地域アジア・太平洋正義が死んだ日

正義が死んだ日

― 数千件の犯罪記録が灰と化した運命の日を、政府弁護士が振り返る ―

【カトマンズNepali Times=ママタ・シュレスタ】

火曜日、抗議者たちがマンダラにある特別政府弁護士事務所を放火しながら、政府の腐敗を糾弾するスローガンを叫んでいた。しかし実際には、この事務所こそが政府の腐敗事件を積極的に捜査・起訴していた場所だった。その事件記録が今やすべて灰になってしまったのだ。

襲撃者たちは部屋ごとに建物を荒らし、焼き払った。彼らは「13歳の少女ニルマラ・パンタが7年前にカンチャンプルで強姦・殺害された事件の犯人を捕まえられない政府」に抗議しているつもりだった。
だが実際には、地区政府弁護士事務所はニルマラよりもさらに幼い被害者を持つ強姦・虐待事件の捜査を指揮していた。

私自身も政府弁護士になる前は一市民として、ニルマラ事件のことをメディアで知っていた。それは国を揺るがす大事件であり、私が耳にした中で最大の強姦事件だった。しかしいざ自分が政府弁護士として机に向かうようになると、毎日必ず新しい強姦事件の捜査記録が届いた。これは全国規模で続く連続的な恐怖だった。加害者は見知らぬ他人ではなく、父親、兄弟、継父、教師、運転手など被害者の身近な人々だった。

起訴状にはネパール各地、あらゆる年齢層の加害者と被害者が名を連ねていた。法廷に持ち込むすべての記録は、せめて自分に対する犯罪を認めさせ、加害者を裁いてほしいという誰かの願いだった。だが今、それらすべての記録が失われた。

今週、シンハダルバールの政府データセンターが放火から守られたというニュースには安堵した。だが私たちの記録はすべて失われた。証拠はデジタル化されず、バックアップもなかった。紙とインク、緑の紐で綴じられた脆いファイルにしか存在していなかった。

建物が燃えた時、それは犯罪の唯一の記録と加害者の身元も同時に消え去ったことを意味する。地下室いっぱいに積まれていたそうしたファイルを想像してほしい。それぞれが被害者の顔、人生を表していた。今や1万件以上の事件が灰となってしまった。

Photo: HEMANTA SHRESTHA
Photo: HEMANTA SHRESTHA

シンハダルバールは地震の後と同じように、また一から積み上げれば再建できるだろう。だが誰がこの事件記録を再建できるというのか。

SNSでは政治家の自宅に隠された現金や焼け焦げたドル紙幣の写真が出回った。しかし、犯罪記録が詰まった建物全体が炎に包まれる映像は報じられなかった。火曜日にカトマンズの空を覆った煙は、数千人の被害者――その多くが若い女性――の正義への希望をも運び去ってしまった。

2025年9月8日 ― あの日

私たち政府弁護士の職務は、犯罪捜査を指揮し、事件を起訴し、法廷で主張し、控訴を行うことだ。普段なら、一日に少なくとも5件の刑事事件を担当する。

その8日、Z世代の抗議者たちがマンダラに集まる中、私たちは警察クラブで初の女性政府弁護士会議に参加していた。最も鮮やかな青いサリーの制服にアイロンをかけたブラウスを着て、頭を高く掲げ、女性弁護士として女性に対する暴力事件の最多起訴件数を導いたことを誇りに祝った。

だが午後4時、議会外でデモ参加者が銃撃されたという報を受け、式典は中断された。司法長官から直ちに帰宅するよう指示があり、会場を後にした。私たち若手の女性弁護士数名と一人のベテラン女性弁護士は一緒にバドラカリを通り、事務所へ向かった。

そこで怒れる群衆と遭遇した。制服姿の私たちを見るなり、彼らは激しい罵声を浴びせた。名誉毀損訴訟を起こせるほどのひどい言葉だった。私たちは俯きながら歩いた。唾を吐きかけられた。彼らは政府への怒りを私たち公務員にぶつけていた。だが、彼らが唾を吐いたその女性弁護士こそ、ネパール女性に平等な財産権を与える法律を切り拓いた人物だったのだ。彼女は私たちにとって英雄であり、法学の教科書に名を刻んだ人だった。

私たちは怒りから逃れようと走り、特別政府弁護士事務所にたどり着いた。群衆は外にとどまり、私たちは2時間、祈るように沈黙しながら、道が静まるのを待ち、ようやく家に帰ることができた。

翌9日はさらに悪化した。抗議者たちはすでに議会、シンハダルバール、最高裁判所を焼き払い、次に政府弁護士事務所に火を放った。

焼失したのは建物だけではない

ネパール人として、抗議者の怒りは理解できる。しかし政府弁護士として、私は深い傷と空虚を抱える。

これは建物の損失や唾を吐かれたことの問題ではない。数千人の被害者の物語が詰まった記録の消失なのだ。多くの被害者は、自らの正義への闘いが終わってしまったことすら知らない。

私たちはいかなる政党にも属さない公務員であり、誠実かつ独立して職務を果たしてきた。「正義」を求める名のもとで、人々はその正義を実現していた場所そのものを破壊してしまった。(原文へ

ママタ・シュレスタは地区政府弁護士補佐。

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