【INPS Japan/London Post】
しばしば「スウィングステート」と呼ばれる中堅国は、超大国や大国ほどの影響力を行使することはできないかもしれないが、世界情勢における戦略的重要性は否定できない。これらの国々は、地政学的な位置、豊富な天然資源、外交および経済の強み、そして軍事能力を活用し、しばしば大きな紛争では中立を保ち、世界の安定を維持する上で重要な役割を果たしている。これらの国々は、世界経済の分断を克服し、中央回廊のような重要な中継ルートを通じてサプライチェーンを確保する上で、重要な鍵を握っている。また中堅国は大国とは異なり、複雑な政治状況を切り抜ける敏捷性と、特定の紛争や問題の当事者からの信頼を得ることができる。
グリーン・トランジション(環境配慮や持続可能性のある社会への移行)の文脈では、中堅国は重要な鉱物やその他の重要物質の供給を確保する上で不可欠である。多国間で解決しようとする傾向のある中堅国は、国際問題の解決において中心的な役割を果たしている。
カザフスタンは今日、影響力のある中堅国として際立っている。カシム・ジョマルト・トカエフ大統領は、Euronewsのオピニオン記事の中で、自国がグローバルな舞台で積極的な役割を果たす可能性を強調した。「わが国のような国は、経済力、軍事力、そしておそらく最も重要なのは、食料・エネルギー安全保障、グリーン・トランジション、ITからサプライチェーンの持続可能性に至るまで、グローバルな舞台で大きな影響力を行使するために必要な政治的意志と外交的洞察力を有している。」と語った。トカエフ大統領が指摘するように、これらの強みは、世界の経済・政治大国がますます協力できなくなっているなかで、特に重要である。それとは対照的に、「カザフスタンのような国々は、自分たちの身近な地域とその先の地域の安定、平和、発展を確保し、妥協と和解への道を切り開くことができる。」とトカエフ大統領は語った。
カザフスタンは、水の安全保障、テロリズム、麻薬密売といった国境を越えた課題に取り組むため、中央アジアやコーカサス地域の他の中堅国との協力を強化している。アゼルバイジャンやトルコとのパートナーシップは、中央アジアを欧米市場に開放する中央回廊プロジェクトの実現に不可欠である。カザフスタンはまた、欧州諸国とも緊密に連携してエネルギー需要を確保しており、アジア諸国にとっても魅力的な投資先となっている。こうした中堅国との協力関係は、ハイレベルの二国間会談を通じて強固なものとなっており、トカエフ大統領は2024年だけでも数十回の会談を行っている。
トカエフ大統領の広範な外交経歴を考慮すると、彼の多国間主義と国際協力に対する支持は心強いものである。カザフスタンは今年末、気候変動、生物多様性の損失、汚染の影響を含む世界的な水危機に対処するため、フランスとともに第1回「ワン・ウォーター・サミット」の共同議長を務める。このイベントは、世界中の影響を受けている国や地域社会を団結させることを目的としている。さらにカザフスタンは、アルマトイに中央アジアとアフガニスタンに焦点を当てた国連持続可能な開発目標(SDGs)地域センターの設置を提案し、アルメニアとアゼルバイジャンの和平交渉の促進に積極的に関与している。
「大国が多国間プロセスをますます信頼しなくなり、小国が必要な影響力を欠く中、中堅国が主導する義務がある。」と、トカエフ大統領は主張した。カザフスタン独自の強みとベテラン外交官をリーダーに、多国間主義の強化、より安全なサプライチェーン、より大きな平和と安定に向けた新時代を切り開く態勢を整えている。(原文へ)
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