【ジュネーブIDN=ルネ・ワドロー】
イラン・イスラム共和国の各地で「女性・命よ・自由を!」という叫び声が上がっている。この抗議運動がどの程度の規模で行われ、具体的にどのような改革が要求されているのか、事前に知ることはできない。しかし政府は不安を感じている。10月3日、最高指導者のアリ・ハメネイ師は、陸軍士官学校での講演で抗議運動に対する弾圧を正当化し、今回のデモは米国とイスラエルの仕業だと語った。
2022年9月13日、髪の毛を隠すために身につける布「ヒジャブ(ヘジャブ)」のつけ方をめぐって22歳のマフサ・アミニが「道徳警察」に逮捕された後に急死した事件を受け、抗議運動が始まった。彼女はクルド人であった。抗議は当初、イラン国内のクルド人地域で始まったが、まもなくすべての民族と多くの地域に広がった。
しかし、イラン政府はクルド人、特に隣国イラク国内のクルド人からのデモへの支持が拡大し、多民族間の緊張が高まることを懸念している。イランは9月28日にも、イラク北部のクルド人地域の武装勢力を標的にミサイルと無人機で攻撃を行ったばかりである。
イラン・イスラム共和国は社会政策として女性問題に焦点をあててきた。1979年に政権を取る前から、フランスに亡命中のホメイニ師は、パフラヴィ―朝イラン治世下で女性に認められた自由が大きすぎることが自分の政策の障害になっていると語っていた。ヒジャブ着用義務など、女性に対する抑圧的な政策はイラン・イスラム革命後すぐに実行に移された。
アフガニスタンのタリバンとは異なり、イランでは女性が高等教育を受けることは禁じられていない。現時点でイランの大学生の約65%が女性であると言われている。多くの女性が社会の中で重要な役割を担っているが、目立たないようにし、規則に沿った服装をし、少なくとも人前に出るときは男性の支配下に置かれなければならない。
今、多くの女性と一部の男性によって宣言された「女性・命よ・自由を!」の叫びは、変化の兆しを示している。明らかに、指導者のハメイネイ師と保守派のエブラヒム・ライシ大統領率いる政府はこの抗議運動を警戒しており、警察、革命防衛隊、その他の準軍事的な軍隊が動員されている。
デモ参加者の中には、推定100人が死亡し、負傷者も出ている。逮捕者の数は不明。ジャーナリストは取材を妨害され、インターネットサービスも遮断されたり、不規則になったりしている。したがって、イラン国内でデモを捉えた写真は限られている。
イランではこれまでにも抗議行動の波があったが、政策に大きな変化をもたらすことはなかった。しかし、今回の抗議行動には、主に若者が主導する新しい気運が見られるとみる向きもある。「女性・命よ・自由を!」は今後大きな波となる可能性があり、注視する必要がある。(原文へ)
INPS Japan
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