【ベルリンIDN=エヴァ・ウェイラー】
世界の人口全体が90億人になる2050年には、世界の都市部に60億人を超える人々が集住し、食料、エネルギー供給面で深刻な事態に直面しているだろう-これが、経済協力開発機構(OECD)の『OECD環境概観2050』の予想である。
OECDによれば、OECD加盟諸国(34カ国)では2050年までに高齢化率(65才以上の人口が全体に占める割合)が現在の15%から25%になるほか、中国やインドもやはり深刻な労働力不足を経験することになるであろう。
また『OECD環境概観2050』は、近年における経済不況とは対照的に、2050年までに世界の国内総生産(GDP)合計は現在の4倍になると予測している。中国、インドのGDP成長率は徐々に減速していき、一方で、アフリカ大陸は引き続き他の地域と比較して最貧地域であることに違いはないが、2030年から50年にかけて、経済成長率の面では、世界で最も高い伸びを示すとみられている。
経済規模が今日の4倍にまで成長した2050年の世界では、新たな対策が取られない限り、今日よりもエネルギー消費量が80%増加するとみられている。しかしエネルギー構成は現在のそれとほとんど変わらないものとみられ、化石燃料が85%、バイオエネルギーを含む再生可能エネルギーが10%強、その他が原子力エネルギーである。また2050年までには、BRIICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、インドネシア、中国、南アフリカ)がますます化石燃料への依存を強めながら、エネルギー消費大国となっている。
また、人口増加に対応して食料生産も増えるが、希少な土地をめぐる紛争が増えるものとみられる。
また、主にエネルギー関連の二酸化炭素排出量が70%増加することから、地球温暖効果ガス(GHG)の排出も2050年までには5割増加し、大気中のGHG濃度が685ppmに達すると予想されている。もしそうなれば、今世紀末までに地球の平均気温は産業化以前のレベルに比べて3~6度上昇するが、現在の合意では「2度まで」とされており、差が大きい。
2020年以降に思い切ったGHG削減策が早急に行われない限り、2010年12月の気候変動枠組条約第16回締約国会議(COP16)における合意内容だけでは、気温上昇を2度以内に抑えることは不可能である。
炭素税や「キャップ・アンド・トレード」方式の導入などによって炭素に適切な価格付けをしていかないかぎり、適切な措置をとった場合と比較して、2050年には地球温暖化関連のコストが50%増になるという。
生物多様性もかなり悪化するとみられる。2050年までに多様性が10%減少すると予想されている(とりわけアジア、欧州、アフリカ南部の状況が深刻)。生物多様性減少の原因としては、気候変動と公害に加えて、土地利用方法の変化(農業など)、商用の森林の増加、インフラ開発、生活の場としての利用などがあげられている。
しかし、適切な保護地区の設定によって、事態の悪化が食い止められる可能性がある。現在、地球の陸地の13%が保護地区に指定されているが、領海の場合はわずか7.2%であるという。
OECD報告では、2020年までに陸地・内海の17%、沿岸部の10%を保護地区とする、生物多様性条約愛知会議での合意を実施するために、さらなる措置を求めている。
OECDによる2050年の地球環境の姿の予測について報告する。
翻訳/サマリー=山口響/IPS Japan浅霧勝浩
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