコラニー氏は語った。
これまでのところ、12の企業が、トウモロコシ挽き機、脱穀機、キャッサバの製粉機、溶接・大工の機械、ヒヨコ孵化器、製氷機を取得するための資金を得ている。すべての企業が支払いを完了したか、あるいは、まもなく融資の支払いが完了するところだ。
他に10の企業が事業を拡大あるいは多角化するために追加の機器を取得し、結果として少なくとも82人の雇用が生まれた。
二輪車修理工場を経営しているエリアス・マリマさん(25)は、労働時間を増やすことができるようになった。電力を使ってバイクのタイヤに空気を入れる空気圧縮機を使えるようになってから、1日あたりの顧客が以前は15人だったのが、現在は約35人に増え、収入も5割増えた。彼はすでに3人の社員を雇い、ジュメメ社が別の小規模電力網を今年後半に供用開始したら、近隣の村に別の修理工場を開設する計画だ。
「私は人力で二輪車のタイヤに空気を入れていましたが、エナジー4インパクトは電動の空気圧縮機を使うよう提案してくれました。キャッシュフローと返済計画を示した事業計画の策定にも協力してくれました。こうして、融資を受けながらジュメメ社から機器を手に入れることになったのです。」と語るマリマさんは、空気圧縮機の購入代金をすでに完済している。
窓枠・ドア枠作り、二輪車修理、ポット・フライパン・ナイフなど台所用品づくりの職人コンスタンティン・ムランギさん(67)は、ジュメメ社から融資を受けて溶接機とメタルグラインダー2台の購入に向けた事業計画準備の支援を受けた。
タンザニアのエナジー4インパクトの現地派遣員であるジェシー・ケンクングさんは、「ムランギさんの返済計画の策定にも協力しました。」と語った。「取得する機器の初期費用、機材取得のために必要な預り金、支払い利子、合意された期間内に返済するための月々の預り金といった側面について、ムランギさんにアドバイスしました。」と語った。
農村で稼働するほとんどの小規模電力網の場合と同じく、ジュメメ社は、利潤を上げるレベルでありながらも、十分な需要を喚起するためにコストを下げるという難題に直面してきた。エナジー4インパクトは、ユーザーのさまざまニーズに対応した料金体系(個人料金と法人料金に分けるなど)をジュメメ社が策定する支援を行ってきた。また、顧客が価格に対して持つ印象を同社に理解させ、さまざまな料金体系の必要性を顧客に納得させる支援も行ってきた。
ジュメメ社は、収入源を多様化し、その持続可能性を高める手段として、自社で発電した電力を活用して、地元の市場を対象とした魚冷凍・冷凍及びデリバリービジネスを開始した。これによって同社のキャッシュフローは潤沢になり、地元コミュニティーに重要なサービスを提供し、地元の雇用創出と農村の経済開発に寄与している。(原文へ)
INPS Japan
This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.
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