ジョジュ師は学生時代に日本による中央アジアの仏教遺跡発掘事業に参加。そのままウズベキスタンに留まり、以来30数年間中央アジアを中心に活動をしている。世界伝統宗教指導者会議には第1回より参加。運営委員として、カザフスタンを毎年訪問し、この宗教間対話のイニシアチブを真の平和と協力のためのプラットフォームへと進化させるべく尽力してきた。
【アスタナINPS Japan=浅霧勝浩】
Q:今回で7回目となる世界伝統宗教指導者会議の経緯についてお聞かせください。
ジョジュ師:17年前に私がこの会議に参加した当時は、宗教指導者らはお互いに理解できない場面も少なくありませんでした。しかし対話を重ねる中で、相互理解が深まっていったと実感しています。
人類は歴史を通じてなぜ戦争、殺戮を繰り返してきたのか、それはお互いに誤解しているからなのです。そしてその背景には、自らの宗派や政治体制や国のみが正しく、相手のものを否定するドグマの存在があります。
(議論の一例を紹介すると)仏教徒は、人間も自然界の万物も皆等しく尊いものと説きます。一方、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教では、この地球を含む万物は全能の神が創造したと説きます。それでは、そうして紛争や殺戮がやまないのでしょうか?神が私たちを創造したのならば人類は皆兄弟・姉妹であり、家族のはずです。どうして騙したり殺したいするのでしょうか?
Q:一神教の伝道に対して仏教界は消極的との批判がありますが。
ジョジュ師:確かに、仏教界もただ静かに耐えているのみではなく、時にはもっと声を大きくすべきだと思います。現実には、政治的にも敏感な領域で、ある宗教が「全能の神」を連呼しながら布教活動を行っているのを目にします。しかし、そのような一方的な教義の押し付けは、私に言わせれば、外の世界を知らない、「井の中の蛙」にほかなりません。このことは仏教界にも言えます。
Q:前回の会議より日本の仏教界を代表してSGIが参加しています。
ジョジュ師:池田大作SGI会長の書物を読ませていただいています。素晴らしい内容で、仏陀の言葉のように大変役に立つものです。共に心を開いて、同じ仏教徒として、同じ人間として、(世界伝統宗教指導者会議)で対話を深めていきたいと期待しています。
Q:中央アジアと仏教のつながりについて。
ジョジュ師:中央アジアには、数多の仏塔や仏像が発掘された遺跡があります。法華経をはじめ大乗仏教は、この地を経由して、中国、朝鮮、日本へと伝えられました。
Q:世界伝統宗教指導者会議が開催される意義についてお聞かせください。
ジョジュ師:特定の宗教のみが正しいとして、押し付けられるのは人生にとって幸福なことではありません。様々な宗教指導者が集うこのイニシアチブは、人々に対して様々な情報を発信しています。そうすることで、人々は自分の目で確かめ研究し、何が自分の人生や幸福に必要なのかを考えることができるのです。
つまりこの会議の意義は、人々はいかにして幸福と自由を得ることができるか、選択肢を与えている点にあります。
Q:この会議をホストしているカザフスタンの多民族・多宗教文化について
ジョジュ師:ロシアのプーチン大統領は、「カザフスタンは新しい国だ。」と主張したことがあります。しかし、ナザルバエフ初代大統領は、「カザフスタンは新しい国ではない。私たちには独自の歴史がある。」と反論しました。この見解は、現在のカシム=ジョマルト・トカエフ大統領も明言しています。
ソ連共産党がカザフスタンを支配した時代、カザフスタンの自由と独立を主張する人々は地下に潜るしかありませんでした。しかし、30年前にソ連から独立してからは、カザフ人は自らの歴史を知ることができようになっています。
遊牧文化を背景にもつカザフ文化の特徴は、オープンマインド(開かれた)強固なマインド(精神)といえます。そうした意味では、自らの歴史と伝統、宗教・文化に強い誇りを持つカザフ人にとっても、この会議は重要な位置を占めていると思います。もちろん様々な宗教にとってもこの会議が重要であることは言うまでもありません。
INPS Japan
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