【ハラレ(ジンバブエ)IDN=ジェフリー・モヨ】
ジンバブエの首都ハラレの中級郊外地ブルーミングデールの住宅裏手にある所有者のない土地で、経済的苦境に耐えている都市住民たちが裏庭での耕作を始め、トウモロコシなどの野菜畑ができている。
ザンビアでは、昨年終わりを告げたエドガー・ルング政権下での経済危機から脱しつつあるが、それでもなお数多くの都市住民が収入を補うために農業を始めている。
ジンバブエの東に接するモザンビークでも同じことが起きており、国中の町や都市で空いた土地を見つける競争が起こっている。
ジンバブエの北にあるマラウィでも、これに負けじと都市農業がひとつの生活様式となりつつある。
実際、アフリカ南部の人々の多くがインフレと食料不足に悩む中、多くの都市住民が裏庭での耕作に切り替えている。
地域全体で企業倒産の報道があふれており、多くの都市住民の生活は苦境に陥っている。そうした人々の一部では、裏庭での耕作がひとつの選択肢に入ってきている。
ハラレでは、人口密度の高い郊外地区ムファコセのリビアス・ゴノ(63)のような都市農民が、裏庭で採れたトウモロコシの袋を自身の出身地であるムベレングワ村で食料不足に悩む親戚に送っている。
ムベレングワはミッドランド県の農村地帯にある村である。
ゴノの親戚を含むムベレングワの村人たちは、気候変動の影響のために毎年のように飢餓に見舞われている。
「常に干ばつに襲われている私の村の親戚に採れたトウモロコシのほとんどを送っている。」とゴノはIDNの取材に対して語った。
ジンバブエでは失業率が90%にも及び、都市住民ですらも飢えから逃れることができず、その多くが裏庭耕作を始めるようになっている。
「ジンバブエ脆弱性評価委員会」(ZimVAC)によると、昨年、ジンバブエの都市部で240万人が基本的な食料ニーズを満たすことができず、飢えに陥っている。同委員会は、行政、開発パートナー、国連、非政府組織の代表から構成される技術諮問委員会である。
また、年率269%というインフレもジンバブエの都市住民を打ちのめしている。
ザンビアでは、昨年ハカインデ・ヒチレマ大統領が就任してインフレが抑制されたとはいえ、都市住民は依然として裏庭耕作を行わねばならない状態にある。
首都ルサカの中心部に住む5人の子どもを持つ47歳の未亡人、ローラ・フィリのように、家族の食生活を補うために野菜を栽培することを大切にしている人は多い。
「仕事がないから、私がこうでもしないと子どもたちは飢えてしまう。」とフィリはIDNの取材に対して語った。
フィリは、裏庭で野菜を育てることで、毎月の支払いに充てる収入を得ることができる。
「野菜を売ることで毎月3000ザンビア・クワチャ(約180米ドル)の収入があって、これで新たな人生の一歩を踏み出すことができる。」とフィリは語った。
ジンバブエ第三の都市キトウェのキニアス・バンダ(53)のような数多くの失業者たちが、収入を得るために裏庭で家畜の飼育を始めている。バンダは自宅裏で400羽のニワトリを飼っている。
ジンバブエの失業率は13%である。
しかし、同国の都市部に住む人々が飢餓に苦しんでいるのも事実である。
結果として、世界食糧計画は、ひと月に必要な食費の約半額にあたる400ザンビア・クワチャ(約22米ドル)を都市の低収入世帯に提供している。
人口約1900万人のザンビアでは、貧困が都市生活の基本的な特徴になりつつある。統計によると、430万人の都市住民のうち34%が極度の貧困下にあり、18%が中程度の貧困である。
ザンビアの開発専門家ダニエル・チャンダは、「都市農業は、裏庭で食べられる作物を栽培することで、町や都市の経済的展望を広げるのに役立っている。」と語った。
チャンダはまた、「ザンビアでは都市部での裏庭農業が増加しているため、町や都市で起業活動が活発になっているという。ザンビアで裏庭耕作が広がる中、国内での起業活動も活発化している。」と語った。
マラウィでは、首都リロングウェのルシア・バンダウェ(45)のような多くの人々を都市農業が引き付け、主たる地位を占めつつある。「私が子どものころは都市で野菜を育てている人なんていなかったが、最近では状況が変わって、みんな裏庭で耕作するようになっている。」とバンダウェはIDNの取材に対して語った。
バンダウェによると、マラウィの都市農業は2年前に始まる新型コロナウイルス感染拡大に伴う行動制限によって、さらにその必要性が増しているという。
「マラウィの人々は、室内で過ごす時間が増え、農業に目を向けざるを得なくなっている。」とバンダウェは語った。
コロナウイルスの規制がほぼなくなった現在でも、町や都市での裏庭農業は維持せざるを得ず、マラウィの都市部の人々の生活の一部になっている。
マラウィ・ブランタイアの漁民クンブカニ・ブンブウェ(63)もそうした都市農民のひとりだ。
ブンブウェはIDNに「個人的には、支援が得られれば都市農業は貧困を克服する方法になると思う。多くの人々が仕事を失っているから。」と、語った。
ブンブウェは、市民活動家の中には都市農業への懐疑的な声もあると言う。ジムソン・ブワナリもその一人だ。
「政策決定者は、食料不足や貧困対策として都市農業がどう役に立つのかもっと正確な情報を出すべきだ。一部の人々しかやっていないことでは、なかなか説得力がない。」とブワナリはIDNの取材に対して語った。
モザンビークの主要な緑地帯の一つであるインフルネ渓谷では野菜生産が盛んである。農民はマプト、マトラ両市とコスタ・ド・ソルを隔てるミローズ川を利用し、一部の人々が都市農業を実践している。
モザンビーク政府の統計によると、マプトとその近郊では1万以上の小規模農民が都市農業に従事している。
2020年人間開発指数で189カ国中181位、アフリカ南東部に位置するモザンビークは、低所得で食糧不足の国であり、2800万人の大部分が農村部の居住している。
他方、ナミビアでは、食料自給を強化するための都市農業を農業省が推進しようとしている。
国連は、2050年までに世界の人口の66%が都市に居住することになると推測している。そのような状況では、裏庭耕作が食料ニーズを満たす唯一の方法となるだろう。
ボツワナでは、急速な都市化に伴う経済成長の鈍化に直面し、すでに都市部の自給自足農業や都市周辺部の商業的農業への転換を余儀なくされている人々もいる。
南アフリカのケープタウンでは(およそ34平方キロの)フィリピ地区で小規模の農地が貸与され、人々が食料生産によって収入を得るようになってきている。
エスワティニ(かつてのスワジランド)では都市農業が広まりつつあり、食糧不足を解消する効果があることが知られているが、依然として違法行為とされている。
レソトでは都市間の移住が盛んであり、都市農業は食料不足への特効薬だと考えられている。
実際、レソトは、干ばつや飢え、食料不足に見舞われた国としてアフリカや世界のメディアで頻繁に紹介されている。(原文へ)
INPS Japan
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