【IDN東京=石田尊昭】
憲政の父・尾崎行雄が74歳の時の言葉――「人生の本舞台は常に将来に在り」。
何歳になっても「昨日までは予備門で、今日以後が本領を発揮する時である」という、とても前向きで力強い言葉です。
尾崎行雄は95歳で亡くなりましたが、その前年に「初落選」するまで、実に60年以上にわたり衆議院議員を務め、文字通り「生涯現役」を貫きました。
その尾崎の三女、相馬雪香さんが亡くなって、今年でちょうど10年を迎えます。
相馬さんは96歳で亡くなりましたが、その数カ月前まで講演をしたり、式典でスピーチをするなど、父親同様「生涯現役」でした。
私は、相馬さんが84歳の時に出会いました。それからわずか12年ほどですが、濃密な時間を過ごすことができ、多くを学ばせて頂きました。相馬さんは、孫ほど歳の離れた青二才の私を「目的を共有し、共に行動するパートナー」として尊重してくれました。だからこそ、いつも「本気の議論」をすることができました。
相馬さんの言葉には「力」があります。それは単に語彙や表現力の問題ではなく、心の内から湧き起こるような力です。相馬さんが亡くなった翌年、私は『相馬雪香さんの50の言葉』という本を書きました。そこに出てくる言葉は、いずれも「どこかで聞いたことのあるような」ものばかりです。しかし、相馬さんから発せられると、それは周りを動かす力になる。なぜなら、その言葉は、嘘偽りの無い相馬さんの「心そのもの」だから。相馬さんの「言葉の力」は、「心の力」です。
東日本大震災の翌年、私は、相馬さんのリーダーシップについて触れた『心の力』という本を書きました。相馬さんには4つの心――「本気の心」「純粋な心」「利他の心」「感謝の心」がある。そして、そこから湧き起こる言葉と行動力(リーダーシップ)が周りの人たちを惹きつけ、動かしていく。
この10年。私は、相馬さんの「言葉」ではなく「心」を一人でも多くの人に伝えたいと思い、書いたり話したりしてきました。せっかく機会を頂いても、まだまだ伝えるべきことを伝えきれていません。まだまだ相馬さんの「心の力」を私自身の中に生かすことができていません。葛藤、迷い、後悔、失敗の連続です。
しかし、ここで止まるわけにはいきません。「反省っていうのは、止まるためじゃなくて、進むためにするんですよ!」――相馬さんの怒声、いや叱咤激励を想い起こしつつ・・・。これまでの10年の経験を、これからの10年(本舞台)に生かす。「相馬雪香没後10年」の節目に、改めて決意しているところです。
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