SDGsGoal13(気候変動に具体的な対策を)グローバルな危機、ローカルな解決策

グローバルな危機、ローカルな解決策

この記事は、ネパーリ・タイムズ(The Nepali Times)が配信したもので、同通信社の許可を得て転載しています。

【カトマンズNepali Times=ソニア・アワレ】

グラスゴーでの会議(COP26)から 1 年、世界各国政府はエジプトのシャルム・エル・シェイクで再び会議を開き、地球規模の気候破壊を回避するための緊急措置を協議した。

この1年の間に、さまざまなことが起こった。記録的な熱波が北米、欧州、南アジア、中国を襲った。ツンドラ地帯では山火事が発生し、パキスタンでは前例のない洪水が起こり、嵐は海岸線を荒廃させた。科学者が2040年代に起こると言っていた極端な気象現象は、既に起こっている。

シャルム・エル・シェイクで開催された国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)の最中、北インドでは作物の残滓を燃やす煙が立ちこめ、ヒマラヤの氷河に向かって吹き上げられ、氷河の融解を加速している。ネパールでは季節外れのモンスーン後豪雨が発生し、地滑りや土石流で100人もの死者が出ている。

COP27 に向けて、多くの科学的報告がなされ、それぞれが警鐘を鳴らすものとなっている。気候否定論にもかかわらず、私たちが既に気候の緊急事態に陥っていることは間違いない。何をすべきか考え始めるには遅すぎる。2050 年までに世界の平均気温を産業革命前と比較して1.5 度以内に抑えるためには、排出量を削減しなければならないのだ。

Emissions Gap Report 2022/ UNEP
Emissions Gap Report 2022/ UNEP

11月に発表された国連環境計画(UNEP)の「エミッション・ギャップ・レポート2022」は、自らを「地球規模の気候危機に対する不十分な行動の証」と呼び、今後8年間で年間の温室効果ガス(GHG)排出量を45%削減し、その後も急速に減少を続けることが必要となる1.5℃への信頼できる道筋を求めている。

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)第6次評価報告書では、科学者たちはさらに黙示録的な予測をしている。2041年から2100年の間に1.5℃の上昇に抑えたとしても、自然界に存在する陸生種の最大14%が非常に高い絶滅のリスクに直面する可能性がある。3℃の上昇であれば、29%の種がなくなり、現在のペースで温室効果ガスが大気中に送り込まれ続け、世界の平均気温が5℃上昇すれば、全動植物種の半分が絶滅するという。

IPCCは、極端な気象現象の頻度と強度の増加により、生態系、人々、居住地、インフラに広範な影響が及ぶと警告している。心配なのは、これが予測ではなく、すでに起こっているということだ。

IPCCは世界の山岳地帯の章において、氷河の後退が加速し、永久凍土の融解が進み、氷河湖の数と大きさが増加すると述べている。植物や病原菌は高地へ移動する。

ヒマラヤとチベット高原は、北極と南極を除けば最大の凍結水の貯蔵庫であり、アジアの下流では12億人もの人々がそこを源流とする河川に依存している。IPCCは、水循環の乱れは農業に影響を与え、地滑りや洪水の危険を増大させるとしている。

ネパールが何を燃やそうが、燃やさまいが、どれだけ燃やそうが、地球には大きな影響を与えないだろう。しかし、それはネパールの経済的な存続を左右する。連邦選挙後、ネパールの新政府は、石油の輸入を減らし、貿易赤字を減らし、大気汚染を軽減するために、断固とした措置をとることが必要である。

エジプトで開催されるCOP27国連気候サミットの直後、ネパールでは11月20日に連邦選挙と州選挙が行われた。

各政党の選挙マニフェストでは、再び壮大な公約が掲げられていたが、再生可能エネルギーへの転換は主要な優先事項とはなっていなかった。化石燃料の使用削減は、どの政党も選挙のスローガンにはしていない。

それでも、環境保護主義者やエネルギーの専門家は、今回の投票は、再生可能エネルギーへの転換、大気汚染の低減による公衆衛生の保護、固形廃棄物の管理など、本物で現実的な公約を掲げる指導者を選出する機会であるとしていた。

カトマンズにあるAvni Center for Sustainabilityの気候活動家、シルシア・アチャルヤ氏は、「気候危機に対する私たちの姿勢は、国際的な場で高尚な公約を掲げることに限られており、国内では実施面で示すものがあまりありません。気候変動が政治の表舞台に立つためには、ゆっくりと進行する災害の重要性を理解し、内面化している指導者が必要です。しかし、彼らは個人的な利益しか考えていません。解決策を実行する候補者に投票するのは、私たち市民にかかっているのです。」と語った。

確かに、気候危機は世界的なものだが、解決策は地域的なものである。ネパールの大量輸送手段の電気化と、LPGに代わる家庭の電化は、国際的な資金を必要としない手が届く施策である。

確かにネパール議会(NC)は、今後5年間で電気自動車の普及率を50%に引き上げることを約束している。シェール・バハドゥル・デウバ首相は昨年のグラスゴーのCOP26で、2045年までにネパールをカーボンニュートラルにすると約束したが、現在の政策では実現できない。

