SDGsGoal6(安全な水とトイレを世界中に)汚い水で毎日4,000人の子供が死亡

汚い水で毎日4,000人の子供が死亡

【国連INPS=タリフ・ディーン

この統計は非常に驚きだ。世界の人口60億人超のうち10億人以上が、人間生活の必需である清潔な飲み水を入手できない。そして、約26億人が、質のよい衛生設備を利用できない。

国連児童基金(ユニセフ)によると、水の汚染、基礎的衛生の欠如により、毎年150万人以上の子供が命を落としている。その大部分が、水の中で発生する病気によるものである。

ユニセフの事務局長アン・ベネマン氏は言う。「すばらしい進歩があるにもかかわらず、推定4億2500万人の18才以下の子供たちが清潔な飲み水を入手できず、9億8000万人以上の子供が適切な衛生設備を利用できない」。

ベネマン氏はまた、影響を受けているのは、亡くなった子供たちだけではないという。「さらに数百万の人々にとっての発育が妨げられ、下痢あるいは水関連の病気により健康が害されている」。

 ユニセフは、『子供のための進歩――水と衛生に関する報告書』と題された9月28日発表の33ページのレポートで、これらの「悲劇的な統計」は、8つの「ミレニアム開発目標」(MDGs)のうちの一つである、安全な飲み水と基礎的な衛生を継続的に利用できない人々の割合を2015年までに半減させるという目標に、世界が取り組む必要性を指し示している、と述べる。

MDGsに含まれるその他の目標は以下のようなものである。極端な貧困と飢餓の50%減少。普遍的初等教育。ジェンダー平等の推進。子供死亡率の3分の2削減。HIV/AIDS、マラリアなどの感染症の拡散防止。環境の持続性向上。2000年9月に集まった189ヶ国の首脳がこれらの目標すべてを2015年までに達成することで合意した。
 
総体として、水と衛生に関するMDG達成に向けた世界の進展状況を統計的に見てみると「複雑な結果が出てくる」とユニセフは警告する。

ベネマン氏はこう言う。「現況に満足することはできません。また、ミレニアム目標が提供した、もっとも弱い立場の子供たちの命を救う機会を逃すことはできません」。

国際社会は、国連の設定した目標を達成する十分な資源と決意を欠いているとベネマン氏は述べる。「5才の誕生日を迎えずに亡くなる子供が毎年150万人以上もいるという事実ほど、もっと強く努力しようと私たちに思わせてくれる理由はありません」。

ユニセフと世界保健機構(WHO)の推定によれば、途上国の人々が低コストで基礎的な飲み水・衛生サービスを2015年までに受けるには、少なくとも毎年113億ドルは必要であるという。また、全資源の80%以上は、アジアおよびアフリカで必要とされるだろうという。

ユニセフは詳細な内訳を示している。それによれば、下痢が原因の死亡の88%が、危険な飲み水、衛生的な環境を保つための水の欠如、衛生設備の欠如によって引き起こされている。すなわち、下痢で毎年亡くなる5才以下の子供190万人のうち、150万人以上がこの原因で亡くなるのである。

これは、5才以下の子供の死亡原因の18%にもなり、下痢が原因で毎日4,000人以上の子供が亡くなっているということにもなる。

ユニセフは、明るい面として、東アジア/太平洋、中東/北アフリカ、南アジア、ラテンアメリカ/カリブ海地域の4つの発展途上地域で、清潔な水に関してMDG達成の過程にあるという事実を指摘した。

しかし、サハラ以南アフリカ、中・東欧、CIS諸国における現在の進展状況をみると、これらの地域は遅れているという。
 
 「南アジアとラテンアメリカ/カリブ海地域においては目を見張る進歩があり、飲み水に関する目標が10年早く達成できる瀬戸際にある」とユニセフは述べる。

1990年から2004年の間に、水と衛生設備を利用できない人々の数が、南アジアでは3億2600万人から2億2200万人に、ラテンアメリカ/カリブ海地域では7,400万人から5,000万人にまで減少した。

しかし、バングラデシュ・インド・ネパール・パキスタンでは、危険なレベルの砒素が発見されている。「バングラデシュで問題はもっとも深刻だ。この数十年の間に掘られた井戸の30%以上が、全国基準以上の砒素に汚染されていることがわかった」とユニセフのレポートは書いている。

ユニセフのレポートは、全世界の人口の11%を占めるサハラ以南のアフリカを特に取り上げている。ここでは、人口の約3分の1が、清潔な飲み水を入手することができない。

他方、東アジア/太平洋、中東/北アフリカ、ラテンアメリカ/カリブ海地域の3つの地域では、基礎的衛生に関するMDG達成の途上にある。

しかし、南アジアにおける進歩がもっとも目覚ましい。衛生設備の利用率は、1990年の17%から2004年の37%へと、2倍以上になった。東アジア/太平洋地域では、30%から51%になった。

ユニセフによれば、これらの改善は、インドと中国という世界で最も人口の多い2つの国における進歩によるところが大きいという。しかし、衛生環境の悪さは、いまだにアジア最大の保健問題の一つである。

しかし、ユニセフのレポートは、世界の工業先進国の保健状況はよいと述べている。これらの国々では、水と衛生に関してはほぼ普遍的に利用することができる。

しかし、かつて共産主義国家だった東ヨーロッパ諸国では、水・衛生インフラの整備・改善の必要性がいまだに高い。「また、すべての工業先進国では、老朽化しつつあるインフラ更新という非常に大きな課題に直面している。多くの場合において、これらの改修が長らく待たれているところである」。(原文へ

翻訳=INPS Japan浅霧勝浩

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