SDGsGoal1(貧困をなくそう)悲惨な結末を招く貧困の罠

悲惨な結末を招く貧困の罠

【レノ(米ネバダ州)IDN=J・W・ジャッキー】

国連の持続可能な開発目標(SDGs)は、不平等を根絶し、世界の健康状態を改善するグローバルな道筋を示している。SDGsのアジェンダは、貿易や保健、ジェンダー不平等、貧困、疾病、環境保護、その他の主要な目標全てが互いに密接につながっていることを明確に示している。

したがって、貿易上の不均衡を是正し、地域開発を進めることによってSDGsのアジェンダを達成しようと考える者なら、SDGsがお互いにどう連結し、そのすそ野がいかに広いものであるかを心に留めておかねばならない。

Sustainable Development Goal
Sustainable Development Goal

例えば、貿易を増やすことによって貧困を削減することを目標にした戦略は、環境を損なわずにはおかない。それは、もっとも貧しい者をさらに不平等な地位に落し込み、より健康を害するような持続不可能な動きを生み出す。不平等は、SDGsのアジェンダが取り組もうとする全ての主要な世界的問題の根本原因だと考えられている。貧困と健康の間の関連は明らかだ。

貧困の罠

貧困と不健康は互いに密接に関連している。低収入は健康の悪化につながる。医療が営利化されている社会では、このつながりはより直接的で明白なものとなる。もし病気になって病院に行ったり薬を買ったりするお金がなければ、健康状態は良くならないだろう。しかし、貧困と不健康の間の連鎖反応は一般にはあまり理解されていない。病気になった人は働けないし、家族も養っていけない。そこで貧困の罠にはまってしまう。

SDGs Goal No. 1
SDGs Goal No. 1

病気から抜け出せなくなると、家族の収入は落ち込む。病気が進行すると、以前は受けられた治療に対して費用が払えなくなる。国民皆医療保険制度が整っている(低所得者は処方薬も無料)英国のような国でさえ、貧困と健康の問題は相互に関連している

研究によれば、英国の貧困家族は、そうでない家族に比べて明らかに不健康であるという。感染症の場合はそうでもないが、糖尿病や虫歯、肥満、喘息、心臓病の場合は、こうした連関がみられる。これらの場合においては、貧しい家族は、安く質の悪い食事やその他の社会的要因のサイクルにはまってしまっている。

病気の蔓延という罠

収入が減ると、より難しい判断を迫られる。衛生状態は悪くなり、虫が湧き、食事が貧しくなり、結果的に飢餓に陥る。病気は、常識として考えられているのとは異なり、無差別に襲うのではない。貧困の罠にかかると、衛生状態が悪くなり、その他の関連要因も相まって、病気に対する免疫システムが弱まり、感染症に罹りやすくなる。

例えば、金銭的な余裕があればゴキブリは簡単に抑制できるが(またお金をかけた堅固な家ならそもそもゴキブリは出没しにくい)、お金がないならそれは極めて難しい課題となる。ゴキブリは、アレルギーや喘息疾患の可能性を高め、特定の食物から栄養を摂取する身体能力を減退させ、免疫システムを弱め、高い医薬品の支払負担を増やす。この問題は、大腸菌からペストまであらゆる菌を広める虫にからんだ、氷山の一角である。

例外

SDGs Goal No. 3
SDGs Goal No. 3

バングラデシュは魅力的な国であるが、専門家らが「バングラデシュのパラドックス」と呼ぶものがある。世界で最も貧しく人口過密な国の一つでありながら、同国は医療において目覚ましい進展を遂げ、それが民衆の著しい生活改善につながっているのである。バングラデシュにおける健康状態の改善は、貧困と健康の連関を否定する証拠の一つとみなされるかもしれないが、真実はもっと込み入っている。

現実には、バングラデシュはSDGsの強力な主唱国のひとつであり、保健問題への同国のアプローチは「すべての人に教育を」というものである。同国は、貧困への対処にあたって、革新的かつ現地の実情に合わせたアプローチを採っているが、保健に関してはより全体的な見方をしている。医療に直接的に資金を流し込むのではなく、若い女性に対する教育の平等を重んじているのである。

こうした教育プログラムは、予防接種や経口水分補充療法、家族計画、その他の長期的な取り組みが好意的に受け止められる効果を生んでいる。貧困や持続可能性、不健康につながるその他の要因を考慮に入れることによって、それらの目標を間接的に達成することが可能になった。

SDGs Goal No. 4
SDGs Goal No. 4

より広範で他の領域とつながったアプローチが将来のために必要

一見したところ、グローバルな貧困への解決策は、富める者が貧しい者に対して食料や医薬品を恵むことにあると思われるかもしれない。しかし、この持続不可能な支援のやり方は、結局のところ世界的な破滅につながるサイクルを生むだろう。貧困は不平等からやってくる。それは、低収入によって直接的にも起こり得るが、間接的には、不健康や低開発、低レベルの教育、ジェンダー不平等、その他の環境要因によっても起こりうる。

英国の経験は、医療が無料で提供されていても、貧困を原因とするその他の不平等が、貧困層の健康悪化につながらざるを得ないことを示している。他方で、バングラデシュの経験は、より広範で、他の分野とつなげた考え方が採られるならば、より少ない投資でより大きな効果が得られることを示している。貧困と不健康は密接に連関しているが、その関係は寄生的でサイクル的なものである。そのいずれも孤立して生じるのではない。これら2つの重要な指標を超えた部分を見据えることで、これらを適切に予防することが可能だ。(原文へ

UN Photo
UN Photo

翻訳=INPS Japan

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