【ブエノスアイレスIPS=マルセラ・バレンテ】
アルゼンチン法廷において、ついにコンドル作戦の罪を問う口頭審理が始まろうとしている。コンドル作戦は1970年代から1980年代にアルゼンチン、ボリビア、ブラジル、チリ、パラグアイ、ウルグアイの軍事政権が反体制派と左派勢力の一掃を目的に展開したもの。
1976年にアルゼンチンでウルグアイの議員2人と市民4人、ボリビアのトーレス元大統領の死体が見つかった。ワシントンでチリのアウグスト・ピノチェト大統領に追われた元外相が暗殺され、ブラジルではウルグアイの反体制派と家族が拉致され軍事政権に引き渡された。
アルゼンチンにおいて1985年に軍政時代に起こった人権侵害で有罪判決が出されたが、1989年と1990年に恩赦となった経緯がある
IPSの取材に応じたアルベルト・ペドロンチーニ弁護士は、「コンドル作戦はInter-American Convention on Forced Disappearance of Persons(拉致に関する米州協定)に基づいて責任を問うことができる」として各国1人の原告を立て、多国籍弁護士団を結成。継続中の犯罪に恩赦は適用されないと主張。さらに、各国首長が結託して行った犯罪として共謀罪の罪も訴えた。
アルゼンチン控訴審はこれらの主張を認め、アルゼンチンの司法がコンドル作戦の捜査に及ぶことを確認した。ビデラ元大統領、ビデラ政権の内相、陸軍司令官、トゥクマン州知事などの政府、軍要人が告訴、予防拘禁された。さらにチリのピノチェット元大統領をはじめチリ、パラグアイ、ウルグアイの軍事政府要人、秘密警察幹部などの国際手配、告訴などが実行された。
裁判では目撃者の証言に加えて、「非常に重要な証拠」として幾つかの文書が提出される予定。その1つは、ブエノスアイレスの米国大使館に駐在のFBI捜査官が、アルゼンチンとチリを首謀国としてコンドル作戦の詳細を本国に報告した米国務省の機密文書。
モンテネグロ裁判官の法廷にはこれらの証拠が提出されるが、軍弁護士から相当の抗議が予想される。ペドロンチーニ弁護士は人々の関心が薄れる前に、ぜひとも口頭尋問を行いたいとする。
南米6ヶ国の軍事政権による犯罪、コンドル作戦の罪を問う活動について報告する。(原文へ)
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩
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