ニュース女性国連事務総長求めるキャンペーンが加速

女性国連事務総長求めるキャンペーンが加速

【ニューヨークIDN=J・ナストラニス】

潘基文国連事務総長の後継者選びプロセスが4月12・14両日に始まり、国連加盟国と部分的には一般市民も参加する。こうした中、もし女性が今年、事務総長に選ばれなければ、次の機会は2026年まで訪れないかもしれない、と新たなイニシアチブが警告している。なぜなら国連事務総長は任期5年で、2期連続で執務することが可能だからだ。

1946年以来、国連事務総長は8人いるが、すべて男性である。トリグブ・リー(ノルウェー)、ダグ・ハマーショルド(スウェーデン)、ウ・タント(ビルマ)、クルト・ヴァルトハイム(オーストリア)、ハビエル・ペレス・デクレヤル(ペルー)、ブトロス・ブトロス=ガリ(エジプト)、コフィ・アナン(ガーナ)、そして現職の潘基文(韓国)と8人男性が続いた後、運を天に任せるのではなく、女性をトップに就けて、この世界的機関の70年の歴史の分水嶺とすべきだと訴えているのは、「私のような国連事務総長」(UNSG LIKE ME)キャンペーンである。

活動家らは、女性は戦争の悪影響をより受けているにもかかわらず、依然として和平協議や国際外交の場に女性の姿が少ないと論じている。国連安保理は15年前、紛争解決と和平プロセスに関する全ての意思決定レベルにおいて、女性の参加を促進するよう、加盟国と国連自身に求める決議を全会一致で採択した。しかし、1992年から2011年の間で、和平協議の参加者のうち女性はわずか9%であった。

国連は、紛争の予防と平和構築において女性の参加は欠かせないと認識している。近年における様々な和平協議を分析したある研究によれば、「女性が証言者や署名者、調停人、交渉人として参加した和平協議は、(そうでない和平協議と比べて)和平協定が少なくとも2年は続く蓋然性が20%アップすることが判明している。

同キャンペーンは、国連は自らの活動においてジェンダー平等を促進する責任があると強調している。「国連事務総長職を担えると信頼できるような女性候補がもしいないとすれば、国連はいったい女性に対して実際どのような責任を果たしているのかという深刻な疑問を投げかけなければならなくなるだろう。」

アルゼンチンからウクライナ、バングラデシュからブルンジ、ペルーからポーランドに到るまで、あらゆる大陸で、女性が大統領や首相に選出されてきた。国連はこうした民主的な世界に追い付き、初の女性トップを選出すべき時に来ている。

「私のような国連事務総長」キャンペーンは、国連総会の72人の歴代議長のうち、女性は僅か3人で、全体に占める女性の比率が4%であったことを明らかにしている。現在の国連安保理を構成する15人の大使のうち、女性は、米国のサマンサ・パワー氏ただ1人だけである。

外交協議の場において女性の不在が顕著なのは、「南」の国々(=途上国)だけの問題ではない。欧州諸国間の協議の場においても、多くの場合、女性の参加者は少ないのが現実だ。女性署名者のいない和平協議には例えば、ボスニア・ヘルツェゴビナを巡って協議された1995年のデイトン合意、さらには、マケドニアを巡って協議された2001年のオフリド合意がある。

7人の候補者

国連総会のモーエンス・リュッケトフト議長と、国連安保理のサマンサ・パワー議長に各々の加盟国が申請した7人の立候補者のうち、男性は4人、女性は3人である。潘基文氏の後継者は、2017年1月1日付けで就任することになる。

男性候補者は、マケドニア共和国(旧ユーゴ)のスルジャン・ケリム氏、モンテネグロのイゴール・ルクジッチ氏、スロベニアのダニロ・トゥルク氏、そして、元国連難民高等弁務官で、ポルトガルの元首相アントニオ・グテーレス氏である。

公的に確認されている女性候補者は、ユネスコのイリナ・ボコヴァ事務局長(ブルガリア)、クロアチアのヴェスナ・ピュジッチ元外相、モルドバ共和国のナタリア・ゲルマン元外相である。