ネパールの自動車の10%をバッテリー駆動に切り替えるだけで、少なくとも年間210億ルピーの石油輸入を削減できる。ネパールの貿易赤字を減らすためには、ネパールの二酸化炭素排出量を減らすことが必要であり、気候変動への貢献はおまけのようなものであることは明らかだ。

NOC

ネパールでは、高級車が禁止されているにもかかわらず、電気自動車(EV)の販売が大幅に伸びている。この3カ月間だけで、EVの新車販売台数は705台と、前年同期の5倍に増えた。

しかし、そのほとんどは自家用車である。電気バスはディーゼル車の3倍以上する上、自家用電気自動車や二輪車に適用される税制上の優遇措置もない。これは、2025年までに国内の自家用車の4分の1、バスの20%を電気自動車にするという政府の方針とは正反対である。

「電気バスは、空気をきれいにし、二酸化炭素の排出を減らし、余剰電力を利用することができます。」と、Sajha Yatayat社のブシャン・トゥダハール氏は語った。同社は既に40台の電気バスのうち3台を導入している。

しかし、逆風が吹いている。電動バスは当初、非常に高価であるため、融資や税金の払い戻しが必要である。また、充電インフラも重要である。「私たちは、公約を具体的な行動に移す必要があるのです。」と、トゥダハール氏は付け加えた。

ネパールでは2008年から、ガソリンやディーゼルを1リットル販売するごとに1.5ルピーの汚染税を徴収している。その累積額は100億ルピー近くになり、電気自動車やクリーンエネルギーへの補助金として利用することができる。同様に、ティクネにある古い車両で朽ち果てた電気トロリーバス集積場は、Sajhaの新しい電動バスの充電ステーションとして簡単に利用できたかもしれない。

書類上、ネパールには将来を見据えた政策があり、世界でもトップクラスにある。2019年国家気候変動政策、2022年固体廃棄物管理政策、2022年森林規則、2022年土地利用規則のすべてが、気候変動の影響に適応するための国の必要性に対処している。

Photo: AJAY NARSINGH RANA

しかし、世界銀行が最近のネパール向け国土開発報告書で指摘しているように、「この改革アジェンダの実施と投資の優先順位付けは初期段階である。」さらに、気候変動と開発の利益を最大化するためには、公共支出の優先順位付けと効率化を強化することが必要である。』と述べている。

ネパールの平均気温は、中程度の排出経路のもとで、2016年から2045年の間に0.9℃上昇すると予想される。これは、冬はより乾燥し、モンスーンはより湿潤になり、降水量が最大で3倍増加する可能性があることを意味している。実際、これはヒマラヤ全域で既に起こっている。

また、洪水、火災、雪崩、干ばつがより深刻化することも警告している。世界銀行の報告書によると、ネパールで毎年洪水の被害を受ける人の数は、今後8年間で2倍の35万人に達する可能性があると予測している。また、気候の影響により、ネパールの経済は7%縮小すると予想されている。

「私たちの排出量削減目標はすべて、現地での積極的な取り組みにかかっています。本気で取り組めば、今後5年でネットゼロを達成できるのに、なぜ2045年まで待つのか」と環境保護活動家のアチャリヤ氏は問いかけた。「このままでは、2060年まで約束しても、カーボンニュートラルになることはないでしょう。」

COP 27
COP 27

シャルムエルシェイクで開催された今年の気候変動会議は、「インプリメンテーションCOP」と呼ばれている。パリ協定の下での194の締約国の気候に関する誓約を合わせると、2100年までに世界は最大でも約2.4℃の温暖化に向かう可能性があり、1.5℃に抑え、さらなる破滅的な結果を防ぐにはほど遠いことを考えると、今年の議論での優先事項の一つは緩和プログラムを設計することであろう。

国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の後発開発途上国 (LDC)支援グループのアドバイザーであるマンジート・ダカル氏は、この会議でネパールが優先すべきことは、G20諸国による損失損害基金や適応支援へのロビー活動であると語った。

「ウクライナ危機とパンデミックにより国際社会は気候資金の資金調達に消極的になっているため、ますます待っていられない。私たちはすぐにでも気候変動に適応して命を救うだけでなく、ゆっくりと進行する災害にも備えなければならないのです。」と、ダカール氏は、ネパーリ・タイムズ紙に語った。

「目標達成にはほど遠い状況ですが、初めて排出量の削減が確認され、それがどんなに小さくても、こうしたロビー活動や気候会議に価値があるのです」と彼は付け加えた。

ネパールのように気候変動に脆弱な国にとって、国際的な気候変動対策の場でのロビー活動は重要だ。しかし、実行は地元で行わなければならない。代表団が帰国してからが、本当の仕事の始まりなのだ。

この冬、ネパールの悪名高い都市公害を軽減することは、その手始めになるかもしれない。カトマンズ市長が望めば、市民を動員し、啓発キャンペーンや適切なゴミ収集サービスを通じて、少なくともこの冬はゴミの焼却を中止させることができるはずだ。足りないのは政治的な意思だけである。」(原文へ

INPS Japan

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