【メルボルンLondon Post=マジッド・カーン博士】
オーストラリア(豪州)の米国および中国との貿易関係は、同国の経済繁栄にとって極めて重要である。米国と中国は、豪州の最大級の貿易相手国であり、輸出入の動向を大きく左右している。
豪州経済は国際貿易に大きく依存しており、米国と中国がその貿易量の大部分を占めている。中国は依然として豪州の最大の貿易相手国であり、米国は重要な同盟国であると同時に、投資と技術の主要な供給源でもある。2024年から25年の会計年度では、地政学的緊張、パンデミック後の経済回復、トランプ政権の保護主義政策の影響といった要因により、世界の貿易動向に大きな変化が見られた。
豪州と中国の貿易
中国は依然として豪州の貿易において主導的な役割を果たしており、2024年から25年の会計年度には、豪州の総貿易額の約28%を占めた。豪中間の総貿易額は2,850億豪ドルに達し、豪州から中国への輸出額は1,950豪ドル、輸入額は900億豪ドルだった。豪州の中国向け輸出は依然として天然資源に大きく依存しており、鉄鉱石、石炭、天然ガスが輸出総額の75%以上を占めている。特に鉄鉱石は1,200億豪ドルを占め、二国間貿易における重要性が際立っている。
地政学的緊張が続く中でも、豪州の天然資源への中国の需要によって貿易量は堅調に推移している。ただし、豪州は輸出市場の多様化に力を入れており、東南アジアやインドへの注力が強まっている。2024年から25年の会計年度には、大麦やワインといった豪州産農産品の中国向け輸出が部分的に回復し、貿易制限の一部が緩和された。
豪州と米国の貿易
米国は依然として豪州の第2の貿易相手国であり、外国直接投資(FDI)の重要な供給源でもある。2024年から25年の会計年度には、豪州と米国の総貿易額は約850億豪ドルに達し、豪州から米国への輸出額は270億豪ドル、輸入額は580億豪ドルだった。豪州の主な対米輸出品には、牛肉、アルコール飲料、機械類が含まれ、米国からの主な輸入品は航空機、医療機器、医薬品が占めている。
米国は引き続き豪州の最大のFDI供給国であり、鉱業、技術、金融セクターへの投資額は1.2兆豪ドルを超えている。豪州・米国自由貿易協定(AUSFTA)は、二国間貿易関係の基盤であり、円滑な貿易および投資フローを促進している。
トランプ政権の保護貿易政策の影響

トランプ政権の「アメリカ・ファースト」政策は、関税の引き上げ、貿易障壁の増加、貿易赤字の削減に焦点を当て、世界の貿易動向に大きな影響を与えた。主な施策には、中国製品への関税導入、貿易協定の再交渉、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)からの離脱などが含まれていた。これらの政策は豪州の貿易関係にも波及効果をもたらした。
- 豪州・中国貿易への影響:
トランプ政権の対中貿易戦争は、豪州にとって課題と機会の両方をもたらした。中国の対米報復関税によって、豪州産農産物への需要が一時的に増加したものの、その後の地政学的緊張の高まりにより、豪州産品への貿易制限が発動された。しかし、2024年から25年の会計年度では、貿易関係の部分的な正常化が見られ、いくつかの制限が緩和された。 - 豪州・米国貿易への影響:
トランプ政権の保護貿易政策は、豪州・米国間の貿易にも複雑な影響を与えた。AUSFTAは安定した枠組みを提供していたものの、トランプ政権下での世界貿易の不透明感は、投資および貿易行動に慎重さをもたらした。しかし、バイデン政権下では、同盟関係の再構築と自由貿易の促進に注力したことで、2024年から25年の会計年度には貿易および投資フローが再び活発化している。
今後の豪州・中国および米国との貿易展望
- 豪州・中国貿易の展望:
今後も中国のインフラ開発や産業成長による豪州の資源需要は強いと予測される。ただし、豪州は依存度を減らすために輸出市場の多様化を引き続き推進していくとみられる。中国と豪州が加盟する地域包括的経済連携(RCEP)は、貿易拡大の新たな機会を提供する可能性がある。また、豪州が注力している再生可能エネルギーやリチウム・レアアースなどの重要鉱物の分野では、中国のグリーンエネルギー政策との協力の余地がある。 - 豪州・米国貿易の展望:
米国は引き続き豪州にとって重要なパートナーであり、特に技術、防衛、投資分野での関係強化が期待されている。バイデン政権の同盟関係強化と自由貿易推進の方針は、二国間関係をさらに強化するだろう。米国がサプライチェーンの強靭性や重要鉱物の確保に注力する中、豪州の豊富な資源は引き続き注目される。また、AUKUS(豪州、米国、英国の安全保障パートナーシップ)は、豪州・米国関係の戦略的重要性を強調しており、経済協力の強化につながる可能性がある。 - 地政学的考慮事項:
今後も続く米中対立は、豪州の貿易動向に大きな影響を与えるだろう。豪州が米中双方とのバランスの取れた関係を維持する能力は、今後の貿易関係の鍵となる。中国は依然として豪州にとって欠かせない経済パートナーであるが、戦略・安全保障面での米国との提携強化は、貿易および投資のさらなる多様化を促進する可能性がある。
結論
豪州の米国および中国との貿易関係は、同国の経済成功に欠かせないものである。中国は主に天然資源の輸出市場として豪州の貿易を支配している一方で、米国は投資や技術分野での重要なパートナーである。
今後、豪州が米中間の複雑な関係を巧みに乗り切り、貿易ポートフォリオを多様化し、新たな機会を活かすことが、両国との貿易関係の将来の軌道を決定するだろう。世界の貿易動向が進化し続ける中、豪州は経済パートナーシップを強化しつつ、自国の国益を守るために機敏かつ積極的に対応していく必要がある。(原文へ)
INPS Japan/London Post
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