「その他に国連ではヘレン・クラーク(元ニュージーランド首相、国連開発計画事務局長)、ミシェル・バチェレ(チリ大統領)、スザーナ・マルコッラ(アルゼンチン外相)女性候補者の名前も挙がってはいるが、この中で政府から指名を受けた候補はいない。」とCBSニュースは報じている。

潘氏の前任者コフィ・アナン氏が主宰している「エルダーズ」[Elders、年配者たちの意]の副議長を務め、かつてノルウェー首相も務めたグロ・ハーレム・ブルントラント氏も、女性の国連事務総長誕生を熱心に訴えている人物である。

ブルントラント氏は、「アカウンタビリティ、一貫性、透明性」(ACT)グループが昨年9月26日にニューヨークの国連本部で開催した討論会において、「国連事務総長には8人続けて男性が就任しましたが、今こそ女性が選ばれるときです。従って各加盟国は、女性候補者を出すべきです。ただし、こうした重要な決定がなされる場合は、特定の候補者をあらかじめ排除することは許されません。また、各候補者の資質こそが第一の検討要素とされるべきです。」と語った。

ブルントラント氏は、政府の側からは、「国連事務総長に女性を求める新たな友人グループ」と呼ばれるグループによって支持されている。グループの創始者であるコロンビアのマリア・エマ・メヒア国連大使は、53カ国がこれに署名したと述べている。

CBSニュースのパメラ・フォーク氏によると、国連分担金の二大拠出国である日本とドイツは、女性事務総長を求めるイニシアチブに加わっているとのことだ。日独両国は、インド・ブラジルとともに、安保理の5常任理事国の拡大を含めた国連改革を主張している。

他方、英国は、「安保理5常任理事国のうち、潘氏の後継に女性を就けることに関心を示している唯一の国」であると報じられている。

潘事務総長は3月8日の国際女性デーに寄せて声明を発表したが、その内容から事務総長職に女性を就けることに熱心であるように見受けられた。

潘事務総長は同声明の中で、「私たちがこうした問題に取り組める方法は、変化をもたらす主体としての女性のエンパワーメントを置いて他にありません。私はこれまで9年以上にわたり、国連でこの理念を実践してきました。私たちが多くのガラスの天井を突き破った結果、一面にその破片が広がりました。そして今、私たちは女性が新たなフロンティアを越えられるよう、過去の仮定や偏見を一掃しようとしています。」

潘氏は、国連部隊で初の女性司令官を任命するとともに、「国連上層部に女性職員が占める割合を歴史的な水準にまで高めた。」と指摘した。女性は現在、かつて男性の独壇場であった平和と安全という領域で、中心的なリーダーの地位を占めている。「私が国連事務総長に就任した時、フィールドで平和ミッションを率いる女性はいませんでした。今では、国連ミッション全体のほぼ4分の1は女性を最高責任者としています。これでもまったく不十分であるとはいえ、大きな改善が見られたことは確かです。」

潘氏は、「事務次長補または事務次長のポストに女性を起用する任命状に150回近く署名しました。」と指摘したうえで、そうした女性の中には、「国際的に著名なトップレベルの政府高官もいれば、母国に戻ってリーダーの地位に上り詰めた女性もいます。私は彼女たちのおかげで、女性が適任である仕事がいかに多いかを証明することができました。」と語った。

潘氏はさらに、「この実質的な前進の継続を確保するため、私たちは、国連システム全体に責任を問う新たな枠組みを構築しました。かつてはジェンダーの平等が賞賛に値するアイデアだと思われていた職場で、それは確固たる方針へと進化しています。かつては選択項目だったジェンダーへの配慮に関する研修が、今ではますます多くの国連職員にとって必修項目となっています。以前の国連予算のうち、ジェンダーの平等と女性のエンパワーメントに割り当てられる資金を追跡していた項目は一握りにすぎませんでしたが、現在ではこれがほぼ3項目に1項目の割合に達し、しかも増大を続けています。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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