SDGsGoal13(気候変動に具体的な対策を)信仰指導者ら、COP30で化石燃料不拡散条約への支持を表明

信仰指導者ら、COP30で化石燃料不拡散条約への支持を表明

COP30 IPS
COP30 IPS
気候変動の原因の86%を化石燃料が占めているにもかかわらず、COP文書に“化石燃料”という言葉が盛り込まれるまでに、実に28年を要した。その不条理さは、アルコホーリクス・アノニマス(AA)が28年間も会議を続けながら、“アルコール”という言葉を最終文書に書き込む勇気を持てなかったようなものだ。

ブラジル・ベレンIPS=ジョイス・チンビ

数十年前、アメリカ合衆国の中心にあるオハイオ州クリーブランドで、一人の少女が生まれた。公民権運動の象徴マーティン・ルーサー・キング牧師の故郷でもあるアメリカ南部の“祖先の土地”を後にして、母親はよりよい経済的機会を求め北へと向かった。

Rev. Dr Angelique Walker-Smith, regional president of the World Council of Churches, speaks at an event titled ‘Faith for Fossil Free Future.’ Credit: IPS
Rev. Dr Angelique Walker-Smith, regional president of the World Council of Churches, speaks at an event titled ‘Faith for Fossil Free Future.’ Credit: IPS

「母はクリーブランドの東側にたどり着きました。そこは、今も昔も、私のような人々が暮らし、そして人種やジェンダーに基づく不公正な政策にさらされ続けている地域です」と、世界教会協議会(WCC)の地域会長の一人であるエンジェリク・ウォーカー=スミス牧師は語った。

そこで母娘が直面したのは、さらに深刻な現実だった。
「母も私も、息ができなかったのです。」

化石燃料に支えられた都市化の波は、母が移り住んだクリーブランドにも押し寄せ、その影響は今も続いている。これは、アフリカ系住民600万人以上が南部を離れた“グレート・マイグレーション”の最中のことだった。

「北部に来て初めてわかったことは、“息ができない”という現実だったのです。」

WCCは、105か国以上にまたがる350超の国内教会と、3億5000万人を超える信徒を代表する組織である。地域会長の一人であるウォーカー=スミス氏は、化石燃料不拡散条約への支持は「不正義に抗し、人々の生命と豊かな未来を守る取り組みだ」と強調する。「私たちは、化石燃料から生命を育む再生可能エネルギーへの転換を支持しています。」

Kumi Naidoo
Kumi Naidoo

南アフリカ出身の人権・環境正義活動家で、化石燃料不拡散条約のプレジデントを務めるクミ・ナイドゥ氏は、世界が再生可能エネルギーに移行すると言いながら、この30年はむしろ逆方向に進んできたと指摘する。

「家に帰って浴室の水漏れに気づいたら、まず床を拭くでしょう。でも、蛇口が開いたままで、排水口に栓がしてあると分かったら、どうしますか? 当然、蛇口を閉め、栓を抜きます。

この30年、科学が“エネルギーシステムを変えなければならない”と警告してからも、私たちがやってきたのは床を拭くことだけだったのです。」

「化石燃料―石油・石炭・ガスが気候変動の原因の86%を占めているのなら、まずは蛇口を閉める必要がある。」

The Golden Rule
The Golden Rule

ナイドゥ氏は、創価学会インタナショナル(SGI)、ラウダート・シ運動、宗教環境団体グリーンフェイス(国際団体)、英国内のユダヤ教環境団体エコジュダイズムなどが共催したサイドイベント「Faith for Fossil Free Future」で訴えた。

アマゾンの目の前で開催されるCOPでありながら、同地域では依然として化石燃料の掘削免許が発給され続けているという矛盾も指摘した。

「COPで最大の代表団は開催国でもブラジルでもありません。参加者25人に1人が化石燃料業界の関係者なのです。これは、アルコホーリクス・アノニマス(AA)(=アルコール依存症者の自助グループ)の年次大会に、アルコール業界が最大の代表団として参加しているようなものです。」

さまざまな信仰・思想のコミュニティが、化石燃料の迅速な段階的廃止、再生可能エネルギーの大幅かつ公平な拡大、そしてそのための資源確保を求めて声を上げている。鍵となるのが化石燃料不拡散条約である。

「救いを必要としているのは地球ではありません。今の道を進み続ければ、土壌は荒廃し、水も失われ、暑熱で作物さえ育たなくなる。消えてしまうのは私たち人類のほうです。地球はその後も存続し、もし私たちが絶滅すれば、森は再び生い茂り、海も回復するのです。」

提案されている条約は、新たな化石燃料の探査や開発拡大を止め、既存の石炭・石油・ガスの生産も、公正かつ公平な形で段階的に廃止するための国際的な合意を目指すものだ。パリ協定を補完し、供給側に直接踏み込む法的枠組みの構築を狙っている。

支援の輪は各国や都市、さまざまな機関、科学者、活動家へと広がり、宗教界の支持も強い。

日蓮仏法を実践する世界192か国・地域のコミュニティからなる創価学会インタナショナルの横山正博氏は、信仰とエネルギー移行の交差点について語った。

「公正な移行は、信仰を持つ若者たちが変革の原動力となり得ることを示しています。」
「化石燃料不拡散条約は、化石燃料の段階的廃止だけでなく、倫理的枠組みそのものです。」
「人々の生計と尊厳を守りつつ、環境や地域経済との調和を図りながら前進する道筋です。公正な移行は技術論ではなく、倫理・包摂・連帯の問題なのです。」

Masahiro Yokoyama was speaking at an event titled Faith for a Fossil-Free Future co-sponsored by Soka Gakkai International. Credit: Joyce Chimbi/IPS
Masahiro Yokoyama was speaking at an event titled Faith for a Fossil-Free Future co-sponsored by Soka Gakkai International. Credit: Joyce Chimbi/IPS

最大の課題は、現在の環境状況の中で、この条約をどう実施していくかだ。

「この道筋には先例があります。私たちはCOPでも国連システムの中でも交渉しませんでした。地雷禁止条約がその例です」とナイドゥ氏は語る。

地雷禁止条約は、44か国が国連の枠外で交渉し、その後に国連総会で採択された。

「“強力な化石燃料輸出国は署名しないのではないか”という疑問も当然あります。しかし、この問いにも地雷禁止条約が答えています。今日に至るまで、米国、ロシア、中国は同条約に署名していません。それでも、条約が発効した瞬間、“ビジネス・アズ・ユージュアル”の社会的正当性は失われ、状況は大きく変わったのです。」(原文へ

This article is brought to you by IPS Noram in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International in consultative status with ECOSOC.

INPS Japan

関連記事:

|視点|平和のためにも、化石燃料に関する新条約を(相島智彦SGI平和運動局長、シャヒン・アシュラフ イスラミック・リリーフグローバル・アドボカシー部門責任者)

アマゾンの心臓部で―COP30と地球の運命

米国、高官派遣を見送りCOP30に不在

最新情報

中央アジア地域会議(カザフスタン)

アジア太平洋女性連盟(FAWA)日本大会

2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会 

パートナー

client-image
client-image
client-image
client-image
Toda Peace Institute
IPS Logo
The Nepali Times
London Post News
ATN

書籍紹介

client-image
client-image
seijikanojoken