地域アジア・太平洋|アスタナ国際フォーラム|メキシコの創意工夫が高付加価値化のカギとなるカザフスタン(ギエルモ・アヤラ・アラニスユーラシア研究グループレポーター)

|アスタナ国際フォーラム|メキシコの創意工夫が高付加価値化のカギとなるカザフスタン(ギエルモ・アヤラ・アラニスユーラシア研究グループレポーター)

【アスタナINPS Japan/GESE=ギエルモ・アヤラ・アラニス】

ギエルモ・アヤラ・アラニス記者

「2022年初頭に起きた騒擾や、ロシアとウクライナの地域紛争などの緊張状態から巧みに脱してきたカザフスタン政府の能力は、カシム=ジョマルト・トカエフ大統領の経験と優れたリーダーシップの賜物です。」と、メキシコのホセ・ルイス・マルチネス駐トルコ大使(カザフスタン兼任)は語った。

6月8日から9日にかけてカザフスタンの首都で開催されたアスタナ国際フォーラムに参加したマルチネス大使は、「カザフスタンと中央アジア地域の安定に寄与できる経験と才覚の多くは、トカエフ大統領が外相として同国の外交を牽引した時期(2002年~07年)に育んだものです。」と語った。

「トカエフ大統領の経験は、中央アジア地域の平和と安定を確保する上で大いに役立っています。カザフスタンは、この地域をまとめる最も安定した地域大国であり、我が国(メキシコ)がカザフスタンに近く大使館を新たに設置するのは素晴らしいことだと考えています。」(ホセ・ルイス・マルチネス駐トルコ大使(カザフスタン兼任)

マルチネス大使は、ユーラシア研究グループ(GESE)のギエルモ・アラヤ記者の取材に対して、「今年下半期に予定されているメキシコ大使館の開設が、カザフスタンをメキシコを恒常的に結び続ける機会となり、そこではメキシコ人の経験が協力メカニズムを開く大きな可能性を秘めている。」と強調した。

アスタナ国際フォーラムでのインタビューに答える、メキシコのホセ・ルイス・マルチネス駐トルコ大使(カザフスタン兼任)撮影:ギレルモ・アラヤ・アラニス
Flags of Kazalhstan and Mexico

「これにより、あらゆる分野でのグローバルなコミュニケーションが可能になるでしょう。とりわけ今日の世界情勢を鑑みれば、(カザフスタンが設立を主導した)中央アジア非核地帯と、(メキシコのノーベル平和賞受賞者、アルフォンソ・ガルシア・ロブレス氏が設立に寄与した)ラテンアメリカ及びカリブ海地域非核地帯の重要性が増しています。両非核地帯創設の経緯や有効性などについて両国は非核・軍縮を進めていくための協力を一層模索していくべきです。」と、マルチネス大使は語った。

 マルチネス大使はまた、トルコでトウモロコシ粉製品を販売しているグルマ社のように、現在この地域にメキシコ企業が存在することを指摘した。「中央アジア市場は、既にこの地域に進出しているメキシコ企業にとっても、これから市場拡大を目指すメキシコ企業にとっても、非常に重要になる可能性があります。」と語った。

大使は、カザフスタンには約15人のメキシコ人が暮らしていると語った。「首都アスタナとカザフスタン最大の人口を誇る都市アルマトイの2つの主要都市に暮らしており、職業は医師、アスタナ・オペラで活躍するダンサー、スペイン語の教師などです。彼らは、言葉や習慣、メキシコからの距離といった壁を取り払い、能力を発揮しています。」

ボルサ研究所(BIVA)のコミュニケーション部長であり、アスタナ国際フォーラムの分科会「創造的な経済:持続的かつ包摂的な成長の促進」でモデレータを務めたサルバドール・レアル氏は、「中央アジア・ユーラシアにおける経済大国として発展を目指すカザフスタンにとって、経済のさまざまな分野でメキシコが蓄積した経験は貴重なものだ。」と語った。

