ニュース米国と北朝鮮政府、核問題で2005年の合意を再確認

米国と北朝鮮政府、核問題で2005年の合意を再確認

【ワシントンIPS=エリ・クリフトン】

米国のスティーブン・ボズワース北朝鮮問題特別大使は、12月10日、「3日間に亘った今回の訪朝では、北朝鮮の非核化を目指した多国間協議への復帰の約束を取り付けることができなかった。」と語った。ただし、朝鮮民主主義人民共和国が経済支援などの見返りと引き換えに自国の核開発を中止することを約束した2005年の共同声明については、米朝両国が再確認した。 

ボズワース大使は、ソウルで開いた記者会見において、「バラク・オバマ大統領が明確にしたように、米国は、北朝鮮に別の将来をもたらすために、地域の同盟国やパートナーと協力する用意がある。北朝鮮がこの将来を実現する道筋は、6カ国協議において対話のドアを開くことであり、朝鮮半島非核化のための不可逆的な措置をとることである。」と述べた。 

北朝鮮は、国連安全保障理事会が北朝鮮による核実験への非難決議を出した後、6カ国協議(米国、中国、韓国、ロシア、日本、北朝鮮)から抜けて、米国との二国間協議を求めていた。

 ビル・クリントン元米大統領が8月に北朝鮮を訪問して、中国から越境して北朝鮮に入国したとして3月以降身柄を拘留されていた米国人ジャーナリスト2名を救出した以外は、4月以降めだった成果は見られない。 

ボズワース大使は用心深く、今回の協議は「あくまで今後に向けてのもの」であり、「交渉の必要性に関する『共通の理解』を打ち立てるためのものだった。」と述べた。しかし、そうならば、6カ国協議の他の当事者との協議が必要となってくるだろう。 

北朝鮮政府はオバマ政権との直接交渉に熱心であり、中国当局は、米朝接触は北朝鮮が6カ国協議に復帰する条件のひとつだとしていた。 

ボズワース大使は金正日総書記と会わなかったが、姜錫柱(カン・ソクチュ)第一外務次官、金桂寛(キム・ゲグァン)核問題上級大使とは面談している。 

ボズワース大使は、「今回の会談で、経済支援と引き換えに北朝鮮が核開発を放棄することを約した2005年の共同声明を再確認すべきとの『共通の理解』に達した。」と語った。 

ヘンリー・L・スチムソン・センターの朝鮮専門家で元国務省高官であるアラン・ロンバーグ氏は、「6カ国協議への復帰は米朝協議の成果いかんにかかっているとの北朝鮮の立場を慮ったような内容をボズワース大使の発言に見出すことはできない。今後それがどう定義されるかが、非常に重要になる。」と語った。 

さらにロンバーグ氏は、「ある意味でさらに興味深いことは、北朝鮮がかつて死んだ文書だと述べ、そうした約束は無効だとしていた2005年の共同声明の必要性と重要性に関して両国が共通の理解に達したという事実であり、しかも、極めて重要な時期にそういう合意を行ったという点だ。少なくとも、米朝両国は、和解不可能な立場からは後退したようだ。しかし、この時点で、両国がどれほど柔軟に立場を変えうるのかは未知数だ。」と語った。 

確かに、北朝鮮を6カ国協議に復帰させることはできなかったかもしれないが、2005年の共同声明を再確認したことは、北朝鮮がさまざまな見返りを受けて核開発を放棄する可能性を検討する意思があることを示している。 

それでもなお、ボズワース大使は、「ひとたび6カ国協議が再開され、北朝鮮の核放棄に向けて『相当の見通しが得られる』ならば、米国は、経済支援や、朝鮮戦争の公的終結のための平和条約、関係正常化、安全の保証など、2005年の共同声明に言及された見返りについて議論する用意がある。」と強調した。 

ブルッキングス研究所北東アジア政策研究センター所長のリチャード・C・ブッシュ3世は、「この行き詰まりを打開するひとつの前提条件は、米韓、米中、米日間にくさびを打ち込むことや米国から譲歩を引き出すことは無理だということを北朝鮮が認識することだろう。この私的立場は、同時に公的立場でもある。これは、我々の立場を強化するための重要な第一歩だ。」と語った。 

北朝鮮を6カ国協議に復帰させるという動きの前途は多難だ。しかし、国連は、北朝鮮の秋の収穫は貧弱なものであり再び食糧難に直面する可能性があると報告していることから、北朝鮮が支援を求めて2009年初頭の時期より協議への復帰により積極的になるかもしれないとの見方も出てきた。 

しかし、今回米国は、支援の条件は北朝鮮が6カ国協議に復帰し、核開発放棄という約束を破らないことと明言してきた。 

ある米国政府高官は、12月7日、「我々は当初から、これは6カ国協議の全当事者が合意していることだと明言してきた。つまり、北朝鮮が以前の約束に単純に戻るだけのことに対して見返りは与えないこということだ。以前にも北朝鮮のこうしたやり方を見てきが、それはむしろ全体の目標達成にとっては逆効果であることが明らかになっている。従って、彼らが交渉に復帰してはじめて、非核化に進んだ際に可能となるものを追求しうる立場に立てるということであって、それ以外に誘引や見返りを与えるつもりはない。」と語った。 

ボズワース大使は、日本・中国・ロシアなど他の6カ国協議の当事国を今後数日の間に訪問し、協議の行く末について議論する予定だ。(原文へ) 
 
翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

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