ニュース訪日したカザフスタン大統領、世界の非核化に焦点

訪日したカザフスタン大統領、世界の非核化に焦点

【東京/広島IDN=浅霧勝浩、ラメシュ・ジャウラ】

「核兵器なき世界の実現に向けた取組みは、日本―カザフスタン関係において特別な位置を占めています。」と語るカザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ大統領は、11月9日、71年前に長崎とともに米軍による原爆投下の被害を経験した広島を訪問した。

ナザルバエフ大統領は、来年1月から2018年末まで2年間の任期でカザフスタンが国連安保理の非常任理事国に就任(中央アジアからは史上初)する2か月前のタイミングで、日本に3日間の日程で公式訪問した。カザフスタンは、安保理非常任理事国としての初年度にあたる2017年の間、同年末に任期を終了する日本と緊密に協力していく予定だ。

2017年はまた、日本とカザフスタンが外交関係を樹立して25周年目となる。

ナザルバエフ大統領は、カザフスタンと日本が力を合わせて、共同の取り組みを一層強化していくよう呼びかけるとともに、世界の指導者に対して、核の悲劇を二度と引き起こさないように核実験を放棄するよう強く訴えかけた。そして、「大量破壊兵器の脅威のない世界の構築に向けて共同で取組んでいくことで安倍晋三首相と一致しました。」と語った。

また広島で同市から特別名誉市民の称号を贈呈された際は、「広島平和記念公園を訪問させていただいて、核軍縮と核不拡散の分野の重要性に対する思いを新たにしました。」と語った。

President Nazarbayev visiting Hiroshima Peace Memorial Museum/AkordaPress
President Nazarbayev visiting Hiroshima Peace Memorial Museum/AkordaPress

広島市の松井一實市長は、「1991年8月29日、ナザルバエフ氏は、カザフスタンの人々の願いを受けて、セミパラチンスク核実験場(旧ソ連)を閉鎖しました。また、中央アジアに非核兵器地帯を創設し、8月29日を『核実験に反対する国際デー』に指定する取り組みを進めるなど、核兵器なき世界の構築において主導的な役割を果たされています。」と述べ、大統領の功績に感謝の意を表明した。

ナザルバエフ大統領は、広島訪問に先立って東京で会談した岸田文雄外相(広島出身)に対して、「日本とカザフスタンは反核運動のリーダーです。両国はこの問題で共同の取り組みを続けていけると確信しています。」と語った。

これに対して岸田外相は、「貴国が独立以来、大統領が示されてきたリーダーシップに敬意を表します。カザフスタンが2017~18年の国連安保理非常任理事国に選出されたのも、大統領のリーダーシップの賜です。」と語った。

11月8日に日本の国会で演説したナザルバエフ大統領は、第4回核セキュリティーサミット(ワシントンDC)で2016年3月31日に発表した『マニフェスト:世界。21世紀』と題するマニフェストに焦点を当てた。

ナザルバエフ大統領は、「世界は、より危険でより予測不能になりえる新たな核時代に入り込みつつあります。21世紀の最も深刻な問題のひとつは、核テロの脅威であり、核物質・放射性物質の不法取引の問題です。」と指摘したうえで、「大国間の信頼が前例のない危機に陥っており、核兵器使用を予防する安全措置の劣化につながっています。今日、この望ましくない傾向を反転させるために、あらゆる指導者の政治的意志がこれまでになく必要とされています。」と語った。 

ナザルバエフ大統領はまた、国際安全保障を強化するためにカザフスタンが採ってきた措置について触れ、核の脅威のない世界を構築するための共同の取組みの重要性を強調した。

CTBT 20th Anniversary / Ministerial Meeting / 13.06.2016 / Vienna International Centre / Vienna, Austria
CTBT 20th Anniversary / Ministerial Meeting / 13.06.2016 / Vienna International Centre / Vienna, Austria

「私たちは、世界的な反核運動を確立することが重要な任務だと考えています。これはまさに、わが国が提案した『ATOMプロジェクト』が推進している目的でもあります。日本の友人の皆さまからも、この取り組みに支援をいただけますよう呼びかけたい。」