アスタナ国際フォーラムで語るBIVAのコミュニケーションディレクター、サルバドール・レアル氏 撮影:ギレルモ・アラヤ・アラニス
“カザフスタンは、ソフトパワー、音楽、文化、芸術分野、アイデアの面でメキシコから学ぶべきことが多い。メキシコは文化大国です。” (サルバドール・レアルBIVAコミュニケーション部長)

GESEは在メキシコ・カザフスタン大使館のオルジャス・イサべコフ臨時代理大使の招待でアスタナ国際フォーラムを取材した。レアル氏は、「両国には経済全般で大いに協力を拡大する機会がある。」と強調した。

“カザフスタンはビジネスチャンスを求めて全力を尽くしています... メキシコには提供できるものがたくさんある。例えば農業部門が思い浮かびます。メキシコの農産物には非常に多くの需要があり、気候の問題を考慮してもカザフスタンの需要に応じた協力が可能です。” (サルバドール・レアルBIVAコミュニケーション部長)
Political Map of the Caucasus and Central Asia/ Public Domain
Political Map of the Caucasus and Central Asia/ Public Domain

「また、一帯一路構想に関連して、物流の重要な拠点であるカザフスタン領内で大規模に建設が進められている高速道路などのインフラにもメキシコが協力できる機会があるかもしれません。また、メキシコが自らの経験を活用する方法に精通している観光業や電気通信の分野でも、メキシコとカザフスタンの間で協力する可能性があります。」

分科会「創造的経済:持続的かつ包摂的な成長の促進」に参加したカザフスタンのアリベク・クアンティロフ経済大臣は、「この国にとって、国民の10人中3人、つまり、人口の 30% が子供であることから、創造性の発達を奨励することが非常に重要であり、問題に直面した時に解決策を考えたり、工夫したりするノウハウに関しては、おそらくメキシコの子供たちの経験が参考になるだろう。」と語った。

ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのスペイン人教授であるアンドレス・ロドリゲス=ポゼ氏は、「カザフスタンは大規模な市場である中国や欧州連合とのダイナミックな連携を実現するため、自国の領土が戦略的な位置にあることをうまく活かしています。また、自然資源を有効に活用して、1991年の独立時には想像もつかなかったレベルの成長と発展を遂げました。」と語った。

ポゼ教授はまた、「カザフスタン市場は魅力的で安定しており、特にクリーンエネルギーへの転換を目指すエネルギー分野では多くのビジネスチャンスがあるため、イベロアメリカ諸国は投資の機会を逃してはならない。」と強調した。

インタビューに答えるアンドレス・ロドリゲス=ポゼ教授 撮影:ギレルモ・アラヤ・アラニス
“カザフスタンは非常に大きな潜在能力を持つ市場であり、新興市場です。経済成長が低迷しているイベロアメリカ諸国は成長機会がある市場に目を向け、それを利用する必要があります。ここには多くの機会があります。”(アンドレス・ロドリゲス=ポゼ ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス教授)

ポゼ教授は、米州銀行、アフリカ開発銀行、アジア開発銀行など、さまざまな開発銀行で勤務した経験を持つエコノミストである。2000年初頭からアジア市場に精通し、2021年からはカザフスタン問題に取り組んでいる。教授は、イベロアメリカ人の創造力がカザフスタンの日常生活にますます広がる可能性を否定していない。(原文へ

マルチネス駐トルコ大使(カザフスタン兼任)とBIVAのレアルコミュニケーションディレクター 撮影:ギレルモ・アラヤ・アラニス
セメイの平和記念公園でレポートするギレルモ・アラヤ記者

* ギエルモ・アヤラ・アラニスはメキシコのジャーナリスト・テレビレポーター。メキシコ国立自治大学(UAM)ソチミルコ校では核軍縮を研究、国際関係学の修士号を取得。カザフスタンには、2019年に国際プレスチームのメンバーとしてセミパラチンスク旧核実験場とセメイ、アスタナでは「ナザルバエフ賞」を取材した。「アスタナ国際フォーラム」には、ユーラシア研究グループのレポーターとして取材。

INPS Japan/GESE

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