SDGsGoal16(平和と公正を全ての人に)「グローバル・ヒバクシャ:核実験被害者の声を世界に届ける」(寺崎広嗣創価学会インタナショナル平和運動総局長インタビユー)

「グローバル・ヒバクシャ:核実験被害者の声を世界に届ける」(寺崎広嗣創価学会インタナショナル平和運動総局長インタビユー)

核兵器禁止条約第2回締約国会議の最終日、カザフスタン国連政府代表部と共催したサイドイベントで核実験による被爆者証言を収録したドキュメンタリー映画を先行上映した創価学会インタナショナルの寺崎広嗣平和運動総局長は、国連ニュースサービスのナルギス・シェキンスカヤディレクターの独占インタビューに応じ次のように語った。映像記録・編集は浅霧勝浩INPS Japan理事長が担当した。なお、国連ニュースサービスのウェブサイトに掲載された記事(ロシア語版)とその日本語翻訳版はこちらへ

【国連ニュース/INPSJ=ナルギス・シェキンスカヤ

Nargis Shekinskaya, Director, UN News Service (RU) Photo: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan.
Nargis Shekinskaya, Director, UN News Service (RU) Photo: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan.

UN News:サイドイベントで先行上映された「私は生きぬく:語られざるセミパラチンスク」を観て、大変感銘を受けました。創価学会インタナショナル(SGI)がこのドキュメンタリー制作を支援することが重要だとなぜ思われたのですか?

寺崎:ご存じの通り核兵器禁止条約(TPNW)は第6条・第7条で核実験の被害者のケアと被災地の修復を謳っています。この6条と7条故にTPNWが人道的条約と言われる所以でもあるのですが、広島・長崎は比較的知られていますけども、世界中の核実験場跡地に多くの被害を受けた人々が残っているということを知らない人が多いです。

この核禁条約の理念を知ってもらう意味でも、世界中の被爆者、いわゆる「グローバル・ヒバクシャ」の証言を収録して、広くいろいろな人たちに認識をしてもらうことが必要だと考えたからです。よって、我々の友人でもあるカザフスタンのNGOと一緒に、この事業を進めることにしました。素晴らしい作品ができたと思っています。ご覧いただきありがとうございました。

その発表会を兼ねたサイドイベントには、実際に、カザフスタンから第三世代の被害者の方が証言に来てくださったので、非常に大きな示唆を与える、またグローバルな被爆者の人たちのことをもっと知らなければいけない、そのようなことをイベントに参加された人たちにインパクトを与えることができたと思います。

UN News: 日本への原爆投下を生き延びた方々をヒバクシャと認識してきましたが、例えばセミパラチンスク核実験場の被害者のことをヒバクシャと聞くのは初めてです。今では、世界中で核実験の被害者も被爆者と呼ぶようになったのでしょうか?

寺崎:戦争で被爆を受けた唯一の国は日本。広島、長崎です。この地の被害者を被爆者と呼んできたわけですけれども、そういう意味では今まで核実験とか、場合によっては核物質の採掘に従事する人々も被爆しているわけです。今までは被害者と呼んできましたが、今はそれら全ての人たちを含めて「グローバル・ヒバクシャ」と呼ぶことが多くなっています。つまり、実験の段階、核物質の採掘の段階等で既に被爆者は存在しているわけです。それらの方々のことも我々は共有しないといけないですね。

UN News: 今回の上映会を含むサイドイベントをどのように評価されていますか?ドキュメンタリー映像をみた人々の反応はどうだったでしょうか?