ATOMプロジェクト(Abolish Testing. Our Mission=核実験の廃絶。それこそが我々の使命)は、核兵器実験がもたらす人的・環境的破壊について意識を喚起するにとどまらず、それ以上のことを目指す国際的キャンペーンである。プロジェクトのウェブサイトにはその目的について、「核兵器実験を永久に止めさせるために数多くの世界市民を関与させ、『世界の市民には核実験のない世界を要求する権利がある』ということを協力して世界の指導者らに示し、真の恒久的な変化を生み出すことを目指す。」と述べられている。

ナザルバエフ大統領は、11月7日の天皇陛下との会見では、様々な分野における両国間の緊密な協力関係を強調し、首都アスタナで開催されている「世界・伝統宗教指導者会議」に日本側から定期的な参加があることを述べた。大統領の提唱ではじまったこの宗教間対話イニシャチブは、第1回会議が2003年9月、最新の第5回会議が2015年6月に開かれている。

ナザルバエフ大統領は、世界の紛争解決と、持続可能な地域開発の促進における日本の多大な貢献を強調した。また、カザフスタンは、国連安保理の2017~18年の非常任理事国任期中に、核兵器なき世界の構築と、エネルギー・食料・水の安全保障の問題解決をめざした措置を採ることを強調した。

その後、ナザルバエフ大統領と日本の安倍首相が会談し、政治、貿易、経済、文化、人道分野など、多くの領域での二国間協力について討議した。

Japan-Kazakhstan Summit Meeting/ Cabinet Public Relations Office, Cabinet Secretariat
Japan-Kazakhstan Summit Meeting/ Cabinet Public Relations Office, Cabinet Secretariat

ナザルバエフ大統領は、日本はカザフスタンの独立を25年前に最も早く支持した国のひとつだと述べた。日本との友好関係の発展はカザフスタンの最優先課題のひとつである。

「安倍首相と私は、積極的な政治的対話を続け、あらゆるレベルでの接触を増やし、地域の安全保障を確保し、貿易・経済・文化・人道協力を促進し、今日世界が直面している難題に対して協力していくことで一致しました。」とナザルバエフ大統領は両国代表間の会合で語った。

「カザフスタンは中央アジアにおける日本の最大の貿易・経済パートナーであり、2015年の二国間貿易総額は15億ドルに達します。この数字はさらに延びる可能性があり、ハイテク技術、農業、原子力、自動車・鉄鋼産業の分野で協力水準を着実に引き上げていきたい。」とナザルバエフ大統領は語った。

安倍首相は、「すべての核実験を法的に禁止する「包括的核実験禁止条約」(CTBT)の発効促進会議の共同議長国として両国は緊密に協力してきました。」と強調したうえで、「ナザルバエフ大統領と手を取り合って、日本とカザフスタンとの関係を発展させていく所存です。」と語った。

両首脳は会談後、「アジアの繁栄の世紀における拡大された戦略的パートナーシップに関する日本国とカザフスタン共和国の共同声明」や、カザフスタン投資・発展省と日本の国土交通省間の覚書などを含む文書に署名した。

さらに、2017年のアスタナ万博への日本の参加に関する合意、アスタナ国際金融センターと日本証券業協会間の協力覚書も交わされた。

その後、大統領が率いるカザフスタンの代表団は、河村建夫衆議院議員が事務局長をつとめる日本・カザフスタン友好議員連盟のメンバーとの会合に出席した。

ナザルバエフ大統領は、議員連盟は、両国間の戦略的パートナーシップの強化に多大なる貢献を成していると述べ、カザフスタンに対して与えられた支援と、核軍縮の分野等で協力を強化するためになされている努力に対して感謝を表明した。

河村事務局長は、ナザルバエフ大統領との実りある会合に感謝して、「来年、私たちは日本・カザフスタン間の外交関係樹立25周年を迎えます。さらに、2017年万博がアスタナで開催されます。これらの機会を利用して、議会間の交流をさらに強化していきたい。」と語った。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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