【アブダビWAM】
米国とアラブ諸国、パレスチナとイスラエルが終わりなき会合を持ってカメラの前でポーズを取り、高揚感と希望を中東に生み出す光景を、中東の人々はこれまで何度も見てきた。「しかし、残念なことに、こうした会合やカメラ前でのポーズが生んできたものはほとんどない」とアラブ首長国連邦(UAE)の日刊紙『カリージ・タイムズ』は7月20日付で報じた。
米国の中東特使ジョージ・ミッチェル氏が同席してパレスチナとイスラエル、エジプトがカイロで行っている現在の非公式協議もまた、アラブ社会において疑念と冷笑をもって迎えられているのは故なきことではない。パレスチナ・イスラエル関係の長い歴史、イスラエルのパレスチナに対するいたちごっこをみるならば、こうした疑念を否定するのは難しい、と英字紙『カリージ・タイムズ』が同日付の社説で論じている。
オバマ大統領の登場、休止している和平プロセスを再開しようとの彼の努力をみて、パレスチナも、より広範なアラブ・ムスリム社会も、事態が打開されると期待した。しかし、平和に向けたオバマ大統領の大胆な歩みは、イスラエルの頑迷という壁にぶち当たって妨げられてしまったようだ。米国の体制内にはイスラエルへのシンパが多くいて、オバマ批判を強めている。ミッチェル特使がテルアビブやアラブ諸国の首都をいくら訪ね歩いても、事態が進展しないはずだ。ミッチェル特使が中東に戻り、ふたたびパレスチナとイスラエルの間の架け橋になろうとしているエジプトのムバラク大統領と会談を持っているのならば、何らかの具体的で意味ある成果がそこから出てくるのを期待しよう、と『カリージ・タイムズ』は述べる。
「パレスチナのアッバス大統領は、ネタニヤフ首相の前任者であるオルメルト首相と長年にわたって意味のない協議と会合を繰り返してきたが、今回は、成熟した態度と自制を見せている。同大統領は、仮にイスラエル・パレスチナが直接協議を再開しようというのならば、イスラエルが1967年中東戦争以前の両者間の境界線を容認する必要がある、と要求している」。
アラブ連盟のアムレ・ムサ事務局長は、1967年時の境界線と〔それ以降のイスラエルによる〕違法な入植に関するイスラエルからの保証を文書で取り付け、それからパレスチナ・イスラエル両者による交渉に移るべきだ、とパレスチナ指導部に要請している。パレスチナがイスラエルと行ってきた長くて成果のない交渉を考えるならば、これのみが理にかなった要求だといえよう。
1967年時の境界線に戻ることは、イスラエルと米国メディア内のイスラエルシンパにとっては大きな譲歩だと感じられるかもしれないが、実際はそうではない。すべてのパレスチナ人が、現在どこに住んでいようとも、イスラエルが彼らの土地を奪った1948年まで住んでいたふるさとに戻ることをいまだに夢見ているのである。
「1967年の中東戦争以前の現状を受け入れるべしとの提案は、パレスチナにとっては大きな譲歩である。実際、ハマスをはじめとしたパレスチナの多くの党派は、ファタハ(あるいはパレスチナ暫定自治政府)が行ったこの譲歩をまったく認めていない。なぜなら、それはパレスチナの人々に対する裏切りだからだ。したがって、1967年時の境界線を受け入れ、パレスチナの指導部、そしてアラブ世界との最終解決を目指していくことは、イスラエル自身の利益になる。つまり、もしパレスチナ、およびそのアラブの隣人との和平を本気で望むのならば、ということである。これが、現在の混乱から抜け出る唯一の道であり、全員がそのことを認識すべきときなのだ」と同紙は結論付けた。
翻訳/サマリー=IPS Japan
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