I Want To Live On: The Untold Stories of the Polygon. Documentary film. Credit:CISP

寺崎:もちろんこの映画を作ったのはこれから多くの人たちに観てもらうために作ってきたわけですから、最初に観ていただいた人たちがどういう感想を持ったかということは、これからの私たちのこの作品の活用に関する非常に重要な関心事でした。反応は、私は単に大変な人たちが生き抜こうとしている、そのことに感動した等、それはその通りです。しかしそういうレベルにとどまらないで、なぜそういう現実に直面してしまったのか。どうして我々はこれまで知らなかったのか。知ることができなかったのか。そういうことがより認識されていくことが、合わせて重要なことだと思っています。そのための一つのリソースとして使っていきたいと思っています。もう少し幅広く私たちは、各地の被爆者の方たちの証言も集めて映像化して広く発信できるようにしたいと決意しています。

これは核禁条約6条・7条のある意味での必要性というものをサポートする活動にもなると思っています。

UN NEWS: このような認識を人々に深めてもらうために国連はどういう役割を果たすべきだと思いますか?

寺崎:国連が機能しているかどうかということが、ウクライナの問題、或いはパレスチナの問題を通して、ネガティブな意見が横行している面がありますけれども、私はこうした問題が生じている時こそ逆に、唯一の多国間の会議の場所である国連というものの存在が大事だし、国連ができることはもっとあると私は信じています。

Mr.  Hirotsugu Terasaki, Director General of Peace and Global Issues, SGI. Photo: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan.
Mr. Hirotsugu Terasaki, Director General of Peace and Global Issues, SGI. Photo: Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan.

今回の核禁条約第2回締約国会議でも、あまり気付いている人がいないのですが、初めて国連の場で、いわゆる核兵器の非人道性を論じるセッションというものをやったわけですね。シンポジウム等を通じて我々市民社会もやってきたんですけども、今回初めて国連本部の本会議の場で、それをメキシコが議長国としてやりましたね。これは非常に大きな出来事だと感じています。

扉を少し開いた。でも可能性は、自分たちがそうだから言うわけではありませんが、国対国の議論が行き詰ったときには、もっと市民社会との関係を強化していく、国連に関わるステークホールダーを増やしていかなければならないですね。それは多分国連の機能を活性化するためにも有効だし、各国と市民社会が対話できる関係ができることも私は健全な方向だろうと思います。対話しながら高めていく関係になるべきですね。

UN News: 核実験の被害者も「ヒバクシャ」とよばれるようになってきていることは、私たちにとっても新たな側面ですし、重要なことだと思います。

寺崎:4年前(2019年)に私もセミパラチンスク旧核実験場に実際に行きました。(カザフスタンの首都)アスタナからもすごく遠いです。

UN News: 私たち(シェキンスカヤ記者と浅霧INPS Japan理事長)もセミパラチンスク旧核実験場は行きました。

セミパラチンスク旧核実験場。ここでは1949年から89年までの間に、468回の核実験が行われた。 Photo: Nargis Shekinskaya.

寺崎:旧核実験場を訪問した時の衝撃は、(自分はこの問題について)もっと頑張らねばならないというエネルギーを与えられたと思っています。360度あれだけの荒涼とした旧核実験地の大地を目の当たりにして、その意味では、我々が頭で考える前に、出来事、事実(ファクト)をきちんと認識することが、やはり重要なことだと思いました。抽象的な議論をしているうちは、問題は解決の方向に進まないと思います。これは我々市民社会がむしろできる大きな仕事ではないか。外交官の人たちはデスクワークで忙しいが、外交官も市民社会も力を合わせることが重要だと思います。

UN News: 国連は市民社会が果たしてきた役割を非常に高く評価しています。

寺崎:国連はできなかったことも多いし課題もあるけれども、しかし一方で、できたことも沢山ありますね。みんなそれを忘れていますね。我々は国連の支持者です。国連を支える以外に、他に代わるものはないです。皆さん方(国連ニュース)の発信が有効であることを期待しています。

UN News: 有難うございました。

Intererview with Mr Hirotsugu Terasaki, Director General of Peace and Global Issues, SGI. Filmed and Edited by Katsuhiro Asagiri, Presidentof INPS Japan.

INPS Japan

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