【パリ/ニューヨークIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】
グローバル・パートナーシップの再活性化は、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」目標17として掲げられている。このアジェンダは2015年9月、ニューヨークの国連本部で開かれた歴史的な「持続可能な開発に関するサミット」(世界160か国以上の首脳が出席)において採択された。
「2030アジェンダ」は、政府開発援助(ODA)に関する公約を完全履行するよう、先進国に求めている。国民総所得(GNI)の0.7%をODAとして途上国に提供すること、とりわけ、0.15~0.20%を後発開発途上国に対して提供することが求められている。
世界の指導者らが承認した「目標17」は、「先進国は、後発開発途上国に対するODAをGNI比で少なくとも0.20%にすることを検討するよう求められる」と述べている。
「2030アジェンダ」は今年1月1日に発効した。しかし、経済協力開発機構(OECD、34カ国加盟)開発援助委員会(DAC)が発表した2015年の数値をみると、今後15年で重要な「目標17」を達成するのは、難しい課題であることがわかる。
インフレと、ドルに対して大きく価値を下げているDAC諸国通貨を考慮に入れた実質額で測ると、ミレニアム開発目標が合意された2000年以来、ODAは83%伸びている。
しかし、2015年に、ODAをGNI比0.7%以上にするとの国連の目標を達成したのは、DAC28カ国のうち6カ国(デンマーク・ルクセンブルク・オランダ・ノルウェー・スウェーデン・英国)のみである。ODAの対GNI比は0.30%であり、2014年と変わらない。
OECDの開発援助委員会が集めた公式データによると、2015年に22カ国でODAの額が増えた。大きく伸ばしたのはギリシャ・スウェーデン・ドイツ。減らしたのは6カ国で、特に減額幅が大きいのがポルトガルとオーストラリアである。
OECDに対して開発援助を報告している非DAC7カ国では、アラブ首長国連邦が対GNI比1.09%と、最大の比率を示している(2015年)。
2015年のODAは1316億米ドルで、実質額で2014年度から6.9%増。他方で、ホスト国での難民に対する支援は2倍以上になり、実質額で120億ドルである。難民への支援をのぞけば、援助は実質額で1.7%増である。
ドナー国での難民受け入れあるいはその手続きにかかる費用が2015年のODAに占める割合は9.1%で、ドナー国内での難民にかかるコストが66億ドルだった2014年の4.8%から上昇している。難民にかかるコストの上昇が開発予算を食いつぶしているというわけではない。というのも、DACによれば、ドナー国の約半分は、難民関連のコストを援助予算以外のところから引き出しているからだという。
「欧州における歴史的な難民危機のコストをカバーするために諸国は多額の費用支出を迫られているが、ほとんどの国が開発予算から資金を転用することを避けてきています。今後もこうした選択をすべきです。私たちはまた、最も貧しい国々への援助が増加していることを歓迎します。」とOECDのアンヘル・グリア事務局長は語った。
「各国は開発援助を増額し続けなければならなりません。難民にかかる将来的なコストと難民の社会統合に関する長期的なオプションの策定にも取り組む必要があります。同時に、ODAがそれを最も必要とする国々と人々に届くようにもしなくてはなりません。」とグリア氏は語った。
2015年にOECD諸国では前代未聞の150万人が難民申請を行なったが、そのうち100万人が欧州諸国であった。DACの規則では、難民の到着から1年間については、特定の難民関連費用をODAとカウントしてもよいことになっている。
オーストラリア・韓国・ルクセンブルクの3カ国は、難民関連費用をODAとカウントしていない。一方、オーストリア・ギリシャ・イタリア・オランダ・スウェーデンでは、2015年のODAの2割以上が難民関連費用であった。
2015年のデータは、最貧国への二国間援助が実質額で4%上昇したことを示している。これは、近年の減少傾向を逆転させるようDAC諸国が公約したことに応じている。ODAの約3分の2を占める二国間援助は、ある国から別の国に対して提供される援助である。2019年までのドナーによる支出計画を調査したところ、最貧国への資金フローは拡大し続ける見通しだ。
2015年、人道支援は実質額で11%増加して136億ドルとなった。債務免除は実質額で36%減少し、2015年のODA純額の0.2%を占めている。イラクとナイジェリアに対する特別措置のために債務免除が最高レベルに達していた2005・06両年には、20%を占めていた。
暫定的な推計では、二国間援助の中で贈与は実質額で2014年から9%増加したが、ドナー国内での難民関連コストをのぞくと、上昇率は0.4%となった。非贈与は実質額で26%増加した。
後発開発途上国に対する二国間援助は250億米ドルで、2014年と比較して実質額で4%増加し、この数年の援助減少の傾向を若干反転させることになった。
サブサハラ地域への二国間ODAは240億ドルで、2014年から実質額で2%増となった。また、アフリカ大陸全体へは実質額1%増の270億ドルだった。
ODAが増えたのは22カ国で、オーストリア・カナダ・チェコ共和国・ドイツ・ギリシャ・アイスランド・イタリア・日本・オランダ・ポーランド・スロバキア共和国・スロベニア・スウェーデンでは大幅な増額となった。このうち一部は、ドナー国内での難民関連コストの増加によるものだった。これらの費用を除いても、ODAの純増は20カ国に上る。他方で、ODAを減らしたのは6カ国で、中でもオーストラリアとポルトガルでは大幅に削減している。
G7諸国(英国・カナダ・フランス・ドイツ・イタリア・日本・米国)は、DAC諸国による2015年のODA全体の72%を占め、DACのEU諸国は56%を占めた。
「持続可能な開発目標を達成し、将来難民危機を避ける最善の方法は、現在の援助資金の流れを継続すること、とりわけそれをもっとも必要とし、もっとも脆弱な国に援助し続けることだということを忘れてはなりません。」とDACのエリック・ソルハイム議長は語った。
ODAは後発開発途上国の外部からの資金調達の3分の2以上を占め、DACは、貧困国における民間投資や国内税収入の増加を刺激する材料としてODAを用いたいと考えている。DACはまた、難民関連コストをODAとカウントする際の基準を明確化することを検討している。
「最貧国への援助額が減少し続けていた近年の傾向を反転させたこと、そして多くの国が巨額のODA予算を難民支援に用いているわけではない事実を歓迎したい。」とソルハイム議長は語った。(原文へ)
翻訳=INPS Japan
This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC
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