INPS Japan/ IPS UN Bureau Report人権抑圧国家が国連人権理事会の議席を獲得へ

人権抑圧国家が国連人権理事会の議席を獲得へ

【ニューヨークIPS=ヒューマン・ライツ・ウォッチ】

エジプトとベトナムが、国連人権理事会の議席を確保しようとしている。だが両国は、その資格を著しく欠いている。国連総会は10月14日、2026年1月から始まる3年任期の理事会メンバーを選出する予定であり、今回の選挙は競争のない形で行われる。

「国連の非競争的な投票は、エジプトやベトナムのような抑圧的な政府を人権理事会に送り込み、理事会を形骸化させかねない。加盟国は、人権侵害を繰り返す政府に、議席を“銀の皿に載せて差し出す”ようなことをやめるべきだ。」と、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)のルイ・シャルボノー国連ディレクターは警鐘を鳴らした。

今回の選挙では14か国が立候補している。エジプト、アンゴラ、モーリシャス、南アフリカがアフリカ4議席を争い、インド、イラク、パキスタン、ベトナムがアジア4議席に立候補している。ベトナムは現在も理事会メンバーで再選を目指す。ラテンアメリカ・カリブ諸国からはチリとエクアドル、西欧グループからはイタリアと英国が、それぞれ2議席を無競争で狙う。中・東欧グループではエストニアとスロベニアが2議席を競う。

2006年に人権理事会を設立した国連総会決議60/251は、投票国に対し、候補国の「人権促進および保護への貢献を考慮するよう」求めている。理事会加盟国には、国内外で「人権の促進と保護において最高水準を維持し、理事会に全面的に協力する」義務がある。しかし、加盟に必要なのは193か国中の単純過半数による秘密投票のみであり、実際には全候補がほぼ確実に当選する見通しだ。

それでもHRWは、明らかに不適格な国に投票すべきではないと訴える。

エジプトとベトナム:抑圧の実態

アブデルファッターフ・アル=シーシ大統領率いるエジプト政府は、平和的な批評家や活動家を体系的に拘束・処罰し、言論の自由を事実上犯罪化している。治安部隊はほぼ完全な不処罰のもとで深刻な人権侵害を行っており、主に平和的な抗議者数百人を殺害し、被拘禁者に対して組織的かつ広範な拷問を加えている。これらの行為は、人道に対する罪に該当する可能性が高い。さらに政府は、自国民がジュネーブの人権理事会と関わることを妨害し、関与した者を報復的に処罰している。国連専門家の訪問要請も無視している。

ベトナムでは共産党が政治権力を独占し、指導部へのいかなる挑戦も認めていない。表現、集会、結社、信教の自由は厳しく制限され、活動家やブロガーは警察による威嚇、嫌がらせ、移動制限、恣意的拘束などに直面している。

他の候補国の問題点

モーリシャスと英国は、チャゴス諸島の主権をモーリシャスに認める条約に署名したが、1965年から1973年にかけてチャゴス人を強制移住させた人道に対する罪や帰還権を未解決のまま放置している。両国は国際人権義務を遵守し、チャゴス人に効果的な救済と補償を提供すべきだ。

アンゴラのジョアン・ロレンソ大統領は人権保護を誓っているが、治安部隊による政治活動家や平和的抗議者への過剰な暴力行使が続いている。南アフリカはパレスチナ問題などで責任追及の姿勢を示しているが、ロシアや中国による人権侵害にも同様に毅然と対応すべきである。

インドのナレンドラ・モディ首相率いる人民党(BJP)政権は、国連専門家の入国を拒否している。モディ氏の政党幹部や支持者は、ムスリムやキリスト教徒を繰り返し中傷・攻撃しているが、当局はしばしばそれを放置し、抗議した側を処罰している。

パキスタンは、反テロ法や扇動罪を用いて平和的批評家を威嚇するのをやめ、冒涜罪を撤廃すべきだ。少数派や社会的弱者への暴力を扇動・実行した者を訴追する必要がある。

UN Secretariate Building. Photo: Katsuhiro Asagiri
UN Secretariate Building. Photo: Katsuhiro Asagiri

イラクでは2024年に同性愛関係やトランスジェンダー表現を犯罪化する法律が制定され、LGBTの人々への暴力と差別が横行している。活動家やジャーナリストへの弾圧も強まっている。

エクアドルでは、ダニエル・ノボア大統領が2024年1月に「国内武装紛争」を宣言して以降、司法の独立が脅かされ、治安部隊による深刻な人権侵害が発生している。

チリではガブリエル・ボリッチ大統領が世界の人権侵害に対し積極的に発言しているが、国内では人種差別や移民への虐待が依然として課題だ。

英国では、パレスチナ支持や気候変動対策を訴える平和的デモ参加者が多数逮捕・投獄され、集会の自由が抑圧されている。

イタリアは、海上救助活動の刑事化や阻止をやめ、リビア当局による難民送還を容認すべきではない。リビアでは送還者が恣意的拘禁や深刻な虐待にさらされている。また、2025年の国際刑事裁判所(ICC)の逮捕状に違反し、容疑者をハーグではなくリビアへ送還したことも問題視されている。

理事会の役割と資金危機

人権理事会は、シリア、ミャンマー、北朝鮮、ロシア、ウクライナ、イスラエル/パレスチナなどの人権侵害を調査してきた。最近では、アフガニスタンのすべての当事者による重大犯罪を調査する任務を設置し、スーダンの実態調査団の任期も延長した。

しかし、まだ多くの国と事案が精査を要する。理事会は、中国による新疆ウイグル自治区での人道に対する罪、米国による麻薬密輸容疑者への超法規的殺害など、大国の責任追及にも踏み込むべきだ。

こうした調査を信頼性のあるものにするためには、資金が不可欠である。各国は国連分担金を速やかに納付し、任意拠出金を増やす必要がある。これは、トランプ前政権による国連への拠出停止や、中国などによる遅延支払いで深刻化した財政危機の中で、独立した人権調査を守るために重要である。

「人権理事会は、数々の調査活動を通じて多くの命を救ってきた。これらの調査は、政府や武装勢力による新たな虐待を抑止している」とシャルボノー氏は述べた。「すべての政府は、理事会が職務を果たせるよう、国連分担金を速やかに支払うべきだ。」(原文へ

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