spot_img
SDGsGoal2(飢餓をゼロに)G7の圧力にもかかわらず、インドの小麦輸出禁止は維持される

G7の圧力にもかかわらず、インドの小麦輸出禁止は維持される

【ニューデリーINPS/ SciDev.Net=ランジット・デブラジ

インドが小麦の輸出を禁止したことで、同国の農民や貿易業者は、ロシアによるウクライナ軍事侵攻の結果、主食である小麦が不足している世界市場で小麦を売って収入を得る機会を失ったと、アナリストらは分析している。

インドの2020-21年の小麦生産量は推定1億790万トンで、1億3430万トンの中国に次ぐ2位。第3位はロシアの8540万トンである。

India on a world map/ GIS

5月12日に政府が2022年から23年にかけて1000万トンの小麦を輸出する計画を発表し、アルジェリア、エジプト、インドネシア、レバノン、モロッコ、フィリピン、タイ、チュニジア、トルコ、ベトナムを輸出先候補に挙げられたことから、農家の期待は高まった。しかし、その2日後、商工省対外貿易総局は、政府ルートと民間業者が既に輸出契約を結んでいる場合を除き、小麦の輸出を制限する通達を出し、方針を撤回した。

「世界的な供給不足を補うという期待を持たせておいて、それを撤回するのは大きな問題です。貿易ルートが信頼できるサプライヤーを求めるのは、それなりの理由があるからで、今回の政府の決定によりインドの信用は失墜し、その結果、将来の輸出に影響が及ぶ可能性があります。」と、WTO研究センター(本部:ニューデリー)のビスワジット・ダール教授兼代表は語った。

B.V.R. スブラマニャム商務長官は、5月14日の記者会見で、輸出規制は国内の食糧安全保障と近隣の脆弱な国々を助けることになると説明した。インドから小麦を受け取っている近隣諸国には、アフガニスタン、バングラデシュ、スリランカがある。同商務長官は、「価格の高騰が落ち着けば」規制は解除される可能性があると語った。

インドが小麦の輸出を禁止したことについては、ドイツのジェム・オズデミル食糧農業大臣が5月20日のシュトゥットガルトでの記者会見で、「各国が輸出規制を開始すれば、小麦不足が悪化するだけだ。」と述べるなど、G7諸国からの批判を招いた。

インドの小麦生産の大部分は国内で消費されているが、世界市場での存在感は増している。2021-22会計年度、インドは785万トンの小麦を輸出し、前年度の210万トンの4倍以上となっていた。

ダール教授は、中国がインドの小麦輸出規制の動きを擁護していることは興味深いと述べた。中国国営メディアの環球時報は5月15日付で「インドの小麦輸出を止める動きが小麦価格を少し押し上げる可能性は否定できないが、インドを非難しても食糧問題は解決しない。なぜG7諸国は自ら輸出を増やすことで食糧市場の供給を安定させようとしないのか。」と報じている。

政府が小麦の輸出を制限したのには、他にもやむを得ない理由があった。「世界的な小麦価格の上昇を察知したトレーダーが、政府の最低支持価格を上回る価格で突然買い占めに動いたのです。」と、食料・政策アナリストで、65以上の農民グループの統括組織であるキサン=エクタ゠モルカの創設メンバー、デヴィンダー・シャルマ氏は語った。

シャルマ氏は、「過去の経験から、自由貿易を認めると、農民や消費者ではなく貿易業者に有利に働くことが分かっている。」と指摘したうえで、「商人が穀物を買い占め、政府が数ヶ月前に輸出された小麦を2倍の値段で輸入しなければならなくなったことも過去にはありました。」と語った。

「インドの農産物市場の性質や商人の支配力を考えると、輸出が直接農家の利益になるとは思えません。農家がもっと組織化され、交渉力をつけない限り、国際市場の有利な状況を利用することは難しいでしょう。」とダール教授は語った。

政府にとって最大の制約は、「国家食糧安全保障法」に基づいて約8億人のインド人に高額の補助金付き食糧を供給することを約束していることである。各受給者は、米は1キロあたり3ルピー(0.0039米ドル)、小麦は1キロあたり2ルピー(0.013米ドル)で、毎月5キロの穀物を受け取る権利がある。

シャルマ氏は、「モンスーン災害や最近の熱波による収穫への影響など、予測不可能な事態に備え、政府が大規模な緩衝在庫(公的備蓄)を維持することが重要です。過去5年間の豊作により、約5000万トンの余剰在庫ができたため、パンデミックの際、インドは補助金付き穀物を配布することができたのです。」と語った。

農民の権利と食糧安全保障を推進する全国ネットワーク「持続可能で全人的な農業のための同盟」のリーダー、カビタ・クルガンティ氏は、「私たちが実際に目の当たりにしているのは、信頼できるデータシステムがなく、異なる省庁が互いに連携できないことから生じる政策の失敗です。農家と取引業者は予測可能な政策環境を必要としています。また、種まき時期と販売時期の間に輸出入政策を中途半端に変更すべきではありません。」と語った。

Rnajit Devraj Photo by Katsuhiro Asagiri
Ranjit Devraj Photo by Katsuhiro Asagiri

クルガンティ氏はまた、「今すぐにでも、政府は最低支持価格を上回る金額を提示できるはずです。そうすれば、より高い価格で輸出しようと売り惜しみして、結局は政府の政策転換で損をした農家を罰することもなく、同時に、貧しい消費者のために十分な在庫を確保することができます。」と語った。

インド政府は近年にも、農民のストライキにより大きな政策転換を強いられた経験をしている。政府は農産物取引の自由化などを促す「農業新法」を国会で通過させ、従来国庫の負担となっていた農産物の最低買入れ価格(MSP)を撤廃しようとしたが、新法が大企業に有利に働き、農産品の値下げが強要される事態を恐れた農民の大規模な抗議運動に直面して、2021年11月に新法の一時停止を余儀なくされている。(原文へ

この記事は、提携メディアのSciDev.Netが配信したもので、著者の許可を得て転載しています。

INPS Japan

関連記事:

ウクライナ戦争が世界の貧困国への開発援助を脅かす

|インド|利益追求のモディ政権は飢饉のリスクを冒す用意がある

|スリランカ|政府の有機農業政策にコメ農家が困惑|アフガニスタン|「危機的」レベルの食料不安が人口の半数以上を襲う

最新情報

2022 ICAN FORUM in Vienna

パートナー

client-image
client-image
client-image
client-image
client-image
client-image
Toda Peace Institute
client-image
Kazinform

書籍紹介

client-image
client-image
seijikanojoken