Institutional Highlightsカザフスタンの核実験に関するドキュメンタリーが核廃絶の必要性を訴える

カザフスタンの核実験に関するドキュメンタリーが核廃絶の必要性を訴える

【国連IPS=ナウリーン・ホサイン

私は生きぬく:語られざるセミパラチンスク」は、カザフスタン共和国のセメイ地域における核実験の生涯にわたる影響を明らかにする作品だ。

Togzhan Yessenbayeva  Photo: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan.

ニューヨークを拠点とする国際関係法の専門家であり、セメイ出身の3世代目の被害者であるトグジャン・イェッセンバエワ氏は、核実験が自分のコミュニティや環境に与えた「深刻な影響」を認識していると語った。セミパラチンスクで行われた核実験は、今もなお人々に「深刻な負の遺産」を残しているという。

「国連の関心が重要なのはもちろんですが、それ以上に不可欠です。核兵器の問題と、それに取り組む緊急の必要性について、世界的に認識されることが求められています。」「この映画からも分かるように、核の問題は非常に重いテーマです。しかし、核兵器禁止条約(TPNW)の第3回締約国会議は、国際機関や専門家が核軍縮の必要性を訴える場として極めて重要です。」と、イェッセンバエワ氏は語った。

さらに、「私たちは核の脅威から自由になるために協力することが不可欠であり、それを世界の舞台で訴えなければなりません。これは私たちカザフ人にとっての国民的悲劇です。セメイ地域や東カザフスタンだけでなく、すべての人々がこの悲劇を知るべきです。」と続けた。

国連での初上映と広がる国際的関心

そして今年の第3回締約国会議では、カザフスタンの国連常駐代表部、国際安全保障政策センター(CISP)、創価学会インタナショナル(SGI)の共催により、40分の完全版が初めて公開された。

「私は生きぬく:語られざるセミパラチンスク」の初上映は、2023年に国連で開催されたTPNW第2回締約国会議で行われた。この際には20分版が上映され、セミパラチンスク核実験場が東カザフスタンの地域社会に及ぼした影響を広く伝えることに成功した。

このドキュメンタリーは、セメイ市とその周辺地域の第2世代・第3世代の被害者たちの証言を中心に構成されている。彼らは、「ポリゴン」として知られるセミパラチンスク核実験場の影響を受けながら生きてきた。

Semipalatinsk Former Nuclear Weapon Test site/ Katsuhiro Asagiri
Semipalatinsk Former Nuclear Weapon Test site/ Katsuhiro Asagiri

核実験被害者の声を伝える意義

Alimzhan Akmetov(Left), and Diana Murzagaliyeva(Right), a fourth-generation survivor of nuclear testing, taped her mouth shut, representing the years she spent unable to speak. Photo credit: UN Photo/Manuel Elías

監督を務めたCISPの創設者アリムジャン・アクメートフ氏は、上映会で「被害者と信頼関係を築くことが重要だった。」と語った。「これまでの経験から、自分たちの話が世間に伝わっても何も変わらなかったと感じる人々もいて、取材を拒否する人もいました。」

それでも、CISPとSGIは、「この問題を国際的な議論の最前線に押し上げるため、国連での上映を決めた。」とアクメートフ氏は語った。

「私は、軍縮会議、特にTPNW締約国会議こそが、カザフスタンの核実験の影響を伝えるのに最適な場だと信じています。なぜなら、軍縮問題に携わる人々は、このドキュメンタリー作品のメッセージをさらに広く伝えることができるからです。国連には多くの国が参加しており、より効果的に問題を周知できます。」

2023年の初上映以来、アクメートフ氏とそのパートナーは、20分版をドイツやアイルランドなど、各国政府の招待を受けて上映してきた。40分の完全版もカザフスタンと日本で上映予定で、SGIの支援を受けている。

Tomohiko Aishima, Executive Director of Peace and Global Issues, SGI. Photo: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan.

SGIと核廃絶の取り組み

このドキュメンタリー作品のスポンサーであるSGIは、「平和の文化」の推進を使命の一つとしており、核廃絶を目指す国際的な連携を構築している。SGIの相島智彦平和運動局長によると、SGIは特に核実験が行われた地域に焦点を当て、被害者が地域を超えて世界的な舞台で証言できる機会を提供してきたという。

核実験がもたらした健康被害と心理的影響

ドキュメンタリーでは、被害者たちがポリゴンの影響について語っている。言語障害や視覚障害、がんの発症率の高さなど、核実験による健康被害は深刻だ。特に小児や青少年の白血病患者が多く、コミュニティの苦悩は今も続いている。

また、核実験や放射線被曝による心理的影響にも焦点が当てられている。核実験期間中の自殺率が極めて高かったことが指摘されており、その多くは子どもや若者だった。

「首つり自殺はポリゴンの病気と呼ばれていました。」とある証言者は語る。

「安全」とされた湖は今

40分の完全版には、新たな証言のほか、実験当時のアーカイブ映像も加えられた。核実験の直後と現在の環境とのコントラストが強調されている。

特に印象的なのは、「チャガン湖」(現在のアバイ州)の映像だ。当時の科学者たちは「(核爆発の)50日後には放射線レベルが安全レベルになる。」と主張していたが、今日もなおこの湖は「原子の湖」と呼ばれ、高レベルの放射能を帯びている。

Photo: Craters and boreholes dot the former Soviet Union nuclear test site Semipalatinsk in what is today Kazakhstan. (File) Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty Organization (CTBTO).
Photo: Craters and boreholes dot the former Soviet Union nuclear test site Semipalatinsk in what is today Kazakhstan. (File) Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty Organization (CTBTO).

より多くの人々へ

「私は生きぬく:語られざるセミパラチンスク」の20分版は以下の通りYouTubeで視聴可能だ。(原文へ

本記事はIPS NoramがINPS JapanおよびECOSOC協議資格を持つ創価学会インタナショナル(SGI)と連携し提供している。

INPS Japan

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