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|軍縮|諸宗教会議が核兵器廃絶を訴える

【メルボルンIPS=ニーナ・バンダリ

世界の宗教界にとって、核兵器の使用は、人間社会のきわめて重要な倫理的問題である。このため世界の指導者らが即時に核兵器を廃絶することを主張しているのだ―オーストラリア・メルボルンで開かれている世界宗教会議(Parliament of the World’s Religions)の参加者達はこう考えている。 

世界最大の宗教者会議である同会議には、平和や多様性、持続可能性に関する問題に対処するために多くの宗教界の代表や学識者らが集まった。12月3日から9日まで、メルボルンコンベンションセンターで開かれている。

 「新たな世界に向けて:互いに耳を傾け、地球を癒す」という今大会のテーマは、世界の生存に脅威を及ぼしている重要問題に、宗教界と市民社会が対処する緊急の必要性を示している。核兵器の問題はそのひとつだ。 

「核兵器は、人類の作り出した地上最大の破壊力であり、人類にとって存在上の脅威というだけではなく、精神的な意味においても脅威なのです。」と、会議参加者らは主張した。 

「いまこそ決定的な一歩を踏み出すべきです。」と語るのは、スー・ウェアハム博士(オーストラリア核戦争防止医学協会前会長、国際核廃絶キャンペーン(ICAN)オーストラリア理事会メンバー)だ。 

2010年5月に5年ごとの核兵器不拡散条約(NPT)運用検討会議が開催されることに関連して、ウェアハム氏は「核兵器のさらなる拡散を防ごうとするならば、この会議で核軍縮に向けた前進をもたらすことが重要になってきます。もはや、核兵器をステータス・シンボルや正当な兵器とみなす時代は終わりました。核兵器は、『違法で非人道的な恐怖の道具』というその本来の姿で捉えられるべき時なのです。」と語った。 

ICANの目標は、核兵器の開発・実験・生産・使用・使用の威嚇を禁ずる核兵器禁止条約を採択することにある。 

「核軍縮の必要性とその達成に向けた措置」と題する分科会において、ウェアハム氏は、「核兵器禁止条約の締結は必要であるし、実現可能です。」「それは、核のホロコーストの恐怖から逃れて人々が生きる権利を主張するものです。それは人権問題であり、環境、経済、保健、政治、安全保障の問題であり、なによりも、倫理的な問題なのです。」と語った。 

6月には国連の潘基文事務総長が、核軍縮は世界が直面する「もっとも緊急な政治問題です。」と強調した。9月には核不拡散・軍縮に関するはじめてのサミットが国連安全保障理事会を舞台に開催され、「NPTの目標にしたがって、核兵器なき世界に向けた条件を作り出す」との決議が採択された。 

世界中の市民団体も2010年のNPT運用検討会議で本当の前進をもたらすべくエネルギーを傾けている。 

アメリカムスリム協会(MAS)自由財団(本部:ワシントンDC)人権・公民権部長のイブラヒム・ラミー氏は「人類を絶滅から救うために、奴隷制廃止のときと同じように、世界中の人びとが核兵器に対して立ち上がらねばなりません。」と語った。 

MAS自由財団は、2008年から2012年にかけた米国内の重要な立法事項としてあげた12項目のうちのひとつに世界的な核廃絶を含めている。「コーランの啓示やイスラムの社会的価値のうち最良の部分を実現する必要から、私達は、核兵器の廃絶と、莫大な核兵器(と通常兵器)関連予算を社会的向上と人間生活の持続のための予算に転換することを要求しなければなりません。」とラミー氏は語った。 

2008年に米国が核兵器維持のために使った予算は524億ドルにのぼる。他方で、貧困下に暮らす米国人が3700万人、医療保険がない米国人が5000万人いる。 

またラミー氏は、「インドやパキスタンのような新興核兵器保有国は、長きにわたる貧困と、不安定な治安状況に悩まされているにも関わらず、希少な資源を危険で持続不可能な核開発に振り向けています。しかし、核兵器は相互の破壊を確実にもたらさずにはおかないのです。」と語った。 

ラミー氏は、NPT第6条が核兵器保有国に対して、究極的核廃絶に向けた交渉に入るようとくに義務づけている点を指摘したうえで、「核兵器廃絶を推進し、各国政府がNPTを支持するよう圧力をかけるネットワークを世界中で形成すべきだ」と訴えた。 

ラミー氏はまた、各国に対して「先制不使用」の宣言を2国間で行うよう強く求めた。とりわけ、継続中の紛争当事国や、イスラエルとイラン、インドとパキスタンなど、対立中の諸国間においてそうすべきだと訴えた。 

また、ラミー氏によれば、米国では「バラク・オバマ大統領に対して、核弾頭を戦略的ミサイル運搬手段からはずすことで警戒態勢を解除し、潜在的な敵国に対する偶発的な核攻撃の危険性を低減させるべきだと訴えている。」という。 

信仰の如何に関わらず、すべての人々は、核兵器をなくすためのキャンペーンを進めている創価学会インタナショナル(SGI)のような組織を支援しなくてはならないとラミー氏は語った。SGIは2007年に「核兵器廃絶へ向けての民衆行動の10年」キャンペーンを開始し、世論を喚起し、核廃絶に向けて行動する世界的な草の根ネットワークの形成を支援している。 

東京に本部を持ち、世界192カ国に1200万人を超える会員がいるSGIは、世界でも長年に亘って核軍縮を訴えてきた仏教組織であるが、このところ核兵器廃絶に向けた世界的キャンペーンを一層強化している。1957年にはじまった同キャンペーンは、「(核攻撃を行った唯一の国である)米国は、核兵器なき世界に向けた具体的な措置を取ってゆく」というオバマ大統領の宣言を受けて、熱を帯びてきている。SGI本部の平和運動局長・寺崎広嗣氏は、「各国政府には、核の脅威を減らすために責任ある行動をとってもらう必要があるが、市民社会にも明らかに重要な役割があります。」と語った。 

「突き詰めて言えば、核兵器は人間のエゴの特殊な形態によって生み出されたものです。つまり、自らの利益や社会を守るために他者を犠牲することもいとわない自己中心主義がそれです。人間の心のこの側面を表に出し解体していかないかぎり、核兵器の脅威に対する本当の永続的な解決策はないといってよいでしょう。」と寺崎氏は語った。 

SGIの核兵器廃絶に向けた取組みの中心には、人間のよりよい性質に訴え、対話の力への信頼を取り戻したいとの希望がある。寺崎氏は、「国家と国益の対立という論理からは、核兵器によって国家の安全保障上の地位が高まるとの立場が出てくることになります。しかし、市民社会は、核兵器は兵士よりも非戦闘員を傷つけ戦後も長らく人びとを傷つけ続ける不正義の兵器との観点からこの論理を拒否したのです。」と語った。 

SGIのような様々な宗教組織が、広範に亘る草の根活動、署名活動、教育・啓蒙活動を展開している。その中には、被爆者の証言を収録したDVDや、世界的な核軍縮に向けた世論を高めるために個人が何をできるかを示した本の出版などがある。 

分科会「核廃絶:宗教界による反応と活動」に出席したSGI平和プログラム担当・河合公明氏はこう訴えた。「核廃絶に向けた行動は、恐怖や罪悪感などの消極的・ネガティブな感情によって動機づけられるべきではないと思います。むしろ人間の良心と高い道義的関心に動機づけられた平和の文化を創造しようとの積極的な取組みとなるべきだと思います」。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan

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