SDGsGoal14(海の豊かさを守ろう)|ブルーエコノミー会議|ケニアが世界的な対話とパートナーシップの促進に熱心に取り組む

|ブルーエコノミー会議|ケニアが世界的な対話とパートナーシップの促進に熱心に取り組む

【ニューヨーク/ナイロビIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】

史上初となる持続可能なブルーエコノミー会議(主催:ケニア外務省、共催:日本政府、カナダ政府)が、ケニアの首都ナイロビで11月26日から3日間に亘って開催される。この会議は、17の持続可能な開発目標(SDGs)で構成される持続可能な開発のための2030アジェンダや、2015年のパリ協定(気候変動)、さらに2017年の国連海洋会議「行動の呼びかけ」を通じて高まる機運を背景に開催されるものである。

ケニア政府は、この会議を「世界初」の取り組みと自負している。

ウフル・ケニヤッタ大統領がブルーエコノミー会議の開催を主導した動機は何なのだろうか。日本政府とカナダ政府が共催としての役割を果たしているのはなぜなのだろうか。また、この会議は、持続可能な開発のための世界共通目標やアフリカのアジェンダ2063にどのように貢献していくのだろうか。

ケニア政府高官のミケニ・ジャフェット・ンティバ水産・水産養殖・ブルーエコノミー総局長が、これらの質問に答えてくれた。

持続可能なブルーエコノミー会議の意義は、SDGの第14目標で強調されている。つまり、海洋は、地表の4分の3を覆い、地球の水の97%、容積に換算すると動植物の生存圏の99%を占めている。

SDGs Goal No. 14
SDGs Goal No. 14

30億人以上が、海洋と沿岸の生物多様性に依存して生活している。世界全体でみると、こうした海洋資源と関連産業の市場価値は、年間3兆ドル(全世界のGDPの約5%)に相当するとみられている。

海洋には、確認できているだけで約20万の生物種が生息しているが、未確認のものも含めると、その数は数百万を上回るとも言われている。海洋はまた、人間が作り出す二酸化炭素の約30%を吸収し、地球温暖化の影響を緩和する機能を果たしている。

海洋はまた、世界最大の動物性タンパク質の供給源となっている。世界で30億人以上が動物性タンパク質の主な供給源として海洋に依存している。海面漁業で直接・間接的に生計を立てている人々は、2億人以上にのぼる。

ケニアが打ち出している長期開発計画の目標は、力強くかつ持続可能な経済成長を実現し、SDGsが達成されることとなっている2030年までに、すべての国民に高品質な生活環境を提供することを目指すとしている。

ンティバ総局長は、「この目標を達成するため、ケニア政府は国家目標の1つとして、従来慣れ親しんできた『グリーンエコノミー』を補完する新たな基盤としてブルーエコノミーに注目していくとしています。この目標は、アフリカ連合アジェンダ2063とSDGs全般に沿うものでもあります。」と語った。

Prof Micheni Japhet Ntiba/ Sustainable Blue Economy Conference
Prof Micheni Japhet Ntiba/ Sustainable Blue Economy Conference

アジェンダ2063(2013年に発表された、アフリカ連合創設100周年を迎える2063年までのアフリカ開発の長期ビジョン)は、「(50年後のあるべきアフリカの姿として)アフリカの市民たちの力で前に進む、統合され、繁栄し、平和な アフリカ。国際社会でそのダイナミックな存在感を発揮するアフリカ」を描いている。またこの長期開発ビジョンは、包摂的で持続可能な開発に根差した繁栄するアフリカ。政治的に結びつき、汎アフリカ主義とアフリカ・ルネッサンスの理想に基づく、今日よりもはるかに統合されたアフリカを描いている。こうした願望には、ブルーエコノミーで明確に表明された理念が含まれている。

ンティバ総局長は、2016年の8月に史上初アフリカでの開催となった第6回アフリカ開発会議(TICAD6)をナイロビで成功裡に主催したことがケニア政府にとって、「大きな自信となった」と指摘した。同サミットでリーダーシップを発揮したケニア政府は、この実績を教訓に、持続可能なブルーエコノミー会議の主催と、とりわけこのテーマでアフリカ諸国をリードする役割を申し出た。

TICAD6には、日本の安倍晋三首相をはじめ、アフリカ52か国から35人の国家元首・首脳級の代表、その他合計で7000人以上の各方面の代表(開発パートナー諸国やアジア諸国、国際機関及び地域機関ならびに民間セクターやNGOなど市民社会の代表等)、が参加した。

TICAD6 Closing Session/ Cabinet Secretariate
TICAD6 Closing Session/ Cabinet Secretariate

「TICAD6開催中、ケニア水産・水産養殖・ブルーエコノミー総局は船舶・海事総局の支援を得てブルーエコノミーに関するサイドイベントを主催したところ、アフリカ諸国の閣僚や政府高官をはじめ、開発パートナー、国際機関、NGO、官民セクター、金融機関の代表が参加するなど大きな注目を浴びました。」と、ンティバ総局長は語った。

その際、ブルーエコノミーは、アフリカの持続可能な開発と経済成長につながる新たなフロンティアであるという認識がほぼ全会一致で示された。TICAD6の成果文書として発表されたナイロビ宣言には、中でもブルーエコノミーの推進が謳われている。

河野太郎外相は、10月7日の閉会セッションで、「…持続可能な発展のためには、経済の多角化及び価値の付加の必要性を確認した。…また、海洋安全保障や法の支配を強化すると共に、ブルーエコノミーを推進する重要性も繰り返しました。」と語った。

カナダ政府が持続可能なブルーエコノミー会議の共催を決定した理由について、ンティバ総局長は、ケニアとカナダの首脳が、最近開催された英連邦首脳会議(場所:ロンドン)に出席した機会等を通じて、ブルーエコノミーに関する話題について「幅広く相談」してきた、と説明した。両首脳は、英連邦首脳会議に出席した際、ブルーエコノミーを推進するパートナーとして経済成長に資する海洋資源を活用する方策を探ることで合意した。

President Barack Obama and First Lady Michelle Obama greet His Excellency Uhuru Kenyatta, President of the Republic of Kenya, in the Blue Room during a U.S.-Africa Leaders Summit dinner at the White House, Aug. 5, 2014. (Official White House Photo by Amanda Lucidon)
President Barack Obama and First Lady Michelle Obama greet His Excellency Uhuru Kenyatta, President of the Republic of Kenya, in the Blue Room during a U.S.-Africa Leaders Summit dinner at the White House, Aug. 5, 2014. (Official White House Photo by Amanda Lucidon)

「『ブルーエコノミー』を論理的に分析すると、結局のところ、ケニヤッタ大統領が次の5年間の主要課題として今年発表した『ビッグ・フォー(the Big 4)』アジェンダに行きつきます。」と、ンティバ総局長は語った。このアジェンダの4つの柱とは、とは、(1)ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)、(2)食料・栄養の保障、(3)製造業の推進、(4)手ごろな住宅の確保である。

「例えば製造業の推進についていえば、アジェンダが対象とする範囲は、ブルーエコノミーに直接関連して生じる機会を十分に利用できるよう、エンジニアリングに投資したり、新技術や科学的基礎に基づくアイデアを活用するなど、かなり幅広いものとなっています。」と、ンティバ総局長は語った。

こうした機会には、船舶、運送、国際海洋貿易全般が含まれる。海上輸送は、造船、船の修繕、船舶登録、船乗り業、港湾の運用、保険業、陸上を基地とする補助支援や金融サービスなど、従来ケニアがほとんど活用してこなかった数多くの就業機会を創出する。

漁業は、世界の食と栄養の安全保障に貢献する主要な構成要素である。海洋漁業部門だけでも、毎年世界全体のGDPに2700億ドル貢献している。

ケニアの世界経済への寄与度は現時点ではかなり低いレベルに留まっているが、ブルーエコノミーが生み出す機会を活かして将来的には寄与度を高めていきたいとしている。

Photo credit: Seychelles News Agency
Photo credit: Seychelles News Agency

世界銀行の試算では、ブルーエコノミーは世界全体で年間(世界全体のGDPの3%にあたる)1兆5000億ドルの経済規模を生み出し、漁業、水産養殖、沿岸および海洋観光、研究活動等の分野で約3億5000万人に雇用機会を提供すると予想されている。

この内、西インド洋諸国(コモロ、レユニオン、ケニア、マダガスカル、モーリシャス、モザンビーク、セイシェル、ソマリア、南アフリカ共和国、タンザニア)がブルーエコノミーから恩恵を受ける経済規模は2200億ドルだが、ケニアが占める割合はその20%にとどまっており、しかも主に観光収入によるものである。「このことは、観光以外のセクターにおいても、ブルーエコノミーから利益を得られる余地が十分にあることを示唆しています。」とンティバ総局長は指摘した。

「全体的に言えば、ブルーエコノミー会議は、『持続可能性』と『生産性』という2つの柱を前提としています。」とンティバ総局長は語った。この会議を契機に始まる世界的な対話やパートナーシップは、多くの国々にとって国民の生活を一変させるものになると確信しているンティバ総局長は、「はっきり言えることは、(ブルーエコノミーの推進により)『ビッグ・フォー』アジェンダが実現に向けて大きく前進し、とりわけここケニアで主要な問題となっている、国民の暮らしが良くなっていくということです。」と語った。(原文へ

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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